繋がり
瀬川
繋がり
私の趣味は、自作の小説をサイトに投稿することである。
ジャンルは主にホラーやミステリー、たまに恋愛小説にも手を出すこともあった。
完全に趣味の範囲なので、書籍化とかそういうのは今のところ目指していない。
ただ自分の中にある妄想を、形として残したかっただけだ。
最初はそんな風に、ただ書くことだけを目的にしていたけど、投稿していくにつれて段々と変わっていった。
私が小説を投稿しているサイトは書くことはもちろん、それを別の誰かが読むことが出来る。
読みだけじゃなく評価もサイトの中に含まれていて、自分好みの作品があれば気軽にポイントやレビューが出来る仕組みになっていた。
私は書くことだけなのだが、逆に読むためだけに、サイトを訪れる人もいるというわけだ。
最初は書きやすさだけでサイトに登録し、小説は非公開にしていた。
でもある日、ただの気まぐれで誰にでも見られるように設定を変えてみた。
自己満足な物語だから、どうせ読んでくれる人は少ない。
そう考えていたのだが、十分もしないうちに誰かが読んでくれた。
閲覧された数を知ることも出来るから、そこの数が一に増えた時、本当の誰かが私の小説を読んでいるのかと不思議な気持ちになってしまった。
どうだろう。
面白いと思ってくれたかな。それとも全然面白くないと途中で読むのを止めてしまったかな。
サイトを何度も更新しながら、私は落ち着きなく部屋をさまよった。
そして数分後、通知欄に変化があった時、思わず飛び跳ねてしまった。
通知欄が変化するのは、評価をされたり作品や私のことをフォローしてくれた時だ。
だから基本的には喜んでいいのだけど、もしかしたらつまらないという感想を書かれたのかもしれない。
そうマイナスのことを考えてしまい、ゆっくりとカーソルを動かして、私はしばらく固まってしまった。
何分かそのまま固まっていたけど、さすがに見なければ良いことか悪いことかも分からないと、覚悟を決めてクリックする。
「わ……やった」
そこには、私の作品が面白かったという感想があった。
感想をくれたのは田中さん。
名前は好きに登録できるから、本名かは知らない。
私の作品を楽しんで読むことが出来たと、短い文章だったけど丁寧な言葉で書かれていた。
それを見た瞬間、私の胸に広がったのは純粋な喜びだった。
「また、投稿しよう」
後悔することに興味が無かった私だったけど、その感想一つで小説を書くモチベーションが上がった。
単純かもしれないが、もっと頑張ろうと思ったのだ。
それから半年ほど経った。
私はというと、ほぼ毎日小説を投稿している。
投稿をするたびに反応があって、見るたびにどんどんやる気に満ち溢れていた。
あと、楽しみがもう一つ増えた。
それは私と同じように小説を投稿している仲間と、SNSでやりとりをすることである。
小説の感想を言い合ったり、応援をしたりされたりしているのだけど、たくさんの人と通じることが出来て私は現実の世界よりも楽しくなっていた。
これからも毎日、私はサイトやSNSを通じて、読者の人や小説仲間と交流を深めるつもりだ。
ただ一つだけ気になるのは、この小説サイトをやっているという人と、現実世界で会ったことが無いだけだ。
たぶん、偶然なんだろうけど。
繋がり 瀬川 @segawa08
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