妹の笑美から連絡がない、これは僕にとって異常なことでした。

 僕と笑美はほとんど若者のいない田舎で育ちました。十近く離れていますから、とても可愛がっていたんです。

 それに笑美はちょっと……問題のある子で。

 ただ、東京の方が合ってるかな、というのはありましたね。東京の人って、いい意味でドライというか、変わった人でも放っておいてくれるでしょう?笑美は、田舎だと悪目立ちして、いつもいじめられていましたからね。勉強はできる子だったので、大学から東京に上京してきて。

 まあ、僕も東京でずっと働いていましたし、ちょうどいいかなということで。本当は一緒に住もうと思っていたんですけど、これくらいの年齢の男女が一緒に住んでいるのは誤解される、と母に言われまして。ええ、でも、ほぼ毎日会っていましたね。

 あの子、一人だと何も決められない子で。なんでも聞いてくるんですよ。大学のことも、就職のことも、全部僕が世話しました。

 まあ、就職に関しては、全然うまく行かなかったみたいで。こっちとしては、ゆっくり次のことを考えて行けばいいと思っていたんですけど……三か月前に突然、就職が決まったと言うんです。しかも、あの、モリヤ食品。どう考えても変でしょう。特に目立った経歴もない、学歴が良いだけのあの子を採用するとは思えない。

 まあ、でも採用通知メールは本物でしたし、ちょっとは信じようかと思ったんですが、おかしいんです。

 色々な場所に行かされて、なんだか意味の分からない儀式のようなものに参加させられたというんです。おかしいと言うと、それは最初の一週間だから、オリエンテーションのようなものだ、と本人が答えまして。

 確かに、なんのつもりなのか、怪しいレクリエーションを新入社員にさせる会社があるのは知っています。寒中水泳ですとか、あと、自分自身の悪いところを大声で言って、それを集団で否定させるとか――分かりやすく拷問ですよね。でも、そう言うのとは違うようなんです。泥で鳥を作ったり、丸太で塔を建てたり、あとは麦を収穫したりですとか……意味不明で気持ちが悪いでしょう?

 そんなことを嬉しそうに話す笑美にも不気味さを感じました。

 笑美が不愉快に思っていなかったとしても、明らかにおかしいことです。それを、天下のモリヤ食品が行うとも思えない。

 モリヤを名乗るなにかに、騙されていると考えるのが自然でしょう。

 それを言うと、今までに見たことも無いような顔をして、こちらを睨んでくるんです。

「ヤンさんはいい人なの」って。「馬鹿にしないで」って。

 ヤンさんが誰かと聞くとね、社長だと言うんです。でも、モリヤの社長はあの守屋秀光でしょう?ああ、佐々木さんは知らないか……とにかく、有名ですからね、顔も名前も。

 名前に「ヤン」なんていう要素、どこにもないので、やはり騙されているんじゃないかと思いまして。

 でも、興奮していて、何を言っても聞き入れてもらえそうになかったので、その日はどうにかなだめすかして、何かあったら連絡するように言って帰したんですよ。

 それから、連絡が来なくなりました。

 だから、毎日のように会っていたんです。連絡だけなら「ように」じゃなくて、毎日ありました。それが三日です。さすがに不安になりました。メッセージアプリも未読、電話も無視ですからね。

 だから、仕方なくです。仕方なく、後をつけました。

 一晩中見張っていたけれど、何も起こらなかったので、仕方なく帰ろうとしたんです。ところが――八時くらいでしょうか。笑美のアパートの前に黒いセダンが停まりました。中から血色の悪い男が出てきて、ふらふらとした足取りで笑美の部屋の前に立ち、呼び鈴を鳴らします。すぐに同じように顔色の悪い笑美が出てきて、笑美は後部座席に、男は運転席に座りました。

 こいつが「ヤン」なのかと思ったのですが、すぐに考え直しました。「ヤン」のことを語るとき、笑美はほろ酔い状態みたいな感じで、とにかく幸せそうなんですよ。

 車の男と話しているときの笑美は、俯き加減で、具合が悪そうでしたから。

 男の車が走り去ってしまったので、慌てて後を追いました。車は、どんどん都心部から遠ざかって行き、いつの間にか雑木林があるような場所を走っていました。段々、交通量も少なくなります。

 尾行に気付かれてしまったら、引き返して後日出直そうと思ったのに、かなり近づいてみても男がこちらに気付く様子は全くありませんでした。

 しばらくすると、建物が見えてきました。外観からはイベントスペースというか、そういった近代的な建物に見えましたね。それが、農園の中できわめて異様に見えました。

 さすがに私有地に入ったら言い訳ができない。そう思って僕は住所だけカーナビに入れて、その日は帰宅しました。もちろん、その晩も笑美からの連絡はありませんでした。

 どうにか怪しまれず、あの場所に行って内部を観察できないものか。そう考えて、なにげなく住所を検索しました。すると、即決・イベントスタッフ募集中、という求人広告を出していたんです。

 やはりあの建物はイベントスペースのようでした。年齢も学歴も経験も不問、ということでしたから、すぐに電話しましたよ。すると、特に面接もなく、すぐに人手が欲しいから、ぜひ入ってくれと言うんです。ますます怪しいですよね。業務説明もなかったですよ。そのために二週間、休暇を取っていましたので、すぐに話がまとまりました。一応調べてみたら、建物の権利者はきちんとモリヤでしたよ。

 当日の集合場所は新宿でした。集合場所に行ってみると、皆一様の雰囲気を持った集団がいたので、すぐに分かりました。

 どういう雰囲気かと言うと、言い方は悪いですが、何の期待もできないというか、ぼんやりと澱んでいるというか。とにかくネガティブな雰囲気でした。若者もいましたけど、僕より年上の人の方が多かったですね。どうしてこんな人ばかり集まったのか、理由は簡単です。年齢経験学歴不問なのに、時給が異様に高いんですよ。五千円です。ここまで高いのは見たことないですね。それでも人手が足りないと言うんだから、普通の感覚を持った人なら怪しんで来ないでしょうけど、本当に困っている人たちは飛びつくんじゃないですか。

 時間になると、マイクロバスが来て、僕も含めてですが、この胡乱な集団を運んでいきます。車内で喋る人は誰もいなかったですね。僕も彼らに倣って、口を閉じてただ景色だけ見るようにしました。途中で紙袋が配られたので、中を見ると、大きいおにぎりが二つ入っていました。機械で握ったようにきれいな形だったので、おそらく安全だろうと思い、一緒に入っていた海苔を巻いて食べました。梅とゴマでしたね。美味しかったですよ。

 昨日と同じ道を辿ってバスはあの建物に到着します。バスを降りると、昨日笑美を乗せた車の運転手のように、顔色の悪い男たち――恐らく社員か、バイトでも経験者なのでしょうね。彼らに指示され、僕たちは家畜のように一列に並ばされました。そして僕たちの前に、漢字の書かれた札を置いていきます。僕の札には「蛙」と書いてありました。僕の右隣の人も「蛙」でしたが、左隣の人は「兎」でした。

 彼らの中で責任者と思われる男が、やっと説明を始めます。

 僕たちは、札にかかれている生き物がいる場所に連れていかれるそうです。そこで一週間過ごせ、ということでした。そう、言い忘れていたけど、一週間泊まり込みのバイトなんです。

 指定された「蛙」の部屋に入ると、本当にカエルが沢山いました。小学校の時、理科の解剖で使ったようなカエルです。それが、大きなガラスケースの中に敷き詰められているんです。勿論、気持ち悪いですよ。ぎっしり、隙間なく――アマガエルみたいな小さくてかわいい品種じゃなくて、土色のぬめぬめした、大きい蛙が詰まってるんですから。でもね、それよりすごかったのが鳴き声です。それはもう、すごい音でした。ド田舎で育った僕のような人間でもそう感じるのですから、他の人はとても無理だろう、そう思って同室の人たちの顔を見回しました。

 先程の右隣の人を含めて、僕以外に五人いました。全員が全員陰気な顔をしながら荷物を整理しており、カエルに動揺していたのはなんと、僕だけでした。

 食事と風呂、それと面接の時間以外は自由に過ごしてよい、ということでしたので、このまま黙っていても雰囲気が悪くなるだけですから、私が先導して、皆で自己紹介をすることになりました。

 まず、ひときわ目立つ巨漢の男は涌井といいました。幼少期からいじめられていて、そのせいで高校も満足に通えなかったため中退、どこにも就職できず、今は搬入のアルバイトで生計を立てているのだと言います。

 対照的に非常に細身なのが玉田でした。以前合成麻薬に手を出して捕まったことがあり、今は更生施設に通いながら人生を模索中とのことです。

 なんだか顔立ちの似た誠一と隆二は兄弟でした。参加した理由を聞いてもはぐらかすだけでした。でも、意外にも受け答えはきちんとしていて、親しみやすい性格をしていました。

 それと、非常に体臭のきつい、岡田というどう見ても五十は超えている男がいました。彼はコミュニケーションが苦手のようで、話しかけることもできませんでした。

 とにかくこの五人で、一週間やっていかなければならない。場も温まったところで、僕は一番気になっていることをぶつけました。このカエルが気持ち悪くはないのかと。

「でも、やるしかないじゃないっすか」

 誰かがそう言ったのを覚えています。

 そうです、こんな、どう考えても怪しいバイトに応募してくるような連中です。ここの人々は皆、どうにかして金を手に入れようと必死なのでした。会話はそれきり、打ち切られてしまいました。

 バイトメンバーと打ち解けることはできなかったけれど、スマートフォンをいじったり本を読んだりしているうちにあっという間に夕食の時間になりました。

 指定された部屋へのろのろと向かうと、長い机に人数分の食事が用意されていました。十数人ぶんが横並びになっていると言うのはなんだか異様な光景でした。

だいぶ手の込んだ和食で、味も美味しかったですよ。ただ、その間にもケエコケエコと、カエルの鳴き声がするのは辟易としましたね。食が進んでいない人が多かったのも頷けます。食事中は会話をしてはいけないということで、本当にカエルの鳴き声だけが響いていて。嫌なBGMですよね。

 食事を終えたらすぐ、風呂の時間でした。個室のシャワールームが五個に、大浴場、とまではいきませんがそこそこ広い風呂がついていました。「蛙」でない人もいましたね。おそらく、風呂場は、時間ではなく男女で別れているのではないかと思いました。マイクロバスの中には女性も何人かいたので。

 それで、朝会った「兎」の人を見付けたので、声をかけてみました。彼もまた、陰鬱な顔をしていましたが、話しかけると少し嬉しそうでした。

 やはり、我々「蛙」の人間と同じように、ケージに入った大量のウサギと一緒に一週間過ごせと言われたのだそうです。

「ウサギはうるさくなくていいですね」

 と言うと、

「でも、臭いんですよ」

 と答えます。

 確かに、僕の小学校にあったウサギ小屋からは独特の獣臭がしていましたから、あの中でずっと生活するのは気が滅入りそうです。

「うちのグループにはもっと臭いおじさんがいますから」

 そう小声で言うと、彼の顔が少し緩みました。兎の彼は、横川と言う名前でした。

 横川が言うには、「兎」の部屋には三人いるそうです。そして、彼は他にも「魚」「鳥」「鹿」があることを確認した、と言います。

「よく観察していますね」

 僕が褒めると、

「あそこに書いてあるんです」

 恥ずかしそうにそう答えました。確かに良く見ると、風呂場の入り口のタイルに張り紙がしてあります。

「なんか、着るものがそれぞれ別に用意されているらしくって」

 風呂から上がって確認すると、確かに服が五種類用意されていて、服の入ったかごの上に「鹿」「兎」「鳥」「蛙」「魚」と書いてありました。不思議なことに、全て同じ白い服に見えるのです。もし、別の服を着たらどうなるのだろう、と考えましたが、もしかして、こちらからは分からなくても、向こうからは判別することができるのかもしれない、そう思って大人しく「蛙」の服を着ました。僕の目的はバイトではないのです。あくまで、この怪しい施設を探ること。想像した通り初日からかなり怪しいことをさせられています。帰ったら笑美に伝えて、一刻も早くこんなあやしい職場はやめようというつもりでした。

 横川にまた明日話そう、と言ってから浴場を出ます。

 それにしても、「兎」「鳥」「魚」「蛙」は分かっても、「鹿」とはどういうことだろう、と思いました。鹿と一緒に過ごすのは無理そうです。野生動物ですし、他の生き物と違って大型です。「鹿」の人からも話が聞きたいと思いましたが、風呂以外でコミュニケーションが取れない現状では難しいような気がしました。

 就寝の前には面接の時間がありました。部屋にいるとスタッフがやってきて、一人一人別の部屋に移動させられます。僕は三番目でした。

 気持ち悪い話なんですが、面接の記憶は全くありません。だから、面接の部屋に誰が何人いて、何を話したのかとか、ほとんど覚えていないんです。思い出そうとしても、頭に靄がかかったようになって。もしかして、食事に何か混ぜられていたのかもしれないのですが……体温と血圧を測られたのは覚えています。治験のバイト?ということなら、GCP違反ですね。ご存じないですか?GoodClinicalPractice、医薬品の臨床試験の基本的な基準を示している省令です。詳しくはないですが、きちんと被験者から同意を得るとか、副作用は報告するとか、そういう常識的なことが書いてあります。イベントスタッフ募集などと偽って臨床試験をしているなら、明らかに省令違反でしょうね。

 とはいえ、体にはなんの異常も感じませんでした。いつもより健康なくらいです。

 その日も一瞬で眠りに落ちて、大変さわやかな朝を迎えました。

 二日目です。

 やはり、ケエコケエコというカエルの鳴き声には慣れません。加えて今日は、カエルを一匹選び、よく観察して描けというんです。おそるおそるケースに近寄っていくと、相変わらずビチビチとひしめき合っていて、それだけで吐き気がします。餌がないのに元気なのも不気味でした。なるべく見ないようにしながら、たまたま飛び上がってきた一体を手に取って、用意された観察用のケースに移し替え、蓋を閉めました。ぬるっとした感触が気持ち悪くて……すぐに手を洗いました。この年になって素手でカエルを触るとは思いませんでした。どうして小さい頃は平気で触れていたのか……そういうものってありませんか?僕は田舎育ちなのでまだ、平気な方ですけど、ダンゴムシとかね。すみません、話が逸れました。

 カエルは狭いケースの中でも大人しくなることはなく、暴れていました。

 これではとてもスケッチなんてできません。絵は下手でも構わないと言われたので、諦めて、どうにかこうにか苦労して書いていきました。ちらちらと周囲を見回すと、他の人も同じように苦戦しているようです。ただ一人、岡田だけは、カエルの敷き詰められた大きなケースの前で右往左往しています。どうやらカエルが掴めず、困っているようでした。ストレスからなのか、ただでさえひどい体臭がよりきつくなって、こちらにまで漂ってくるようでした。可哀想だとは思いましたが、手伝ってやる気にはなりません。

 それでもよそ見をやめて、自分のスケッチに集中していると、徐々に気にならなくなりました。

 小一時間経ってカエルのスケッチが終了したあたりで、部屋にスタッフが入ってきて、僕たちの描いたスケッチは回収されます。岡田の紙も回収されていましたが、やはり観察していないからなのか、僕のヘタクソなスケッチよりもずっとひどい出来に見えました。

 その後は昨日と同じです。ダラダラ過ごして、昼食を食べ、またダラダラ過ごして夕食、風呂、面接です。「兎」の横川とその日も話しました。やはり彼らも、兎を観察してスケッチさせられたということでした。横川の他にも「蛙」以外の人間と話しましたが、二人とも「魚」で、「鹿」のことは聞けませんでした。彼らもまた、フナのような魚をスケッチしたと言います。

 その日の面接の記憶も曖昧です。しかし、「明日は巡回ですよ」と言われたことだけは覚えているんです。

 次の日、僕だけが「蛙」の部屋から連れ出されました。別の部屋に移動させられ、そこには「鳥」と「魚」から来たと言う男女が一人ずついました。

 男性の方は取り立てて特徴がない人で、「俺、魚で良かった。カエル苦手なんすよ」と言いました。名前は確か、佐野だったと思います。女性の方は、顔はかわいらしかったですが、パサパサで艶のないピンク色の髪をしていて、左腕にリストカットの痕がいくつもありました。聞いてもいないのに、風俗嬢をしていて、ホストをやっている彼氏と同棲しているのだけど、彼氏は普通の仕事をしたいと言っているから、そのためにお金が必要なのだと話しました。僕はなんだか悲しい気持ちでした。笑美と重ねてしまったからです。笑美は彼女――カナよりも賢いかもしれませんが、依存的で騙されやすい性格は非常に似ています。ただ、カナの方が人当たりは良いような気がしましたけど。

 しばらく三人でたわいもない話をしていたんですが、そのうち飽きて、各々自由に過ごしました。昼食の時間はありませんでしたが、今日支給された紙袋の中にはサンドイッチとお菓子が入っていて、お腹が空くことはありませんでした。

 午後七時くらいでしょうか、外も暗くなったなあ、なんて思っていると、スタッフが入ってきて、今日のお仕事をしますよ、と言いました。

 三人一組で、施設の周りの雑木林を見回ると言うのです。雑木林で宴会をしている人たちがいるというので、その人たちのため、だそうです。

 あんなところで宴会をする、と言う時点で常軌を逸していますが、僕たちは何も言いませんでした。くどいようですが、皆必死なのです。報酬は七日間きちんと仕事をしたら貰えることになっていて、いつでも離脱していいけれど、その場合交通費以外何も貰えない、という契約でした。

 僕たちは一列に、一番年上の僕が先頭になり、女性のカナを挟んで、雑木林に入って行きます。前にここを通った人が踏み慣らしているため歩きやすく、また、進む方向にLEDライトで目印がついているので迷うことはありませんでした。

 最初はうっすら見えていた明かりが、進んでいくとはっきり見えるようになります。段々、人の声もしてきました。そして、相変わらず、ケエコケエコとカエルの声も鳴り止みませんでした。

 足に刺さる不快な草の感触や、耳にまとわりつくカエルの声を我慢して歩を進めると、宴会場らしきところに辿り着きました。雑木林の中に、小規模な祭りなどで突貫で設置されるステージみたいなものがあるのです。遠目に、長い机が置いてあって、そこに十数人、白い服を着た人間が座っているのが見えます。年齢も、性別も、ばらばらでした。

 つつがなく行われているのを確認したら戻ってきていいということでしたので、来た道を戻ろうとしたとき、気付いてしまいました。

 こんなに話声が聞こえてくるのに、誰も喋っていないのです。

 でも、口は動いている。その口から、ケエコケエコとカエルの鳴き声が出ているのです。

 カナの口から短い悲鳴が漏れました。慌てて口を塞いで、草の陰に身を隠します。

 宴会客が気付いた様子はありません。ケエコケエコと鳴いています。

「ヤバい……」

 カナが小さい声で呟きました。

 そのとおり、確かにヤバい状況です。話し声はますます大きくなり、笑い声さえ聞こえてくるのに、それがどこから来たものなのか見当もつかないのです。

 宴会というだけあって、テーブルの上にいくつも料理が置いてあり、周りは飾り付けられていましたが、誰も手をつけていないし、全く楽しそうでもありません。ただ、なんの色もない顔でケエコケエコと鳴いているのです。

 佐野が逃げましょう、と囁きました。もう、我々も宴会の中にいるような錯覚に陥るほど、声が近かったからです。

怯えて立てないカナを引きずるようにして後退しました。幸い、声が追ってくることはありませんでした。

 建物の入り口にはスタッフが立っていて、

「お疲れ様です。そのまま身を清めてください」

 と言いました。

 彼についていくと、これまでとは違う、完全に区切られた個室のユニットバスで体を綺麗にさせられました。

 そのまま、二人と意見交換をする間もなく、面接室に誘導されました。佐野はまだしも、カナはあんな調子で明日からも働くことができるのだろうかと、他人事ながら心配になりました。

 当然、僕も怖かったですよ。ただ、よく考えたらすごく暗かったですし、我々の見間違いかもしれませんしね。

 ともかく、面接です。いつも通り記憶は曖昧でしたが、「巡回はどうでしたか」という質問にだけはきちんと答えました。「毎日これがいいです」と。だって、カエルと一緒に室内で過ごすより、どう考えてもこの場所の異常性を調査するには適しています。

 そういうわけで、僕は次の日から、寝るとき以外は「蛙」部屋の人々とは別の場所で過ごすようになりました。

 寝る前のわずかな時間に誠一と隆二の兄弟に、今日は何をしていたのか尋ねることにしました。やはり、カエルを観察しているだけだったそうなんですが。

 そして、ほんの一日目を離しただけなのに、人間関係が拗れていました。あのひどい体臭の岡田が本当に耐えがたい臭いを発しているので、とうとう注意した涌井と揉め、涌井が殴られたので、同様に悪臭に我慢していた他の三人が加勢したところ、岡田を虐めているような形になったらしい。僕は呆れました。普通の成人男性がそろいもそろって、話し合いすらまともにできないのです。

「やっぱ、島本さんいないと駄目かもです」

「でも俺、明日からずっと外の仕事なんだよ」

 そう答えると二人は最悪、と言いました。

 やはり彼らは、所謂「社会不適合者」というやつなのだと実感しました。

 次の日、例の待機部屋に行くと、佐野とカナはいませんでした。マイクロバスに乗ってきたメンバーとは違う人が二人います。話を聞くと、二人とも前からここで働いているスタッフだといいます。

「ほかのお二人はやりたくないと言うので帰って頂きました。以降は我々と、島本さんだけで巡回をすることになります」

 帰ったというのはどういうことなのか。あなたたちはここで何の仕事をしているのか。いくら質問をしても、それ以降は無視されてしまいました。

 そして、夜がやってきます。

 昨日よりずっと重苦しい雰囲気の中、三人で草をかき分けて進みました。今度は殿です。すぐにケエコケエコと、あのカエルの鳴き声が聞こえてきます。まあ、カエルではないのですが……。

 昨日と同じように宴会場に行き、様子を確認します。やはりケエコケエコと鳴く人間が、ご馳走にも手をつけず座っているだけです。昨日と違うところは、テーブルの上に料理が増えていたことでしょうか。そして、なんだか、宴会客も増えているような気がするんです。テーブルの中央に、昨日は絶対にいなかった若い女性、が座っているように見えました。もっとよく観察しようとすると、他の二人にあまり見てはいけませんと注意され、元来た道に引き戻されます。確かに、昨日聞こえた話し声も不気味でしたし、言う通り帰ることにしました。

 建物に帰ってすぐ風呂、面接です。

 昨日と同じことを聞かれ、同じように、

「ずっと巡回がいいです」

 と答えました。

「蛙」部屋に帰ると、部屋の隅で岡田が、全裸になって震えています。何故か全身から水がしたたり落ちていました。

 これは一体どうしたことかと尋ねると、

「このオッサン、臭ぇし、風呂も入らねえから、俺たちで洗ってやったんすよ」

 誠一がそう答えました。

 見ると、隆二も、涌井も、玉田も、誇らしげにふんぞり返っていました。

「でも、こんなにしたら可哀想だよ。彼も寒いだろう」

 そう言って、その辺に散乱していたタオルをかけてやると、岡田は声を上げて泣き出してしまいました。

「あ、あ、あ、あ、あなた! そいつの! 肩をも、持つんですか! オレたちは、ほ、ほ、ほ、本当にっ! 迷惑しているのにっ!」

 よほど興奮しているのか、どもりながら涌井が言いました。僕はまた、呆れました。

 小学生レベルの虐めを行っているのもそうですし、涌井は自分でずっといじめられていたと言っていたのです。やはり、「いじめられた人間は心の痛みを知っているからこそ人に優しくなれる」などというのは幻想で、「長い間いじめられながら育つと人に優しくする方法が分からなくなる」が正しいのではないかと思いました。

「肩を持つとか、持たないとかじゃないだろう? 大人なんだから、気に入らないことは話し合って解決しようよ」

 涌井は不満そうに鼻を鳴らしました。

 僕は強制的に洗われて、少しは臭いのマシになった岡田を起こしてやり、

「岡田さんも、お風呂に入らないのは良くないですよ。お風呂に入るなんて言うのは、大人以前に、人として当然のことです。確かに、臭いますしね。お風呂に入れというのは正論でしかないです。正論を言われて逆ギレしたからこんなことになったんですから」

 岡田はしゃくりあげながら頷きました。

 僕が「お互いに謝って」というと、しぶしぶと言った感じで、全員が謝罪の言葉を口にしました。内心うんざりしながらも、皆もう少しなんだから頑張ろう、と声をかけ、その日は就寝しました。

 しかし、下らない人間関係による疲れで、上手く眠れなかったのでしょうか、夜、変な時間に目が覚めてしまいました。

 寝なおそうと頑張ったのですが、妙に目が冴えて眠れません。そこで、一つの考えが浮かびました。もしかして今なら、この施設の全貌を確認できるかもしれない、と。

 寝ているメンバーを起こさないようにしながら、布団から抜け出します。涌井がとんでもなく大きないびきをかいていて、よくこんな騒音の中眠れていたものだと感心しました。

 そして、妙なことに気付きました。カエルの鳴き声が聞こえないのです。カエルは人間と違って、必ずしもすべての個体が夜眠るわけではありません。少しは静かになったとしても、静まり返っているのは妙です。

 ガラスケースの方を伺うと、なんと、何も入っていません。一体どうやってあの量のカエルを、誰も起こすことなく運び出したのか……。不思議を通り越して、不気味でした。

 しかし、なんとか当初の目的――つまり施設の偵察――を果たすため、と自分に言い聞かせて、部屋を出ました。

 誰もいない、明かり一つない中で、コンクリートの床が月光を反射しているのはとても不気味でした。スマートフォンのライトをつけようかとも思いましたが、恐らく、何人かは起きている人間がいるはずです。気付かれてはまずいと思って、なんとか月明りを頼りに、壁伝いに歩きました。

 階段を下っているときでした。僕は支給された靴下を履いて歩いていたので、足音はしないはずです。それに、階段に来るまでも、一切音など聞こえませんでした。

 それなのに、上の階から、こつこつと、硬い靴底で歩き回っているような音がするのです。もしかして警備員の巡回か、と思い、僕は気付かれないように身を縮めて、それでも素早く階段を降りようとしたのですが、足跡はそれに気付いたかのようにダダダダダッと近付いてきます。それなりに運動はできる方だという自負があったのですが……もう追いつかれる、と思い、咄嗟に階段近くの、壁が凹んでいる部分に身を隠しました。

 しかし、足音は一つ上の階、つまり、僕がさっきまでいた「蛙」の部屋がある階で止まってしまいました。しばらく息を殺していると、扉の開閉音がしました。

 これはまずい。いないのがバレたかもしれない。しかし、今更戻っても――色々考えているうちに、再び開閉音がして、靴音に混じって何か重いものが床をこすっているような、ずずず、ずずず、という音も聞こえます。

 とても不快な音でした。もう、バレるとか、バレないとか関係なく、一刻も早くその音が聞こえない場所まで行きたくて、階段を駆け降りました。そしてその勢いのまま玄関に走り、外に出ます。

 すぐに後悔しました。

 あちらこちらから、話し声がするのです。宴会場で聞いたものと同じでした。

 話し声はしているのに、話しているはずの人間はどこにもいないのです。

 さらに不気味なのは、こんなにはっきりと聞こえるのに、一切何を言っているのか分からないところでした。外国語だとか、そういう感じでもありません。

 人間以外の存在が、人間の言葉を借りて無理やり話している、そんな風に聞こえました。

建物内に戻ろうと思いました。しかし、体が動きません。どんなに気合を入れてもダメでした。

 声はどんどん近付いてきます。

 上から。

 下から。

 前から。

 後ろから。

 突然。

 肩を掴まれて。

 それから――

 目覚めると、僕は布団に入っていました。

「蛙」部屋の一番入り口に近い場所です。飛び起きると、もう他のメンバーは目覚めていて、「今日は遅いっすね」と笑われました。

 夜なくなっていたカエルも、ガラスケースに満杯にひしめきあっています。

 恐らく、全て僕の夢だったのだろうと考えました。夢は、一説によると起きているときの情報を整理するために脳が見せている映像だそうです。

 こんな異常な環境にあって、脳も相当混乱したのでしょう。

 深呼吸をして、ふと、気付きます。

「岡田さんどうした?」

 岡田がいないのです。

「ああ、あのオヤジなら、夜逃げたみたいっすよ」

 隆二が嘲るように笑って言いました。

「ほら、荷物もないでしょ。きっと、俺らにビビったんすよ」

 僕は何も言えませんでした。恐ろしい考えが脳内で線を結んで、像を作りました。

 昨日の、あのものを引き摺るような、聞くに堪えない音。

 あの音は、岡田が引きずり回されていた音なのではないだろうか。

 そう考えてしまった途端、視界がぐらぐらと揺れるような感覚がして、思わずへたり込んでしまいました。皆、僕を心配して、今日は休んだ方が良いのではないかなどと言います。僕も休みたい――もとい、もう、モリヤ食品やこの施設について探るのは諦めて、帰宅したいのは山々でした。

 あの音が岡田が引きずられる音だったと仮定すると、外に出たときに聞いた声の主が見えない話し声や、何者かに肩を掴まれたことなどが本当のことだということになります。それになにより嫌なのが、引きずられていったのが岡田だということでした。

 勿論、あんな体臭のきつい中年男性のことを惜しんだわけではありません。

 僕は、入り口の一番近くに寝ていた、と言ったでしょう?

 その隣に寝ていたのは、岡田なんですよ。

 つまり、消されていたのは自分だったかもしれない、そういうふうに思ったんです。

 それでも、僕を引き留めたのは、頭に浮かんだ笑美の顔でした。

 笑美のために、どうしてもこの施設の全貌を暴かなければいけない。

 そう思って、帰るのはやめました。

 決意を新たに挑んだ五日目の巡回なわけですが……これが拍子抜けするほど、何もありませんでした。相変わらず、不気味な話声のする中、複数人がケエコケエコと鳴いていて。まあ、ご馳走も宴会客も増えていたし、その日に関しては洗っていない雑巾のような悪臭もしたんですけど……本当にそれだけだったんですよ。

 昨日、何者かに肩まで掴まれて、おまけに岡田も消えたんです。こんな些末な変化ではなく、もっと恐ろしいことが起こると思うじゃないですか。例えば、バケモノに襲われるとか。でも、本当にそれだけでした。

 ただ、面接のときに、「今日で巡回は終わりです」と言われました。

 本当に良かった、と達成感で胸がいっぱいでした。

 外を見られなくなったのは残念でしたが、宴会の音声や、施設の様子など、あらかた録画出来ましたし。これだけ証拠があれば、もう誰でもここが異常な施設だとわかるでしょう。

 念のため、玉田に頼み込んで、布団の位置を交換してもらいました。涌井のうるさいいびきには辟易していたそうで、二つ返事で代わってくれましたよ。

 そして無事、就寝。

 次の朝横を見たら玉田が消えていた――なんていうことはなく、とても安らかな表情で熟睡していたので安心しました。社会不適合者の男とは言え、身代わりになって死なせたらいい気分はしませんからね。

 こうして無事、六日目の朝を迎えたわけです。

 六日目。

 その日は、朝食のあと、大きなホールに集められました。

 来たときは十数人いたはずなのですが、半分くらいになっています。「兎」の横井もいませんでした。

 ホールの中央には、奇妙なオブジェが鎮座していました。塔のように先細りの形をしているんですが、木がめちゃくちゃに組み込まれていて、「塔のような形」とも言えない、木でできた何かです。僕の身長が百八十二cmですから、だいたい高さとしては十mくらいあったんじゃないかと思います。

 とにかくその、目立つ奇妙なオブジェのまわりを囲むように立たされました。

 しばらくそのまま待っていると、スタッフが何人も入ってきて、僕の前にドサッと薄汚れた袋を投げました。どうやら、他のメンバーもそれぞれ袋を渡されたようでした。

『スタッフの指示にしたがって作業を始めてください』

 突然、館内放送が流れました。

 驚いたのは、その声でした。

 少し高い、若い男性の声なのですが、聞くと脳内が揺らされるような、変な感覚に陥ります。

 だから僕は、袋から出てきたものも、異常な指示も、最初は全く気にならなかったのです。

 袋の中身は、大量のカエルの死骸でした。

 すべて、死んでいて、ピクリとも動きません。

「解体してください」

 目の前の男はそう言って、紙を手渡してきました。紙には、カエルの解剖図と、解体の手順が書いてあります。

「時間がかかってもいいので、すべて、解体してください」

 男が、念を押すように言いました。

 信じられないことに、僕は何の疑問も持たず、指示に従いました。おかしいですよね。どう考えてもおかしい。しかし、そのときは、その声に従うのが当然の義務のように思えました。

 まず皮を丁寧に剥いで、内臓を抜いて洗い、骨と肉だけにする。それの繰り返しです。気持ち悪いとさえ思いませんでした。ただ、そうするものだと、自然に思い込んでいたのです。

 五体ほど、肉と骨だけになったカエルの死骸が並んだ時でしょうか。何やら、すごく嫌な感じがしたんです。それは、カエルの死骸や、解体に対する嫌悪感ではありません。

 夜中に抜け出して、肩を掴まれたとき。あれと全く同じ嫌な気配がしたのです。

 そこで覚醒しました。

 一体何をしてるんだ、と思いました。手にはぬるりとしたカエルの腸がこびりついています。顔を上げて辺りを見回し、一呼吸して、吐きそうになりました。

 血と臓物のきつい臭いが充満しています。

 隣の男は大量の兎を、その隣の男は何か大きい生き物だったらしきものを解体していました。

「どきなさい」

 血と臓物の臭いより、ずっとひどい、すさまじい嫌悪感がすぐそばにあるのを感じました。その嫌悪感の源が、あの、美しい声で話しているのです。

 顔を上げると、声から想像した通りの、顔に幼さの残る青年が、指示役のスタッフをどかしていました。

「この人の世話は私がしましょう」

 彼は、にっこりと、如何にも作ったような笑顔を顔に張り付けて言いました。

「まだできますよね?」

 胸から酸っぱいものがこみ上げます。今にも吐き戻してしまいそうなのに、何故か手が動き始めました。意志とは裏腹に、体が彼に従おうとしているのです。

 直感しました。

 彼が「ヤン」です。

 そうとしか思えませんでした。

 僕は昔からカンがいいんです。きっと、彼の嫌な雰囲気に気付き、この異常な行動をやめることができたのもそのおかげだと思います。

 彼を「ヤン」だと認識すると、笑美のことを思い出すことができました。

 笑美はこいつに、この声に洗脳されて、恐らく我々がやっていることと同じような異常なことをやらされている。

 そう思うと猛烈な怒りが湧いてきました。もう、手も自由に動きます。

 立ち上がって、

「お前がヤンだな」

 そう言いました。

 彼はきょとんとした顔で、

「あれ……名乗りましたっけ。確かに、私はヤンですが……」

 しばらく黙った後、彼は微笑みました。

「あなたとは、もしかしてもっと建設的な話ができるかもしれませんね。勿論、今やって頂いていることも、素晴らしい行いのひとつなのですが」

 脳が燃えるような怒りでした。こいつはヘラヘラして、根本的に人を馬鹿にしている。笑美や、ここに来たアルバイトたちのような、心の弱い人間を食い物にしている。

 その怒りのまま、

「笑美を返せ」

 そう言いました。

「ヤン」の顔色が変わりました。綺麗に弧を描いた口の端がプルプルと震え、目が一点を見つめています。

 やはりこいつは、笑美のことを知っている。笑美に良くない関わり方をしている。そう確信しました。

「笑美は、一人じゃ何もできないんだ。そこにつけこんで、お前は何をさせようとしているんだ? 変態野郎。ここでの証拠は全部残ってる、早く笑美を」

 そこまでしか言えませんでした。

 急に肺が圧迫され、呼吸さえおぼつかなくなったのです。

「お前か」

 ゆっくり、ゆっくり、気が遠くなるほどゆっくり、「ヤン」が顔を近付けてきました。

 その間ずっと、僕は水槽の外に放り出された魚のように、酸素を求めて痙攣していました。

「お前だ」

 彼は指を三本立てて、自分の唇に触れました。深く息を吸い込んで、

――あなて――

 その一瞬の呼吸の隙をついて、僕は走りました。

 視界が揺れ、鼓膜が破れそうに震えています。誰のかも分からない靴を履いて外に出て、全速力で田園を走り抜けました。

 二回来たことがあるので覚えています。しばらく進めば、飲食店と、ローカル線のバス停があるのです。

 禁止されていたけれど、財布とスマホを手放さなくてよかったと心底思いました。

 僕は這う這うの体で、こうして逃げ帰ってきたわけです。


 ……さっき、僕のカンの話をしましたね。

 この「カン」は、勿論、空気を読んだり、イヤなことを避けたりすることにも使えるのですが、もう一つ、感じるものがあります。

 心霊現象です。幽霊が見えるわけではないのですが、そういう、悪いものが溜まっている場所はすぐに分かります。

 あの「ヤン」という男を見たときに感じた吐き気を催すような不快感……あれは、人間ではないと思います。

 実際、動いて歩いて、他の人にも見えていたようですから、幽霊ではないと思いますが……それでも、人間でないことは間違いないと思います。

 だから、佐々木さんに今回依頼したんです。カンが良くても、避けることはできますが、解決することはできないんです。

 どうかお願いです、大事な妹の笑美を、あの悪魔から救ってください。


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