第5話 調査終了
そんなことをしたのちひと月半ほど過ぎて。固定資産税の納付書も届いたけれどさっくりと放置プレイ。いい加減相続放棄手続きそろそろやらんといかんかなぁと思い始めた辺りで弁護士さんから電話。概ね調査が終わったとのこと。
留守番電話のメッセージを聞いて折り返す。折よく弁護士さんの手が空いていたようで、直接電話に出ていただく。
「一応近隣の金融機関に問い合わせしたのですが、信用金庫に少額の預金があったくらいで、他の金融機関には残高なしとか口座なしとかでした。」
「じゃあまあ、財産は土地だけ、ってことですかね。」
「そのようですね。調査報告は後で郵送しようと思っていたのですが...。」
「もし今お手隙でしたらお伺いしましょうか?」
「それでよろしければ。」
「では伺います。」
近場の法律事務所に頼んだメリットを最大限活かして、残り仕事ささっと片付けて法律事務所へ出向く。
「おいでいただいてすみません、こちらが金融機関への問い合わせ結果です。」
結果としては、残高なしとか取引なしとか。信用金庫の数万円のみが残高で、郵貯は残高なし。取引なしと書いてあるところは取引なしなのだろうけれど、郵貯は生前に引き出された後な感じがするなぁ。
「ということは、残る財産は土地のみ、ですかね。」
「そうじゃないでしょうか。戸籍も取り寄せました。亡くなったのは昨年ですね。」
とすると今は亡くなって六ヶ月以上か。
「それじゃあ、今後は相続放棄の手続きを進めようと思うのですが、放棄の申請の時に戸籍をきっちり揃えて出さないといけないということなんですが、どこまでそろえる必要がありますか?引っ越ししたりして多少本籍も動いていますし、父の出生から死亡までの戸籍を全部揃えたりが必要ですか?」
「いえ、相続放棄の場合には、他の相続人がいるとかそういったことは関係なく、申立人が被相続人と血縁があることを証明する書類があれば十分なんです。ので、多分今揃えた程度の戸籍があれば十分ではないかと。」
「つまり、岩田ハジメの父が岩田ノボルで、その父が静岡県御茶国市何処に本籍のある清水太郎である、ということが戸籍の書類で読み取れれば十分、ということで。」
「そういう理解でいいと思います。」
はあ、ようやく大体の書類が揃ったか。
「ところで、今回相続放棄請求は弟妹とも一緒に出すことになるんですが、その場合同一の書類は出さなくていい決まりがあるそうなんですが、その対応の場合には書類の書き方で注意するところとかあるんですか?」
「ああ、その場合は関連事件と書く欄がありますので、それぞれ申述書を作った上で、一緒の封筒に入れて送るといいです。何かに書類は共有します、と書いて一緒に送ることでいいと思います。」
「わかりました。」
まぁこのまま放棄の手続きまで頼んでしまう手もあるのだろうけれど、正直あとは書類書けば終わりそうなのでそこまでは頼まない予定。あとは兄妹で顔合わせて書類をまとめる作業が必要かな。
ようやく先が見えてきた感じで。
気になっていることを尋ねておく。
「相続放棄のことを調べていると、相続人が誰もいない状態の時には相続財産管理人というのを立てないといけないみたいなんですが、今回の場合うちが放棄した後は相続人がいるんですかね。」
「それは現時点ではなんとも。順番としては清水太郎さんの兄弟、そして兄弟の子供が相続権発生しますので、戸籍を調べてそういった人がいるかどうか、ですね。」
「それ調べてもらえますか。あと、息子さんと娘さんがいるはずなんですが、住所が戸籍の附票から判れば。」
調べていくと、相続の常識として、一部の相続人だけでことを進めるものではないことがわかる。一番事情がわかっている実子の方々、わたしからみた叔父叔母は今回全く姿が見えない。一本連絡をくれれば、という思いもあって、詳細を調べたかった。
「わかりました。やってみますね。お預かりした費用にはまだ余裕がありますので。」
「ありがとうございます。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます