第4話 法律事務所に行く。
さて、法律関連の相談となれば、行き先は法律事務所、弁護士さんのところと相場は決まっている。司法書士でもいいのかもしれないけれども、幸い職場の顧問弁護士事務所にアポイントが取れた。
仕事を少し早退けして事務所にいく。受付をして、少し待たされた後で弁護士さんと面会できた。優しそうな女性の弁護士さん。
「今日ご相談に伺ったのは、こういったものが届きまして」
市役所から届いた固定資産現所有者申告書を見せる。
「拝見しますね....この方は?」
「ええ、清水太郎は血縁上の祖父ということになります。
「お父さんは岩田ノボルさん?」
「はい、すでに亡くなっています。 祖父が亡くなったということでこの問い合わせがきたということのようです
「清水太郎さんに他にお子さんは?」
「戸籍の情報辿るといらっしゃると思うのですけれど、市役所への電話での問い合わせからするとすでに相続放棄されているのではないかと。私と弟妹が相続人といわれました。」
「この土地についてですが、相続されるご意志はありますか?」
「実子の方が相続放棄しただろうと予想しているので、しないほうがいいのかなとは思ってますが、実際にどんな財産があるのかちょっと気にはなってます。ただ調べるのがかなり大変そうで。」
「確かに、相続するとなると負債も含めて調べないといけないですし、個人間の貸し借りだとわからないことも多いので、思いがけないマイナスの資産が出てくる可能性もあります。限定相続という、正の資産だけ相続するやり方もあり得ますが、そのための手続きに費用もかかりますので。」
「私としては、資産の状況はちょっと知りたいなと思っていまして。ただ、最終的には相続放棄になるかなと思っています。」
「そうすると、手続きの期限が問題になりますが、相続が発生したことは市役所からの通知で知った、ということでいいですか。」
「はい」
「そうすると相続放棄の期限は三ヶ月以内ですので。まあしばらく期間はあります。市役所の方はそういうことなら急いで返事はしなくていいかと思います。」
「相続放棄の手続きはどうしたらいいですか」
「相続放棄の手続きそのものは戸籍が揃えばそう難しいものではないです。何をどこまで調べるかが課題ですね。資産調べは土地などは登記簿を取ったり名寄せを見ることで大体わかります。預金は郵貯とか信用金庫・農協などの支店に当たりをつけて照会をかけることはできます。株だのなんだのも同じ手法で調べられます。ただ、生命保険などは受取人が指定されていないものは調べがつかないことがありますね。」
ふうん。蛇の道は蛇、というところか。流石に法律事務所となるとこのくらいの調査は難しいことではないらしい。
「それでは、とりあえず調査をさせていただいて、結果が揃ったところで一度結果報告させていただいて、その上で申し立てをどうするか相談させていただくことにしましょうか。」
「はい、じゃあそれでお願いします」
「そうしますと、こういったものは事実関係調査ということになります。報酬と、それから事前に調査費用をお預かりすることになります。調査費用は余ったらお返しすることになります。」
「わかりました。」
というわけで、調査の依頼をして契約を結ぶ。調査のために必要なのは委任状と、印鑑証明。実印の印鑑証明が必要と言われたので、市役所に行かねばならない。ついでに自分の戸籍謄本を取ってくるか。
話が一通り終わったところで、ちょっと気になっていたことを聞いてみた。
「こういう現所有者申告書持ってくる人っているんですか」
「いや、固定資産税払いなさいって納付書が来たと言って持ってくる人は時々いますけれど。私は相続人じゃないのにとか、なんで私だけがとか。」
「なんかこの制度、最近始まったらしいんですよね。そういうトラブルがあったから変わったんですかね」
「すみません、私もそこは詳しくないんですが、そうかもしれませんね」
まあ、納付書がいきなりくるより、誰が納めるのか申告してくれの方がマイルドな感じはするし。
結構丁寧にお話ししてもらったので、調査をお願いして、しばらく待つ、という方針で行くことにする。
そんなわけで法律事務所の方に調査をお任せした。
「あ、そういや市役所が方針決まったら電話ほしい、って言ってた」と思い出したので、御茶国市に電話。名前を名乗って、相続放棄の手続きにかかったことをお伝えした。連絡先を聞かれたので携帯電話の番号をお伝え。
これで済んだ、と思っていたら、折り返しの電話がかかってきた。携帯電話の留守番電話にメッセージが残っていて、伝えたいことがある由。着信履歴を見てかけ直す。
「折り返しをいただきましてすみません。相続放棄とのことなのですが、一応固定資産税の納付書を送らせていただくことになります。相続放棄の手続きが全部すみましたら、家庭裁判所から手続きが完了した旨の通知が来ますので、それと一緒に納付書を送り返していただきたいです。」
「はあ。」
まあ、向こうもお仕事なんだろうし。今年の分の納付が必要ってことは、亡くなったのは多分昨年なんだろうな。了解して電話を切った。
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