第2話 御茶国市課税課に電話する。
というわけで翌日。
仕事中の私用電話を許してもらって午前9時に御茶国市課税課に電話をかける。直通電話の番号が記載されているのは地味に嬉しい。
名前を名乗って、「そちらから送られてきた固定資産現所有者申告書について聞きたい」と伝えたところ、「後で担当からかけ直すので一旦切らせて欲しい」と。今仕事中かけているので、待たされるのは困るのだけれどと伝えると、そんなに時間は取らせない、とのこと。携帯電話の番号を伝えて一旦切る。後で考えると、かかってきた電話にそのまま答えてしまうとなりすましなどを見抜けない可能性もあるので、かけ直して電話番号などを確認する意図もあったのかもしれない。
10分経たずに電話がかかってきて、先程の人とは別の人。「清水太郎さんの固定資産現所有者申告書を出してくれ、という手紙が来たのだけれど」ということから話を始める。
「亡くなったことをこの通知で知ったくらいで、正直、全く会ったことない人で。代表者になる気は全くしないので、これ返送しないでいいですか」
「まあ、相続する意向がないのであれば相続放棄など手続きしていただく必要があります。これはあくまで意向の調査なので」
「そもそも、清水太郎さんの子供さん方はどうなんですか」
「相続放棄の手続きを既にされている方もおられるので....」
ん?役所の方の言い方に違和感を覚える。役所的にあまり細かな情報を口にしたくはないのか、言い回しが微妙だけど、もしかして実子は全員相続放棄しているのかな?
「確認しますけど、相続放棄した人は抜いて、役所が把握している範囲で静岡県に相続人はいますか?」
「現在おられません。そういうわけでまず岩田ハジメさんに書類をお送りしたところです。」
「私の弟妹には書類を送ってないってことですかね」
「はい、今後送るかもしれませんが」
うん、とりあえずこれで弟妹に書類が来てないことについては裏が取れた。
「とすると、とりあえず相続人になるつもりがない状態であれば、この期限までに書類を送り返す必要はない、ってことでいいですか」
「はい、ただ相続放棄の手続きは詳しい人を頼むなどしてそちらで進めていただければと思います。あと、相続放棄の手続きを始めたことを市役所に連絡いただければと思います。」
手続き済んでしまえばいやでも知ることになるとは思うのだが。一応事前に知りたいのかな。
「わかりました、ありがとうございます」
実は、父が亡くなり、実祖父が存命ということを知って、相続が発生するだろうことは予測していた。実祖父の子供さん方が父の存在を知っているかどうかはわからないと思っていたし、私のように戸籍を取り寄せてびっくり、という展開もあるかも、と思っていた。相続の手続きを終了させるには代襲相続人である私や弟妹の印が必要になるだろうから、その時は連絡が来るだろうと思っていた。
よもや、預貯金から何から綺麗に全てを放棄してくるとは思いもせず。
でもまあ、故人の状況をある程度把握していたはずの子供さん方が相続放棄している状況からは、多額の遺産があったりするとは思えず。下手すると借金が大量、という展開かもしれないので、これは相続放棄の路線かな。でもちょっと相続財産の詳細が知りたくもある。
とりあえずは、対応方針としては相続放棄の手続きを進めることにする。あとはどう進めるか。御茶国市へ何度も行くような展開は避けたいのだが。
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