第2話

 私は学園のオーナーなんかをしている。代々受け継いでいるだけの肩書きだが、それでも若人が学問を身につけ高みを目指す、そんな姿を好ましくは思っている。


 毎年、姉妹校などへこれから受験を迎える学生に説明会なんかも精力的に行っている。うちの学園の教師陣は志が高く、教師であっても傲る事無く教鞭をとれる、そんな人材だけを集めている為非常に狭き門なのだ。それ故、他の学園に比べ少々教師陣達の給金が嵩むのだが、そんな教師陣のおかげもあり、我が学園はいつの時代も非常に評判が良くそしてレベルが高い。故に、必要経費だと思っているので問題は無い。


 くだらない偏った理想を掲げた二流教師に不祥事を起こされる事の方がよっぽどの痛手だ。


 そんな良くできた教師陣に説明会は毎年丸投げをし、私の毎年の楽しみは学生を吟味することだ。


 これから先の将来を具体的に見据える者、漠然としか思い浮かべられない者様々だろうが、早くに目標を持ち、そこに向かう努力をする方が、後者より明らかに有利である。そしてその方が、後からいくらでも別の道も開けるだろう。

 だから私は、今はまだ目標が無いのならば、現在己の出来得る最大の努力をし、目指せる最高ランクの学校を目指すべきだとそう考えている。

 そして、そんな努力をしてきた学生を是非我が学園に迎え入れたい。


 今日訪れた高校は、今私の親族が通っている男子校だ。そこそこの進学校である。毎年我が学園にもここの卒業生が数名入学している。今年はどんな顔ぶれか。


 沢山の学生が講堂に集う中に、見つけてしまった。ついに私は見つけてしまった。ダイヤモンドの原石を。

 

 視力が悪いのか、分厚いレンズの黒縁メガネをかけている、身長も理想通りの平均位だろう、少し痩せすぎだな。ま、そこは後々私がじっくりとカラダを造っていくとしよう。前髪が長く顔を隠してはいるが、私にはわかるよ。君がモブを装っている事位。


 私はチワワに用は無いんだ、ちゃんと男らしい身体つきで、身長も私の好む抱き心地位はあって欲しい。わんこのような瞳は要らない。全てがまさに理想通り。


 私のシンデレラ。ようやく見つけた。早急に手を打って、捕らえなければならない。周りから固めるか。


 即親族の甥に指示を出した、あいつの弱みは握っている、いくらでも好きに動かせる。シンデレラが甥の高校にいてくれた事が奇跡だ。くれぐれもシンデレラに手を出さない様しっかり釘を刺しておこう。あいつもきっとストライクゾーンのはずだからな。


 私のシンデレラは我が学園に入るには少々偏差値が足りない様だ、バカは困るが私は伴侶に特に学力は求めない。しかしやれば出来る才能が有るのに埋もれさせるのは非常に勿体ない。それとこれとは話が違う。さあ、私の所へおいで。


 甥に必ず我が学園にシンデレラを合格させるようにと、勉強を教えるようにさせた。大丈夫、元が悪く無いのだから2年あれば難無く間に合う事だろう。


 私のシンデレラ。甥なんてそんなしょうもない男より私の方が必ず幸せに出来るよ。そう運命で決まってしまっているのだからしょうがない。


 今はまだ良い。我が元に来たら……未来を想像すると楽しみで仕方がない。

こんなに私の胸を高鳴らせるなんて、私のシンデレラ、どうしてくれよう。


 とうとうシンデレラが我が元に。


 私は書籍が好きだ、沢山の書籍に囲まれたこの匂い、静寂な時が流れる図書館が私のパワースポットだ。オーナーなんぞ日常でやる事など特に無い、なので私の趣味で図書館に毎日入り浸り、司書なんて事をしているのだが、私の空間にシンデレラが入ってきた。


 ふっふっふ待っていたよ、シンデレラ。


 シンデレラはとても勤勉だ、毎日私の所へきて勉強をして行く。教師達からの評判も良い。それはそうだろう私のシンデレラなのだから。


 さあ、始めよう。


 まずは、甥の周りに取り巻きを増やした、甥にはもうシンデレラとの接触は禁じた。シンデレラ、もうあんなやつと関わる必要は無いんだよ。もう必要ないんだ。


 シンデレラの泣きそうな顔。私を堪らなくさせる。そう、それで良いんだよ大丈夫。


 ここで、甥にももう少し釘を刺しておこう。隠してはいるがシンデレラに惹かれているのが見て取れる。


 周りを直ぐに魅了してしまうシンデレラには困ったものだ。


 甥にはちゃんと言い含めておいたよ、簡単なものだったな。ま、こちらとしてはそれで良かった訳だが、念のため一人充てがっておいた。これで心置き無く私のシンデレラとの時間を楽しめる訳だ。


 私はわざとシンデレラに甥のあの現場を見させた。私はもう抑えるつもりは無いさあ堕ちておいで。


 やはり堪らないな、想像なんて霞んでしまう。理想を超える現実なんてそうそう無いだろうが、この泣き顔は我慢ならない。


 強気そうな切長の目が次から次に涙を溢れさせている。


 普段は泣く事など無さそうな、この顔を崩させるのが堪らなく私に刺さる。


 あぁ、耐えられない。


 もっと泣き顔をみたくて思わず手首を強く握っていた。やはり痩せすぎだ。これからは私がシンデレラの全てを管理しよう。そう文字通り全てだ。


 はぁ、この感覚。


 全てのパズルピースが漸と嵌った感覚。


 おや?シンデレラも感じてくれているのだろうか、その表情も堪らなく私好みだよ。


 もうあんな奴のことで泣く必要は無いだろう?


 これからは私がじっくりと開発して鳴かせてあげるからね。


 もう離さないよ。



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狙われたモブ やのつばさ @hlk

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