第20話 吸血姫さんはいじめられる。
朝起きると信彦さんはすでに家を出ていた。一軒家を持っていて由美さんが遊ぶのを放ってあげるほど収入あるということは結構すごい人なのかもしれない。
そういえば外面はエリートって言ってたような……
それはともかく今日は学校だ。制服を見回した後に琴美ちゃんがきているのを想像して幻惑魔法を使う。
「制服姿の琴美ちゃんはこんな感じかな?」
制服姿も普通に可愛いな。でも制服がところどころ汚れていたりシワもついている。割と物理的にもいじめられているのかもしれない。
学校に着いたけどすれ違う人とかみんなこっちをチラチラ見ながら友達とボソボソ喋りだす。前世の自分だったら絶対に耐えられたいだろうな。
ちなみに家ではスマホで動画を隠し撮りして、それに加えて録音機も使っている。これを出しにすれば申請も通るはずだ。
学校では流石にスマホを持ち込んだのがバレるとめんどくさいので録音機だけしか使わない。あと、親の場合は罪に問われない可能性が高いけど他人の場合はしっかりと罪にある。
琴美ちゃんのクラスはここかな?先は一番後ろの一番左って言ってたっけ?あーすごい懐かしいなぁ。通ってたところは違うけど学校特有の雰囲気を感じる。周りがこんなんじゃなければ最高なのに。
『相沢さんきたよ』
『それな、少し離れようぜ』
『顔は良いのに性格が終わってるとか最低だよな』
いや、最低でクズなのはお前らだよ。聞こえてないとでも思ってんのか。録音機は性能が良いので雑音とかは録音されないし、小さい会話とかでも拾ってくれる。
私は耳がいいせいでもっと聞こえてくるけど……
しばらく席でじっとしていると「ギャハハ」と下品な笑い声と共にスカートの短い3人と男2人が教室に入ってきた。
この5人が入ってきてから、クラスの雰囲気が重くなる。みんないじめの対象にならないようしているのだろう。
「あれ?相沢今日早いじゃん。わざわざ学校にいじめられに来るなんてご苦労さま!」
めっちゃ堂々と話してくるじゃん。こいつが主犯格の桐崎夢か。これで学校も対応しないとか両方終わってんな。
「あれ?どうしたの、ビビっちゃった?」
「この前顔を殴ったから余計だよねぇ〜」
桐崎夢に続いて取り巻き女子の深田愛美と奈良明美が話しかけてくる。
「おいっ!夢が話しかけてんだから無視してるんじゃねぇよ!」
「ていうか早く帰ってくれないかな?いるだけで不快なんだよ」
最初に話しかけてきた方が彼氏の大沢拓人か。確かに周りから評判がいいように顔はいいかもしれないけどこの学校のレベルだったらの話で琴美ちゃんとは釣り合わないな。次のやつは取り巻き男子の古賀祐也でインテリっぽいけど喋ってること頭悪すぎる事案。
5分くらい堂々と嫌味を言われ続けていたらチャイムがなったので先に戻って行った。もちろんその間私は無視してたけどね。
1週間くらい潜入するつもりだったけど3日くらいでいいかな?朝からこんなに収集できるなんて思わなかったし暴力の証拠の証言も取れた。殴られている時の動画を撮らないのが不安だが音声だけでも何とかなるだろう。
授業の合間は特に突っかかってこなかったのでそのまま昼休みとなった。ご飯は自分の席でそのまま食べればいっか。
「おい、教室でご飯食べてんじゃねぇよ!」
「相沢と同じ空間にいるだけで気分悪いんだよね」
「そうだ!いつも見たく便所で食ってろ!」
バカップルが私にイチャモンつけにきたけど、なんで大沢拓人は琴美ちゃんのことをこんな目の敵にしているんだろう……。
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