第19話 吸血姫さんは潜入する。

 琴美ちゃんには家で待っていてもらって――食べ物と飲み物は冷蔵庫に補充済み――まずは彼女の家にお邪魔することにした。


 家に勝手に入るとリビングには若い頃綺麗な顔だったと予想されるけどケバい化粧をしたおばさんがいた。


「あんた昨日どこ行ってたのよ!あんたがいなかったせいで私が殴られたんだけど!――このっ!」


 そういいながら私の太ももあたりを蹴ってくる。おそらく琴美ちゃんは抵抗していないだろうと予想して暴力を無表情のまま甘んじて受け入れる。


「相変わらず死んだ顔して不気味ね。そういえば、学校でもいじめられているらしいわね!いい気味だわ!」


 その後も数回蹴ってきた後鬱憤が晴れたのか自分の部屋に入っていった。今にでも殺してやりたいくらいストレスが溜まってきたけど琴美ちゃんのためを思って何とか凌ごう。実際身体のスペックで全く痛くないしね。


 それから琴美ちゃんの部屋に行って制服や洋服などと、勉強道具を異空間に仕舞い込む。明日の学校帰りに自宅に戻って琴美ちゃんの暇つぶしにでもなればいいかな?一応ゲームとかも好きにやるように言ってるんだけど。


 夜になると琴美ちゃんの母親の由美さんが家を出て行った。本当にホストなんか通ってるんだ。別に通うのにダメとか思わないけど結婚して子供もいるのに行くとか普通にありえない。


 琴美ちゃんはこの時間にご飯を食べていると言っていた。冷蔵庫を見ると冷凍食品とか惣菜とか簡単に作れるものがたくさんあった。これからは栄養バランスを考えて私がしっかり料理してあげよう。


 由美さんが帰ってくる前に父親の信彦さんが帰ってきた。それから2時間経っても静かでご飯とかお風呂に浸かっているのだろう。私は琴美ちゃんの部屋に行っていて会うことがなかったのでただの推測だけど。


 それからまたしばらく経ってどんどん足音を立てながら二階に上がってくる。


「おいっ!琴美!昨日はどこほっつき歩いてたんだ!」


 うわ、なんかめんどくさいのが来た。心配したとかじゃなくて怒鳴り散らかしてくるとかありえないわ。


 無視していたら力強くドアを開けて部屋に入ってくる。


「いつも俺のこと無視してんじゃねえ!いい加減殺すぞ!おらっ!」


 由美さんの時みたく暴力を受けている。はぁ、家でこんな日々を送っていたなんてしかも何で誰も助けてあげなかったんだろう。


 気が済んだのか足音をうるさく立てて主寝室に戻っていく。


 学校ではどんな仕打ちを受けていたんだろう。明日のことを考えるとさらに憂鬱になってくる。


 深夜になって由美さんが帰ってきてから特に何もなかったのでとりあえず寝ることにした。

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