第15話 吸血姫さんは少女を拾う。

「ねえねえ、こんな時間に1人で何しているの?」


 声をかけても俯いたままで返事がない。

 相手からしたらお節介でうざいかもしれないけど夜遅くの駅のベンチに座っている美少女をスルーするほど良心は腐っていない。


「おーい、大丈夫?」


 肩を叩きながら再び声をかけるとある期待を抱く一方ですべてを諦めているような瞳でこちらをじっと見つめてくる。


 私は子供がこのような状態になっていることや周りの環境に怒りを覚えた。


「可愛い顔しているね。困っているなら助けるよ?」


 私は少女の隣に座った途端少女は目尻に涙を浮かべながら顔を歪めて抱きついてきた。少女は決して泣き声を出さなかったが、身体はびくびくと震えていたので優しく背中をさすってあげる。


 しばらくすると落ち着いたみたいで顔を改めて合わせる。相変わらずの無表情っぷりに微笑してしまったが可愛いので全然いける。私は少女が悲しんでいるのになんてことを考えているんだ……


「服、涙でごめんなさい」


「大丈夫だよ。それより何があったか教えてくれる?」


「ん、わたしね――」


 言葉足らずな話し方で曖昧な部分もあったが簡単にまとめると、母親はホストにハマって父親はアルコール依存症というなんとも典型的なダメな両親らしい。


 母親からは罵倒や暴言をいっぱい吐かれて、父親からはアルコールが家になくても酔っ払っていても暴力を振るってくるそうだ。


 私は話を聞いて怒り狂って今にでも両親を殺しにいきたくなったがなんとか気持ちを抑える。


 ちなみに親同士は基本的に不干渉で、お互いに一人娘をストレスの捌け口にしていると言っていた。


 なんとか助けてあげたい――


 偽善に見えるかもしれないがこれは下心ありありだ。このままこの子を私のものにしたい。


「そっか、とりあえず今日はうちに来て休もっか」


 私はしっかりと少女の手を握って家まで連れて帰る。タワーマンションの最上階だったら少しは驚くかなとか思っていたけど相変わらずの無表情でいつかその仮面を剥がすのが当分の目標だ。


 家に戻って風呂に入ってもらってる間に軽食を作ろうと思ったんだけど、食事を必要としないため冷蔵庫が空っぽだ。


 しょうがない……ここは異世界料理を振る舞おう。


 空間魔法で中に入れている食材を使って簡単に料理をする。異世界ではいろいろなことに挑戦していたが料理もその一つで料理の大会みたいなので準優勝もしたことがある。ちなみに一位は王宮の料理人だった。あの人の料理を試食したけど100年経っても忘れられないくらい美味しかった。


「軽く作ったから食べてね」


「……いただきます」


 むぅ……美味しそうな表情してくれても良いのに。絶対に笑わせて見せようと心に誓う。


 うとうとしていたので私のベッドに連れて寝かせてあげる。意外と遠慮とかしないのが日本人らしくないというか、まあそれだけ追い込まれていたんだろうな。


 安心しきっている顔で寝ている少女をみて身体に回復魔法をかけてあげる。女の子に傷をつけさせるなんてありえない。意外と身体の栄養とか病気は大丈夫そうなのでご飯はしっかり食べてると推測して少し安心した。

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