第4話 吸血姫さんはお金が欲しい。

「どうやってお金を稼ごうかなあと思ったけど、日本にいる以上は日本の法律にちゃんと従っておきたい気はするよね」


 私の吸血姫としての力とか魔法を使えばいくらでも犯罪し放題だ。だけど元日本人としてはあんまり罪を犯したくないと言うかそんな感じ。


 異世界で義賊みたいなのしてたのは違うのかって?それとはまた別の話だよ。あれはコスプレしたら盛り上がってその場のノリとか、一応魔物だから性格がイタズラとかしたくなっちゃうんだよね。


「前世の親戚に頼るしかないか……」


 自分の持っていた財産が親戚のものになってるはずだ。それに両親が亡くなっていたとはいえ保険とかで1000万くらいはあったはずだから少しくらい貰って行ってもいいよね。


「確か5駅分くらい離れたところだよね」


 吸血姫は普段は見えていないが魔力で羽を作り出せる。謎の飛行生物が飛んでる!?とかなっても嫌だから夜になったら影魔法を上手く使って移動しよう。


 怪盗ミラちゃんを演じてた時にこういうのは慣れているから特に問題ない。


☆☆☆☆☆


 私は夜になって親戚の家の前に着いた。父親の兄で普通のアパートに住んでいると言ってたが一人暮らし中年の割にボロいな。


 父は私とは違って社会人としてエリートだったから同じ兄弟ならと思っていたがどうや違うらしい。親戚ってだけで顔見知り程度だったけどそれだけで保証人になってもらったのは間違いだったかも。


 鍵が空いてる窓から部屋に入ったけど、ビール瓶とコンビニ弁当が床に散らばってるし臭いんだけど。吸血姫は鼻がいいから特に匂う。


 そんなこんなで隣の部屋見てみたら布団も敷かないで寝てるし。


「あっ、これ財布か」


 財布を見てみると万札が3枚入っている。近くに通帳があったので見てみると、一番下は7万とちょっと。しかもよく見たら5年前にめっちゃお金入ってそれから減る一方なんだけど。


「もしかして働いてないのかな?」


 生活感から見ても働かないでギャンブルとアルコールとタバコ三昧みたいな生活しているようにしか見えない。


「ほんとはもうちょっともらいたかったけどなんか哀れみを感じる……」


 死んだ私のお金をどう使おうが構わないが――おそらく遊び呆けていたんだろう。一方的だけど恵んでもらう立場で高望みはできない。


「明日資金を増やして返しに来よう」


☆☆☆☆☆


 一晩明けた朝、競馬場に来ている。昨夜は親戚の家のパソコンでギャンブルの情報を調べていた。


 パスワードは掛かっていたので、魔法で少し記憶を覗いてみたが予想したような生活を送っていた。


 昨日は黒のワンピースドレスで目立つので今日はカジュアルコーデで銀髪が少しでも紛れるようにキャップをつけている。


 スクラッチでもよかったんだけど当たりすぎてるの買っても詐欺は疑われなあと思うけど目立ちそうなのでやめておいた。


 それに競馬の方が稼げると思うしこの自信はどこから来るのかというと、お馬さんにバフをかけるつもりだ。


 3連単で倍率の高い券を一応保険で5千円で買う。


「うふふ、迷惑かけてごめんなさいね」


 レースが始まったので遠目で見たガラ3段階に分けて身体強化をかける。


『おおっと!?ラストでエルラリアンとジャスドルフが駆け抜けていく!!すごいスピードです!』


 実況がすごいテンションで盛り上がってる。人気が下位の二頭が急に早くなったら驚くよね。


 そろそろゴールしそうだ……


『なんとエルラリアンとジャスドルフのワンツーフィニッシュです!!一番人気のルーテルゼは3着だ!!なんという大番狂わせでしょう!』


 計算どうりね。まあ馬が暴れ出したりしなくてよかったけど上手く躾けられてるものね。


 約1万倍で5千万くらい稼いじゃった。ちょっとやりすぎちゃったかな……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る