第8話 内緒
「ねぇ
「ん?どうした?」
「傑って私のことどう思ってるの?」
「は?」
「い、いきなりどうしたんだ?」
碧も自分の言ったことに驚いたのか顔を赤らめて顔を手で隠すようにして俯く。
「な、なんでもない!」
そう言って俺の返事も聞かず、何も持たず、部屋から出て行った。彼女を追いかけて俺も外に出る。
ずっと追いかけていたが、ここ最近運動をしていないせいか全く追いつかない。しかも、どんどん離れている。
(くそっ!最近運動してないせいで体力が無さすぎる)
そしてついには、見失ってしまった。俺は一年間住んでいるからこの辺りの道はよく知っている。
しかし、彼女が知っている保証はない。彼女は、極度の方向音痴だ。そんな彼女がマンションまで戻って来れるだろうか。
そんな不安が積もる中、俺は探し続ける。心当たりのあるところは全て探した。
「くそっ!どこにいるんだよ!」
しかし、あと一つだけ探していないところがある。それは俺が碧に教えた所だ。
俺は極度の方向音痴だった碧に教えた場所がある。それは、山の上にあるこの辺りでも有名で大きい名前は
白波神社に行くためには400段ほど登らないといけない。しかし、そこからは景色が一望でき自分たちのマンションがどこにあるか、わかるのだ。
「やっぱりあそこだろうな。」
そして、神社のある山の
「懐かしいなぁ。入学式以来か。」
そう、俺は入学初日に自身のマンションの場所を忘れてしまい。この神社から探したのだ。この神社がなければ途方に暮れていただろう。
そして階段を登っていく。
「さすがにキツい。やっぱり運動してないとキツいぞこれは。」
碧にここを教えたのは間違いだっただろうか。こんなにキツい場所を教えるなんて。。
でも碧だから大丈夫か。でも一応女の子だしなぁ。
そう考えながら登っていると半分ぐらいまで到達した。しかし、今時刻は十八時だ。ここまで登るのに三十分かかっている。あと半分と心に訴えながら登る。
俺が神社に到達する頃には既に太陽は落ち、夜になっていた。そして辺りは真っ暗で雲の隙間から出る月明かりが神秘的な何かを感じさせる。
「はぁ...はぁ...はぁ...やっとついた。」
体力は底をつきかけているが神社に到着した。今は雲のせいで辺りが見えない。俺も何も持たず出てきてしまったのでスマホのライトも使えない。
そして、暗闇の中探していると月明かりが雲の間から差した。神様が彼女を探せと言わんばかりのタイミングだった。
彼女は本殿の階段に俯いて座っていた。
「はぁ...はぁ...探したぞ。」
その声を聞いて彼女は顔を上げた。
「来るのが遅いのよ!」
「おいおい、第一声がそれかよ。」
「でも、ありがとう。」
「お、おう。」
彼女は雲の隙間から差し込んだ月明かりでも十分に分かるほどに泣いたあとがあった。
そして、彼女を連れて話しながら階段を降りる。降りるのは三十分ほどしかかからなかった。
碧は登る時に靴ズレを起こしていたらしく足を引きずっている。
「乗れよ。」
俺がそう言ってしゃがんだことで察した彼女は再び顔を赤らめる。
そして、恥ずかしながらも背中に乗ってきた。すると、ずしりとくる重みが以前と違うことに気づいた。
そう、昔にも足を怪我して俺が碧をおぶるような事があった。
「なんか、前より重くなったな。」
「もう!傑ってほんとデリカシーないよね!」
いやいや、デリカシーって言ってもなぁ。昔と同じように接してるだけなんだが・・・
「そういえば、なんで部屋を出て行ったんだ?」
「そ、それは。。」
「それは?」
「な、内緒!」
「えー!教えてくれよー!」
そんなやりとりをしながら自分たちのマンションに戻ったのだった。
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