第7話 想い人

「なぁ、ところですぐる。」


「ん?どうした?」


「どうして篠崎しのざきさんと会った時、幼馴染なのに会ったこと無いみたいな顔してたんだ?」


「それ僕も気になった!」


 修一しゅういちわたるが聞いてくる。聞いてくるのも当然だ。確かにあの時は他人の空似ぐらいにしか思ってなかったからな。名前が変わってるなんて事も忘れてたし・・・


「ああ、実は髪型と苗字が名前が変わっててわからなかったんだ。昔はショートカットで田原って名前だったんだよ」


「変わる時にの名前は聞かなかったの?」


「聞かなかったというか聞くのを忘れていたって感じだな。」


「苗字と髪型、それと色々成長して雰囲気とかも変わってたら、そりゃわからねぇだろうな。」


 俺たちがそんな話をしている頃、碧は2日目でありながら既にクラスに馴染んでいる。そして、今はクラスの中心人物である天谷麗奈あまたにれなと話している。


「ねぇねぇ、篠崎さん!今日神崎かんざきくんと一緒に来てたよね?」


「うん。」


「二人はどういう関係なの?」


 彼女は興味津々な様子で聞いてくる。ここは幼馴染でマンションの隣の部屋がたまたま傑の部屋だったという事は言うべきだろう。


 しかし、昨日一緒に寝たからという話は避けた方がいい。この様子だと傑は陰キャという分類に入るのだろう。だとすれば傑に対するイジメが起こるかもしれない。そんな事は絶対にさせない。


「傑とは小学生の時の幼馴染で引っ越してきたマンションの隣が傑の部屋だったから今日は一緒に来たの。」


 これが無難な答えだろう。陰キャ認定されている人はすぐにイジメの対象にされる。だから傑には陰キャから脱出してもらわないと・・・


「そうなんだ。幼馴染かぁ。いいなぁ。」


「え!?」


 すると一時間目の始まりのチャイムがなったと同時に先生が入ってきた。


「早く座って授業の用意しろよー!」


 私は、自分の机に授業の用意をしているが彼女は用意をしていなかったので・・・


「じゃあね。篠崎さん。」


そう言うと急いで去っていった。私も小走りで自分の席に戻る。


(なんで傑と幼馴染が「いいなぁ。」なのよ。天谷さんも傑のことが好きってこと?)


 そして、授業が始まる。それからの私は天谷さんのあの一言を考えていて、話が入ってこなかった。


「・・・じゃあ、篠崎。さっきのところから読んでくれ。」


 先生が私を指名してくる。私は話を聞いていなかったのでどこかわからない。すると・・・


「碧、163ページの13行目からだぞ。」


「あ、ありがとう」




 そして終了のチャイムが鳴る。

 俺は碧と並んで帰っている。


「なぁ、碧。なんか今日変じゃなかったか?先生の話を聞かないとか、碧らしくないな。」


「ちょっとね。考えて事をしてたの。」


 碧はずっと俯きながら帰っている。ここは話を聞いてあげるべきだろう。


「どうしたんだ?何があった?」


「ううん。何でもない。大丈夫。」


 そう言っているがの碧の様子は少し変だ。しかし、大丈夫と言っているから詮索はしないでおこう。


 そしてマンションに帰り部屋に着く。するとちょうどそこに引っ越しの荷物がやってくる。


「なぁ碧。なんか手伝える事ないか?」


「う、うん。ベッドが大変だから手伝って欲しい。」


「了解。他にも何かあったら言えよ。」


 そして俺はベッドを作っていく。



一時間後


「やっと出来たー!終わったぞ、碧。」


「うん。ありがとう。」


 碧はまだ元気がないようだ。


「どうかしたのか?朝からずっとそんな調子だろ。」


「ねぇ傑。聞きたい事があるんだけど。」


「ん?どうした?」


「傑って私のことどう思ってるの?」


「は?」


 碧の突然の言葉に俺は驚きを隠せなかった。

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