第4話 隣の幼馴染

「なーんだ。やっぱり忘れてないじゃない!」


 そう言いながら俺の肩を叩く。


「そうか、また会えたんだな。」


 そう言うと自然に目から涙があふれてきた。あぁ、これが嬉し涙なんだな。そしてこの時やっぱり俺はあおいのことが好きなんだな、と改めて実感した。




「何泣いてるの?私に会えたのがそんなに嬉しいんですか?すぐるくん。」


「う、うん。嬉しくてつい。」


 そういうと彼女は頬を赤らめる。


「う、嬉しかったんだ。私もまた傑と同じ学校に通えるから嬉しいよ。」


 俺はその碧の言葉を聞き、とても嬉しかった。碧は俺のことなんて忘れていると思っていたからだ。しかし碧は俺のことを覚えてくれていた。それがとても嬉しかった。


「まぁ、立ち話もなんだし部屋上がれよ。」


 そして碧を部屋に招き入れた。


「綺麗に整頓できてるんだ。えらいえらい。」


 そういいながら碧は俺の頭を撫でてくる。


「碧は俺の姉か!」


 俺がそう言うと碧が笑う。そしてそれにつられて俺も笑う。


 幸い俺は実家暮らしじゃないから物が少なく整頓もできている。

碧がいた頃は、たまに家に来て片付けをしてくれていた。今は引っ越し前の断捨離だんしゃりで物が少なくなったから整頓できているが、碧がいなくなってをする前までは足の踏み場もないぐらいに散乱していたというのはまた別の話・・・


「お茶でいいか?」


「ううん、気にしないでいいよ。」


 そして碧のもとにお茶を持っていく。そして持ってく途中に考える。久しぶりに会ったんだし、おそらく座ったら何を話そうか、という沈黙の状態が続くだろう。こういう時は先に男が話題を切り出すべきだ。

 

(そうだ!あの話題から切り出せばいいじゃないか!)


 そして俺から話を切り出す。


「そういえば、碧は苗字みょうじ田原たはらから篠崎しのざきに変わったんだな。それに髪型もショートヘアからロングヘアになってるし。転校初日正直どこかであったかなぐらいとしか思わなかったぞ。」


「名前はお父さんとお母さんが離婚したのは知ってるでしょ?それでお母さんの旧姓になったの。」


「そうだったのか。」


 髪型も変わってるし、苗字も変わってたのか。そりゃわからないわけだな。


「髪の毛については色々あって、ショートからロングにしてみたの!どう?似合う?」


「あ、ああ似合ってるよ。それにしても前は活発って言葉が似あうほど男みたいで可愛いっていわれてなかったのに、今じゃ清楚系美少女って転校初日で学校中に広まってるぞ。」


「あはは。そうだね。ねぇ、傑は私のこと可愛いって思う?思わない?」


 碧が机から身を乗り出しながら聞いてくる。そういえば、碧は昔からこんなにグイグイ来て男友達みたいな奴だったな。今は、より激しくなってる気がするけど。


(顔が近い、でもいい匂いがする・・・って何考えてんだ俺!しっかりしろぉ!)


 そう考えていたら・・・

 顔が熱い、間違いなく今の俺は顔が赤くなっているだろう。だから顔を背けながら答える。


「か、可愛くなったとは思うよ。」


そう言うと碧は三角座りをしていた足に顔を隠すようにして俯いたが、頬が赤くなったのが俺には見えた。


 そして沈黙の状態が続く。そして碧が話を振ってきた。


「傑。高校は楽しい?ちゃんと行ってる?」


「まぁ、それなりに楽しいかな。気軽に話せる友達もいるし。」


「私、学校で友達まだいないから仲良くしてね。」


 碧のことだからあの清楚なキャラなら恐らくすぐに人気者になるだろう。しかしそんな碧に俺がいるとなんであんな陰キャと?なんてことになるかもしれない。だから碧とは学校であまり関わらないほうがいい気がするが・・・


「俺と居たら碧のイメージダウンになるかもだぞ。」


「そんなの関係ないよ。そんな人たちとは私友達にならないんだから!」


 その言葉を聞いた俺は嬉しくなって、碧が気づくか気づかないかぐらい少し微笑んだ。しかし碧はそれを見逃さなかった。


「私と一緒にいられるのがそんなに嬉しいんだぁ。」


 碧はそう言いながら俺の脇腹を突っついてくる。こういうところは昔と変わってないんだな。


 

――――そうこうしているうちに時は過ぎる。


「じゃあ、また明日な。」


「うん!明日から一緒に登校しようね。」


 そんなやり取りをした後、俺は緊張して汗をかいたため再びシャワーを浴びた。

そしてご飯を食べイベントをこなし、寝るためにベッドに入ろうとした瞬間にピンポーンというインターホンが鳴った。


 そしてドアを開けるとそこに立っていたのはパジャマに身を包んだ碧だった。


「今日まだベッドも布団も届いてなくて、部屋で寝れないから今日は一緒に寝てくれないかな?」


「は?」


 碧の言葉に驚き俺は一瞬言葉を失った。





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