かつて◯◯というものがあった【文書ロイドシリーズ短編】
春眼 兎吉(はるまなこ ピョンきち)
かつて◯◯というものがあった
「あの場所を訪れたおかげで世界とより『繋がれた』気がする」
書斎でひとり物思いに
とりわけ最近特に何度も何度も思い返すのは、
そこでの『出会い』が、私の人生を劇的に変えたのだから。
「
「えー、これが一時期、世界中の人間を孤独から救ったと伝えられるスマートフォンという
ここは人と人が『
なかでもここは、文章や言葉に想いを託して『伝える』行為にスポットを当てた展示に
「SNS(えすえぬえす)という自分の意見や思想を広く発信することで、同じ思いを共有する同志との人間的『
説明役のおねいさんが『スマホ』を手に、つらつらと慣れた様子で解説をしていく。
「なんでそんなに『繋がる』ことに
僕は
「フフフ……そう思いますよね。ではこちらを見て下さい」
イタズラっぽく
「なんだこりゃ?」
提示された
「これはポケットベル、いわゆる『ポケベル』ですね。これは『スマホ』が世に出る四半世紀程度前に世に出た
「俳句ってなーに?」
疑問が次々出てきてもうカッコなんて気にしてられなかった。
「
「物語ってなーに?」
「そうですねぇ。【文字】を
ノリの良いおねいさんとは対照的に僕は本当に理解出来なかった。だから
「他の人とはもう『繋がって』いるし、わざわざ苦労して知る必要もないんじゃないの?」
「はっきり伝わりすぎないから、相手の気持ちを、作者の気持ちを『
ノリノリのおねいさんの
「上手く出来ない。だって僕は知らないもん」
そこで僕はこれまで感じていた『
「【
だって、そうだろう。思うだけで自分の意志が【
「そっか……そうだよね。……じゃあ、おねいさんと
おねいさんはふんぞり返って自信満々のドヤ顔で告げる。
「言い忘れてたけど、おねいさんは『
まぁ、かわいかったし、一緒に物語作ってみてもいいかなとは思えた。
そして作り始めてしばらく、僕は頭を抱えていた。まどろっこしいし、答えが
「思った通りに出来ないから戸惑っているのでしょう?」
「うん、なんつーか、こう、モヤモヤする」
「なんで、こんなはっきり伝わらないことをするの? 無駄だよ」
そう。普段の僕たちなら、伝えたいことを思い浮かべて相手に飛ばせばそれでもう全て
「さっきも少し言ったけど、はっきり伝わらないから、いいの。創造の余地が生まれるの。それを行うには
「【
「詳しく言うとね、【文字】が少し集まると『言葉』になるの。そして『物語』はかっこいい、かわいい、こわい、『言葉』を組み合わせて作る『パズル』のようなものかな。コツコツ組み立てるのはしんどいけど、組み上がったら満足出来るから。ヤッター!って思えるから」
「それと『ショートショート』は自分が面白いなと思う光景を思い浮かべて、その光景までを『言葉』で繋いでいく感じよ。一緒に頑張りましょう。一緒に私と言葉の海を泳ぎきるのよ」
おねいさんの励ましで、少し時間はかかったものの、僕はなんとか『ショートショート』を完成させた。
そして一緒に来てた両親に見て
「「いいね」」と。
「どうだった?」
おねいさんに『物語』を作った感想を聞かれて僕は。
「なんか、こう、気持ちよかった」
「めずらしいね。みんな楽しかったとかつまらなかったという感想はもらったけど、そういってもらえたのは初めての経験ね♪」
そういっておねいさんはふわりと笑った。
少年と両親が
「案内嬢ご苦労さん。といっても、これで最後だけどね」
「そうですね、
「『エスパー』の上位互換のごとく、全ての人が『意識』を『共有』し、『物語』も【
「あなたは肉体を捨ててこの『空間』の館長になった」
「なんかさぁ、忘れ去られていくモノの悲哀がどうも、苦手でさ、ついつい面倒見てしまうんだよね。『どんな便利なモノもいずれ廃(すた)れ、消えてゆく』ってのは、キミ達も含めてあんまりにも哀しいと思うんだ」
「それで私のことも拾ってくれたんですよね」
「今では大切な『
「良かったです。」
「そうやってキミはどれだけ
男はいたずら気に笑うと文書ロイドの少女は堂々と言い放つ。
「物語を書く楽しさは消えたりはしませんよ! 決して廃(すた)れはしない!」
「私も、そう思うよ」
男は文書ロイドの少女の放った
「そろそろいこうか。全ての言葉が命と共に
「はい、マスター、お疲れ様でした」
「それは『お互い』にね」
男は文書ロイドの少女を
老人作家はかつての思い出から、現世に帰還した。
「せんせーいっ! 次の『物語』を書いて下さい。やっぱり先生の物語は最高っす。皆が
老人作家の睡眠を
「エモいとかじゃないんだよ。これは人が
それは、師匠であり友人であり初恋の人であった
物語を書く楽しさは終わらない。
読んでくださりありがとうございます
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【完結】文書(ぶんしょ)ロイド文子シリーズ原典『サッカ』 ~飽和(ほうわ)の時代を生きる皆さんへ~ 俺は何が何でも作家になりたい!そう、たとえ人間を《ヤメテ》でもまぁ!!
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かつて◯◯というものがあった【文書ロイドシリーズ短編】 春眼 兎吉(はるまなこ ピョンきち) @harumanako-pyonkichi
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