第159話 行きて帰りし物語
いま書いている旅行小説はエッセイみたいだなー、と思っていましたが、どうやらちがうみたいです。
1年前に買った公募ガイド2022年1月号の特集『構造を知らなければ長編小説は書けない!』を読み返していたら、物語の型はふたつあり、ひとつは「行きて帰りし物語」だと書いてありました。
引用します。
日常にいる主人公が非日常の世界に行き、元の場所に戻ってくるが、そのとき、マイナスがプラスに転じている。
たぶん『東京都放浪記』はそのような物語になります。エッセイではなかった。典型的な物語なのかもしれない。書いていてそんなふうには感じられないのですが……。
もうひとつの型は「欠如を回復する物語」だそうです。
『人間の恋人なんていらない。』はこちらに分類されるのでしょう。
恋愛の欠如を回復します。
この特集には「面白くさせるには鉄則がある」とも書かれていますが、鉄則なんてくそくらえ!といまは思っています。
計算して小説を書きたくないのです。
疲れるから。
小説を書いていて、内容が面白くなくなると、やる気がなくなってきます。
そのときは、工夫をこらしてなんらかの対立や葛藤をつくります。
謎か幻想か新しい登場人物の場合もあります。
とにかくなにか変化させて、やる気が出てきたらオッケー。
私の知人は「先が読めなくてどうなるんだろうと読者に思わせるように書いて」とアドバイスしてくれます。
私は後半にだれて単調になることが多いので、アドバイスに従って、変化させるよう努めます。
書いていて苦しいところですが、うまくこれを超えられると(少なくとも書いている私が超えたと思えると)、長編を書き終えたときに満足することができます。
などと偉そうなことを書きながら、本棚を見ました。そこに村上春樹先生の『騎士団長殺し』があったので、上巻を手に取りました。
私はこの長編の冒頭部分、主人公がプジョーに乗ってあてどない旅をしている章が好きなのです。
いつかこんな旅をしてみたい。
というのは余談で、『騎士団長殺し』を少しばかり読み返すと、文章に圧倒され、これこそが長編小説か!と思ってしまいました。
私はもしかしたら真の長編小説を書いたことがないのかもしれない。
そんなものは一生書けないかもしれない……。
春樹先生を基準にするのはやめましょう。
改行の少ない濃密な物語は誰かにお任せすることにして、軽い旅行小説のつづきを書きます。
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