第149話 大島弓子『綿の国星』『すべて緑になる日まで』

 長編小説を2作連続で完結させ、3作目に入って2話書いたところで、唐突に糸が切れました。

 早朝起きて、一心不乱に書きつづけてきたのですが、起きられなくなりました。

 熱が冷め、冷静になってしまいました。

 私はいったいなにをやっているんだ?

 確実に命を削って、面白いかどうか、読んでもらえるかどうかわからないものを書いている。

 脳も迷走して、3作目第2話では神がどうとか世界最終戦争がどうとか言い出している。

 これは危険な兆候なのでは、とふと思い、冷めて、糸が切れたのです。


 しばらくインプットと気晴らしを多めにして、アウトプットは減らそうと思います。

 休日には釣りをします。

 図書館で『三体0』を借りて読みます。

『三体』を読むと刺激を受けて、またガーッと書いてしまうかもしれませんが……。


 糸が切れたら、思い出した漫画がありました。

 不朽の名作、大島弓子先生の『綿の国星』です。

 猫耳少女を発明したのは大島先生で、初出は綿国だと思うのですが、どうなのでしょうか。


 綿国で出てくる台詞を思い出したのです。

 主人公の時夫が、高校時代を暗黒にしてひたすら大学をめざしたのに、ソ連カゼで受験日をパアにして、情緒不安定になります。そしてひとりごとを言う。それを聞いて母と父が心配するのです。

 その台詞が、

「たこ糸きれたたこ」

「今なら『少年A』ですむ。今なら『少年A』ですむ」

 です。


 大島弓子先生はまごうことなき天才で、神のごとき漫画家です。

 私は『すべて緑になる日まで』のオマージュとして『乙女座から愛してる。』と『乙女座から愛してる。S』を書きました。

 冒頭、ヒロインはプロポーズを受けて悩み、公衆電話で親友に相談します。

 そのシーンを美しいと思い、私はオマージュを述しました。

 冒頭のイメージをお借りしていますが、その後の内容は似ても似つかないものになっています。

 もちろん大島先生の作品は名作で、私のは良く言って奇作です。


 緑日は叙情的で感傷的で感情的な名作で、綿国は透明で幻想的で偉大な発明をした名作です。

 24年組は少女漫画の黄金時代を築きましたが、私は大島弓子先生が一番好きです。

 萩尾望都先生の『ポーの一族』、山田ミネコ先生の『最終戦争シリーズ』、山岸涼子先生の『アラベスク』、竹宮惠子先生の『地球へ』も好きですが、大島先生の作品群は読み返した回数において、頭ひとつ抜けています。

 

 大島先生は作中で詩を書いています。

 綿国から引用して、この回を終えることにします。


 ひとつの事を

 考えようとしても

 もう次の考えに

 うつってしまいます


 外のけしきが一日一日と

 うつりかわってゆくからです


 おばけのような桜が

 おわったとおもうと

 遅咲きの八重桜


 すみれや

 れんぎょう

 花厨王


 黄色い山ぶき

 雪柳

 なんとすごい

 なんとすごい

 季節でしょう 

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