第142話 山と高原地図
知的興奮に満ちたエッセイを書きたいですが、残念ながら私にはそんな能力はありません。
博識で、分析力が高く、深い考察を理知的な文章で綴る。
司馬遼太郎先生が描くが如き随筆。
むずかしいなあ。
私が書けるのは、私の能力の範囲内のもの。
よい小説やエッセイを書くためには、日々努力し、少しずつ能力を高めていくしかありません。
よき体験をし、よき読書をし、書きつづける。
それ以外に努力の仕方を知りません。
というわけで、今日も雑文を書きます。
胸を張って、これは雑文を超えるエッセイだと言えるものが連続的に書けるようになった日、『生きているから遊びたい。』という雑文集はたぶん終わります。
今日は登山について書きます。
私は昭文社の『山と高原地図』を愛用しています。
昨今は電子版も出ていて、進歩的な登山者はそちらを使用しているようですが、私は相も変わらず紙の地図を使っています。どうしようもないデジタル音痴なので。
山と高原地図を見ながら、次はどの山へ行くかを考えます。
私と私の登山友だちは東京都のどこかの駅の改札で待ち合わせをし、山に向かうことが多いです。
高尾山系に登る場合、京王高尾線高尾山口駅で落ち合います。
かなり体力があった10年前には、高尾山~城山~景信山~堂所山~陣馬山と縦走したものですが、いまは無理です。3年前に膝を壊し、登山回数が減って、がくんと体力が落ちました。
高尾山から景信山まで歩き、小仏へ下山するのがやっとです。
奥多摩山系には幾度となく行きました。
友だちと青梅線奥多摩駅で待ち合わせをし、鋸尾根を伝って、奥多摩三山のひとつ大岳山に登ったことがあります。この鋸尾根はその名のとおり鋸のように険しく、かなり疲れ、消耗して、やっと登頂しました。
再び鋸尾根を登りたいと思っているのですが、現状ではきびしいです。
登山者は自分の力に合わせて、目的の山とコースを選ばなければなりません。無理をすれば遭難してしまいますから。
文学者が知力と文章力を磨いて、傑作をめざすように、登山者も技術と体力を高めなければ、高度な登山はできないのです。
私にはもう鋸尾根は無理かもしれませんが、あきらめず、鍛錬をつづけたいと思います。
大岳山よりずっと遠い奥多摩山系の最高峰、雲取山へは二度と行けないだろうなあ。
川苔山にも何回か登りました。登り甲斐のある展望のよい山なのですが、途中にスリリングな急坂があり、落下事故で死者が出ています。この山も膝に不安がある現在、目的地にはできません。
いまの私に登れるのは、高水三山か日の出山といった初級者向けの山です。
それも途中で膝を故障しないように、気をつけて登らなければなりません。
低山でも、遭難はあり得ます。捜索や救出などで人に迷惑をかけないようにしたいです。
山頂から見る風景がとても美しく、埼玉県側に下山する途中に迫力ある岩石と清らかな渓流がある棒ノ折山にも、もう一度登りたい……。
体力をきたえ、美しい山に登りたいです。
そしてできれば、常に好奇心を持ち、知力を高め、発想力を豊かにして、面白い小説を書けるようにもなりたいです。
長編小説を書くためには、知的持久力とでも言うべき書きつづける能力も必要です。
日々努力。
言うは易く、行うは難し。
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