第137話 私的同人論

 同人活動で稼ごうなんて、軽々しく思ってはいけません。

 私はそれで痛い目に合いました。


 私の知り合いの知り合いが漫画の二次創作同人誌で儲けまくっていました。

 コミケで500円の本を300冊完売し、150万円の売り上げ。印刷費やアシスタント代を主とした諸経費を20万円として、130万円もの利益が出ます。

 薄い本ですから、制作期間は1か月程度。

 なんと月収130万円!

 ボロ儲けです。


 コミケは年2回しかありませんが、その他の同人イベントに参加したり、同人誌書店で委託販売をしたりすれば、充分に生活費を稼げます。

 売り上げがもっと伸びれば、贅沢だってできる。

 オリジナル作品ではなく、二次創作で稼いで生きていけるなんて、楽すぎるだろう、と私は思いました。


 私はその道で食べていこうと欲を出しました。

 結論から言うと、失敗しました。

 同人イベントで私が描いた二次創作漫画同人誌を販売したのですが、10冊くらいしか売れなかったのです。

 印刷費も出ない。

 完全に赤字です。

 儲けるどころか、損をしました。


 知り合いの知り合いは、卓越した画力を持っていたから、稼ぐことができたのです。プロの漫画家にはなりませんでしたが、短編でデビューしたことがあるほどの腕前を持っていたのです。

 私のような絵の下手な者がつくった同人誌にお金を払ってくれる方など、ほんのわずかしかいなかったのです。

 しかも、ひとりでカラー表紙の漫画同人誌を制作するのは、けっこうな重労働でした。


 いろいろと面白かったけどさあ!

 同人活動で友だちもできたし!

 カラーイラストの描き方も覚えたし!


 軽々しく同人活動で儲けようなんて思ってはいけません。

 簡単なことではないのです。

 私は3年間くらい努力しましたが、赤字から脱出することはできませんでした。


 コミケに出場することすらできませんでした。

 コミケは応募しても、下手な同人作家は受からないのです。

 サークル参加申し込みが多数の場合、抽選とされていますが、ちがうような気がします。

 抽選ではなく、選考ではないかと思います。

 お客さんが喜ぶ人気サークルや実力のあるサークルが選ばれて、出場できるのです。

 私のような下手な同人作家は、コミケにはお呼びでない。

 仕方なく、その他の同人イベントに参加していました。


 楽しむことが目的ならいいです。

 多少お金がかかってもかまわないから、同人誌をつくって遊びたい。

 それはよいと思います。

 しかし、よほどの腕がない限り、稼ごうなんて欲は出さない方がいい。

 損するだけです。


 描いた絵を見てもらいたいだけなら、pixivで遊んでいるのがよいと思います。 

 お金かかりません。


 二次創作同人誌に一番大切なのは、オリジナル作品への愛です。

 愛があふれてどうしようもなく描きたくなってしまったら、金銭目的ではなく、愛の発露として薄い本を制作しましょう。 

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