第43話 「球詠」と女子高校野球

 「球詠」というアニメ化された人気漫画がある。現在9巻まで出版されており、僕は全巻購入している。その漫画では、高校女子野球部が全国に4千もあり、覇を競っていることになっているが、現実に全国高等学校女子硬式野球連盟に加入している高校はわずか39校である。これでも近年かなり増えたのだ。

 僕は女子高校野球の小説を書こうとしたことがある。そのときは39校もなかった。ネットで調べて、ずいぶん増えたな、と驚いたぐらいだ。

 「球詠」はかなり現実とは異なる設定の漫画だが、とても面白い。キャラクターがみんな作り込まれていて、それぞれ個性的で感情移入しやすい。男性キャラクターは一人も出てこない。監督も女性だ。

 女性キャラクターしか登場しない漫画なので、百合要素がある。バッテリーの武田詠深と山崎珠姫、二遊間の藤田菫と川﨑稜、スラッガーとマネージャーの中村希と川口芳乃の仲は「球詠」の見どころだ。

 僕は今でも女子高校野球の小説を書きたいのだが、「球詠」と「八月のシンデレラナイン」以外に女子野球の物語が必要かと思ってしまう。

 以前キャッチボールをしたことがあるのだが、硬式野球のボールは硬い。硬式と謳っているのだから当たり前だが、体に当たったらかなり痛いだろう。

 僕はノーコンの速球投手を主人公にしたストーリーを練っていた。彼女はデッドボールが怖くて、思い切り投球することができない。

 「球詠」の主人公武田詠深は打者に当たりそうなほど急角度で曲がるカーブを決め球にしているのだが、デッドボールを怖れてなどいない。彼女の悩みは、そのカーブを捕球してくれるキャッチャーがいないことだった。山崎珠姫はそれを捕球できる好捕手である。二人の出会いから物語は始まる。こういう物語がつまらないわけはない。「球詠」10巻が待ち遠しい。

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