第41話 長編小説の完結 その2

 二つの長編小説を書き上げた。「人と豚のハルマゲドン」と「魔法使いじゃない。」である。と言っても書き直しただけで、どちらも完全新作ではない。

 「人と豚のハルマゲドン」は某新人文学賞に応募し、最終選考で落ちた。「魔法使いじゃない。」も同じく三次選考で落ちた。

 「人と豚のハルマゲドン」はかなり手を入れたので、疲れた。実はこの作品は着想から完成まで十年以上かかっており、完結して精魂尽き果てた。長編は当分書きたくない。

 僕は子どもの頃から地球環境問題に興味があり、種が滅んでいくのが嫌だった。このままではいけないと思って、人、豚、キャベツの三種しか残っていないディストピア小説を構想した。無論この三種では生態系は維持できないが、そこは無視した。

 この小説では、表現に制限を課した。「一石二鳥」とか「虫がいい」とか「脱兎の如く」とかいった動物慣用句を使わないということである。すでに滅びた生物の慣用句は死語になっているにちがいないからだ。

 初稿ではずいぶんと使ってしまっていた。推敲で削ぎ落とした。それでも最終稿まで残っているものがあった。今回の書き直しでも削ったが、まだ見落としているかもしれない。

 「魔法使いじゃない。」はそれほどの労作ではないが、愛着のある小説だ。僕は漫画家やイラストレーターになりたいと思っていた時期があり、その想いを小説に込めた。体験を使えたが、それでも完結させるのは容易ではなかった。

 長編小説を書くのは、僕にとって家を建てるような重労働なのである。

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