第38話 現代版ノアの方舟
「ノアの宇宙船と海の惑星」という短い小説を書いたのだが(4月22日SFショートショート集で公開)、現代版のノアの方舟が必要だと思っている。別に珍しい考えではなく、実際にビッグプロジェクトがいくつも動いている。
ノルウェー政府が設立した北極点近くにある国際的な種子保管室。これは約千四百の種子バンクで、植物の種子を絶滅から守るために約一千万ドルの巨費を投じて建設された。ノルウェー政府は自然災害、経済崩壊、戦争、気候変動などの理由により、重要な植物が絶滅することを真剣に危惧している。
冷凍動物園はDNAや受精卵を極低温で貯蔵する施設で、世界にいくつかある。たとえば、サンディエゴ動物園は絶滅危惧種の遺伝物質を液体窒素で低温保管している。
米国立自然史博物館のジョン・クレス氏ら世界中の科学者24名の連名で発表された声明によると、地球上の百五十万種の全ゲノム情報を記録する「アースバイオゲノムプロジェクト」が進められようとしている。
現代は地球史上で六度めの大量絶滅期だそうだ。危機感を持つ組織や科学者や政治家などが、さまざまなプロジェクトを動かしている。
しかし、地球上で保管するのでは、完全に地球起源種を守ることはできない。地球の大気が極度に悪化するかもしれないし、巨大彗星が衝突するかもしれない。人類の破滅的戦争はかなり現実にありそうな危機だ。
地球起源種のバックアップを太陽系外惑星に作る必要がある。地球類似の生態系を丸ごと作ってしまうのがいい。これは人類の究極の目的ではないだろうか。
宇宙物理学、宇宙工学、生命工学、低温生物学、政治学、国際関係学、心理学などを駆使した長編小説が書ければいいのだが、考えただけで気が遠くなる。
危機が目に見える形で顕在化してからでは遅い。人類が余力を持っている今こそ強力に推進しなければならないプロジェクトだと確信している。
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