第24話 上田凜子さんの美しい曲「月を食べる」

 縁あって、ピアニストで作曲家の上田凜子さんに、僕の小説「月を食べる」を素材に作曲をしてもらうことになった。上田さんの大ファンが僕の親友であるという縁だ。

 上田凜子さんは16歳でインターナショナルエレクトーンコンクール世界大会4位受賞。東京音楽大学の作曲指揮科で作曲、編曲を学んだ。その後、ライブやピアノ指導など積極的に活動を続けてきた才能ある音楽家である。現在、コロナ禍の中で、できるだけの対策をして、ライブ活動を再開している。おそらく苦労されているのではないかと推察する。

 昨日、親友を通じて、上田さんが作曲、演奏したピアノ曲「月を食べる」が届いた。最初の数秒を聴いて「あ、美しい」と思った。名曲だ。僕は現在、音楽を発表する手段を持っていないので、これを読んでいる方に聴いていただくことができないのだが、この感動をどうしても記録しておきたくて、作文している。

 僕は音楽は好きなだけの素人だが、上田さんの演奏が思わず聴き入ってしまうもので、作曲の技術がプロとしてもかなり高いレベルにあることはすぐにうかがえた。

 ピアノ曲「月を食べる」は僕にドビュッシーを思い出させた。おかしな表現かもしれないが、新しいクラシックだと感じた。

 小説「月を食べる」はこの小説投稿サイトで読むことができる。読んでいただいていることを前提に文章を書き進める。

 曲の前半は地球団地世界を表現している。静かな曲調。美しく情緒的過ぎないフレーズが、多彩に変化しながら繰り返される。何度聴いても飽きない。

 中盤で曲は激しく盛り上がる。小説「月を食べる」で女の子と男の子が交流しているクライマックスシーンを表している。人間は世界の主役の座を電子人に明け渡し、月を分子変換して食べているはかない存在だが、感情を持って生き抜いている。その切なさ愛おしさをピアノが文章よりも雄弁に語っている。

 ラストで曲調がまた静かになる。小説の登場人物二人が半分になってしまった夜空の月を見上げるシーンを、ピアノが過度の感情移入なく表現する。最後の音の静寂さが印象的だ。

 上田凜子さんを僕は推す。「月を食べる」でなくていい。ぜひ彼女の曲を聴いてみてください。


追記:令和3年5月20日、「月を食べる」の動画がユーチューブで視聴できるようになりました。

もしよろしければ、上田凜子さんの曲を聴いてください。

https://www.youtube.com/watch?v=XlOpcA71ZJY

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