第二章・主観と客観(三)
皆様ご存知の通り、ここヴィテブスクは千年前に建てられました。小さい町から繁栄する都市になるまで五百年ぐらいの時間がかかりました。そして、住民の増加に伴い、吾らは五百年間絶え間なく城壁を建てて、都市を拡張して参りました。今、ここは既に白ルーシの北東部の最も大きい都市になりました。それでは、皆様にお酒を掲げてください。乾杯!」
みんなはラヨスに応じて祝杯を挙げて、自慢げな笑顔を作った。
「ヴィテブスクにとって、次の五百年で帝国西部の都市を超えるのが目標です。したがって、吾らは新しい建設の計画を実行するべきです。それは都市再開発です!」
都市再開発と言えば、私はあまり良い印象がない。理由は多くの貴族の地主は建築公会とひそかに結託し、建物を改築する時機に乗って、賃貸人にもっと賃金を求めたり、強制的に引越しさせたりするからじゃ。
「先ず、吾らは都市の南西部の住宅街を再開発するつもりです。あそこの土地の五分の一はコニチ家族に所有されています。彼たちはもう住民たちを説得して当計画を受け入れさせました。しかも、面積が狭くて利用しにくい土地も購入してくれました。そして、コニチ家族が当計画を担当することになります。彼たちは都市の南西部を職人や商人や学者を惹き付ける高級住宅街にしようとしています!」
またこういうやり方じゃのう…市民たちは都市再開発によって引っ越しさせられるならば、政府から補償として新しい家と金銭をもらえるが、補償が足りないことが多々ある。コニチ家族のような大地主は、少しの土地しか持っておらない住民を説得して、高い値段で自分たちに土地を売らせる。表面的には住民たちは儲かるように思うが、大地主は都市再開発の後、更に巨大な利益がもらえるのじゃ。
「父上はこういう仕事を務めるのが光栄に思っています。私たちは最大の努力でヴィテブスクを前より煌めくようにします。」
ダグマラお嬢さんが嬉しいそうな笑顔でラヨスにそう答えた後、賓客はみんな拍手した。わたくしを除いて。
簡単に説明すると、都市再開発は大地主に他の住民の土地を兼併できるようにさせる手段じゃ。勿論、大地主と建築公会は政府に金銭のお返しを…というより賄賂を贈るのじゃが。
「父上はもうシュバシコウ銀行に、二十万ズロティ金貨の融資を申請しました。私たちはこの市に貢献できるのを期待しています。」
コニチ家族の勢力は私が予想したより強大だ。もし彼らが都市再開発の役目を担当できれば、将来、遅かれ早かれ、ヴィテブスクの一番の大地主になって貴族の身分を得る。
「皆様は噂を聞いているでしょう。ある市民はコニチ家族が今回の真銀密輸入事件に関わっていると思います。彼たちがコニチ家族の滅私奉公の精神を理解していないとしか言えない。たとえ外から来た貴族でもコニチ家族と一定時間付き合えば、彼たちがどんなに高尚な商人か分かります――」
ラヨスはここまで話すと、わざと間を置いて私を一瞥して話し続けた。
「彼たちが多くのお金と時間を費やすのは、帝国の辺境に楽園を建設できるように強く願っていることです。彼たちは辺境の住民たちが他地域の住民たちと出会った時、誇りを持って故郷の名前を言えるようにしたいです!彼たちが今回の事件と関係がないと保証します。コニチ家族のために乾杯しましょう!」
みんなは乾杯した後、ダグマラお嬢さんは改めてみんなに礼を言った。
「皆様、ありがとうございます。コニチ家族の職員たちが真銀を密輸入したのは確かに我々の管理不行届きでした。自分の過ちを償います。皆様はまた協力して、他地域の住民の尊敬を勝ち取ることを希望します!」
「それから、来賓の皆様は続けて御歓談下さい。宴会が終わるまであと二時間ありますよ~」
市長の感動的な演説を聞いた後、わたくしですらコニチ家族がまさか本当に潔白であるのかと考えておる。もしただ都市再開発で儲けたければ、彼たちは大銀行へ行って巨額の金を借りなかったはずじゃ。もし損をすれば、彼たちは多くの土地を売らなければ、借金を返せないじゃろう…
じゃが、今は幾つかの疑問がある…コニチ家族は貴族の身分を持ってないから、多くの商業上の制限を受けておる。それなら、なぜ彼らは十分な資金を持っており、土地を買って家を建てることができる?彼らが融資を受けた相手――シュバシコウ銀行は、各大公国の首都に支店がある大銀行なので、勝手に市民階層の客に金を貸せぬ。コニチ家族はどうやって金を借りたのか?彼らの保証人になってくれた貴族がおるのか?
そう考えれば、わたくしはもっと賓客にコニチ家族が市で経営する事業と彼らの歴史などを問う必要がある。じゃが、あの美少女姉妹たちに気付かれないように。
アルドナにとって、この宴会で良い物は美食と音楽だけだ。賓客に対しては不快感を感じる。彼らはいつでも金銭と権力のことばかり話して、深い知識に乏しいという者たちだから。
宴会が終わった後、雪の夜の火を出たアルドナはペースが軽快だった。集めた情報は少ないが、彼女は少なくともコニチ家族の勢力について分かった――彼らはヴィテブスクの裏の支配者かもしれない。
ラヨスがわたくしを宴会に誘ったのは、この機会に彼とコニチ家族は密輸入事件と関係があるって嫌疑を晴らしたかったのじゃ…こう考えたアルドナは市長の狡賢さに少し感服した。
宴会に参加した賓客の中で、市長を信じた者は何人いたのか?市長の言葉は確かに説得力があるので、アルドナでも彼が無罪かもしれないという考えを初めて持った。彼には密輸入事件を庇わなくても他のお金を儲ける方法がある。
次にやるべきことは、犯人を訊問しに行くことだ。しかし、犯人からどれほど情報を聞けるのか?アルドナは懐疑的になっている。ここはスルツクではないので、彼女は犯人を拷問して白状させることができないから。
「あら、アルドナ保安官でしょう?泊まっている旅館はどの方向ですか?」
アルドナは肩が叩かれたのを感じて、頭を回して見ると、クンジアだった。彼女の赤い髪は街燈の下で更に赤くなっている。
「クンジアさん。わたくしが泊っておる旅館は町の東で、二十分ぐらい歩けば着きます。貴女も今家へ帰る途中ですか?」
「いいえ、あるお客さんがうちに新しい注文書を渡したいので、彼の家を訪れるつもりですわ!もし東へ行くのなら、一緒に少し歩きながら、この町について話し合うのはいかがですか?」
クンジアの態度は彼女が何かをアルドナに伝えたいことを表した。アルドナはこの女性の職人がどんな人か分からないが、どの情報も逃すわけには行かないから、何秒か考えた後賛成した。
「はい、お話できて光栄ですじゃ。わたくしは任務を負ってこの町に来ましたが、この町についてまだ詳しくないのですじゃ!」
アルドナはクンジアが話を始めるのを待っていたが、彼女は何かを考えているようだった。三軒の家を通り過ぎた後、彼女はやっと話し始めた。
「保安官様、この質問はちょっと唐突ですが――この市へ密輸入事件を調査しに来たのなら、今は誰か疑わしいと考えていますか?」
本当に唐突な質問だ。アルドナは暫くどう答えればいいか分からず、「何も伝えられない」と直接返事したかった。
「心配しないでください。うちは市長に頼まれて鎌をかけるのではありません。実を言うと、彼と仲が良くないのです。」
そう言われても、アルドナは返事ができない。こんなに大胆なやつにあまり遭ったことがない。彼女は名家のお嬢さんで今は保安官だから、こんなに単刀直入に聞かれたことはない。
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