第41話 マクリー砲《改》
上昇を続けること10秒ちょい。
十分に
そのまま
「マクリー砲発射準備! ———【ミドル】でいくよ!」
スピードは落とさずそのままに。伝声管からマクリーの小気味よい返事が風を切る音に合わさって、ボクの耳へと届いてくる。
『メーゼラス』とのレースの後。
ボクとマクリーはマクリー砲のバージョンアップを考えた。航空戦闘部での訓練で毎日試行錯誤を繰り返し、ついにはマクリー砲を三段階に撃ち分けられるようになったのだ。
【マックス】【ミドル】【ライト】の三段階の内、今回は真ん中の【ミドル】を選択。【マックス】だとマクリーの全パワーを使い切ってしまう。その分【ミドル】なら三発は撃てる。【ライト】だとさらに増えて12発。
もちろん威力は落ちるものの、この後まだ何が起こるかわからない。なのでここは【ミドル】がベストと判断する。
ステアリングホイールを小刻みに動かして、船首と照準の延長線上に
「マクリー砲、発射!!」
伝声管に向かって叫んだ声に、即座に
ボクが座っている操縦席あたりから、緑の皮膜が船首に向かって集まり出すと、大きな球体へと形を変えていき、マクリー砲【ミドル】が撃ち放たれた。
仄暗い銀幕内を眩い光で照らしながら、マクリー砲は狂いなく
そして。
ドンッと大きな音と共に緑弾が
『———ギャアオオオオオオオオオオオ!』
マクリー砲を受けた
「やった……よね?」
「ああ。これだけのダメージを負わせたんだ。もう時間の問題だろう。……じゃないとこっちも流石に持ちそうもないからなぁ」
次第に
「ねえクラウスさん! 下にはヴェルナードさんたちが! 急いで知らせないと
「嬢ちゃんの言うとおりだ。……お疲れのところ悪いんだが、一走り頼めるかい? 嬢ちゃん」
「うん! もちろんだよ!」
クラウスは戯けた調子で片目をすがめると、すぐにいつもの顔に戻る。
「コルネーリオ、お前も一緒に同行しろ。不測な事態が起こったら、お前が盾となって嬢ちゃんを守るんだ。いいな!」
「……やれやれ。副官を盾がわりとは、これまた随分な特別扱いですね」
ふぅとため息を零しながら、小さな毒を吐くコルネーリオ。だけどすぐに向き直ると、ボクに真っ直ぐな眼差しをぶつけてきた。その瞳には、厄介者を見つめるようないつもの嫌悪感は見当たらない。
「カズキのことは、俺が責任を持って守ります。これからまだまだ馬車馬の如く働いてもらわないと困りますからね」
言い方はなんともコルネーリオらしいが、どうやらこの戦いで、ボクはようやく彼に認められたようだ。
「二人とも頼んだぞ!」とクラウスの檄を背中で聞き、ボクとコルネーリオは急下降する。崩れ朽ちて落下する
それが地上で戦うヴェルナードたちの元へと迫っているのだ。
銀幕内はほぼ暗闇状態。地上の
だからボクたちは向かっている。地上で戦う仲間たちの元へと。
チカチカと淡い緑光の点滅が、朧げながら見えてくる。ヴェルナードたちがまだ戦っている証拠だ。
「マクリー! もっとスピードアップ! 頑張って!」
「ふぬぬぬっ! こ、これが限界です……!」
マクリー懸命の踏ん張りで、
とうとう浮力を完全に失い、四散した
———このままじゃ間に合わないかも!
先回りして避難勧告を伝える時間がない! ボクは頭をフル回転させた。
———どうにかしてヴェルナードさんたちに、この状況を伝える手立ては……!
「そ、そうだ! マクリー! ストップ! 急停止!」
「え……ええ!? い、一体どういうことですか? カズキ!」
空中停止した
「カズキ。なぜ止まるんだ。ヴェルナード様たちを見殺しにするつもりか?」
「違うよ! そんなことするわけないじゃんか!」
カミソリのような鋭い眼光のコルネーリオの瞳が、少しだけ見開かれた。
さすがコルネーリオ。どうやらボクの考えに気がついたようだ。
「マクリー砲【ライト】発射準備! 目標は……地上!」
「ほ、本気ですか? カズキ!」
「このまま飛んで行っても絶対間に合わない。それならここからマクリー砲を地上に撃って、いやでも
「でも……誰かに当たってしまったら……」
「大丈夫! 風の加護の力は、物理破壊はできるけど、生物を破壊はしない。……ね? そうだよね? コルネーリオさん」
コルネーリオは呆れた顔で、だがほんの少しだけ口角を持ち上げた顔のまま。
「まったくカズキ。君という人は。……なるべく地上の仲間に当たらない場所に、撃ち込んでくれ」
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