第25話 レース中盤
ボクの
「ほう……少しはやるじゃねえか。そうでなくっちゃ、ちっとも面白くねえもんな!」
マクシムの
「へん! 強がっていられるのも今のうちだかんね! ここからまだまだスピードを上げていくんだから!」
ボクの強気な挑発とは対照的に、マクリーの掠れた声が伝声管から聞こえてきた。
「……か、カズキ。スピードはもうそんなに上げられませんよ……吾輩、結構いっぱいいっぱいです……。風竜の航路にも力を使っているのですから」
「バカ! 出だしから弱音を吐くなんて、アンタそれでも風竜の後釜なのかい? ボクはアンタをそんな弱い子に育てた覚えはないよ!」
それでもボクたちは、ゆっくりだけど心許ないリードを少しずつ育み
「へへ。じゃあ俺様も、そろそろ本気を出させてもらうとするか……第一ブースト、点火だ!」
振り向くと、マクシムの体が赤く光り出した。彼の体から発された紅赤色の光が
二本のブースターは赤い閃光を排出し終えると
「……うわ! あぶな!」
役目を終えたブースターを間一髪で避けながら、
「マクリー! 頑張って! もうちょっとスピードアップだよ! 何とかしてアイツの横に並ぶんだ!」
「……ふんぬぬぬぬぬぬぬぬぬううぅぅぅ!」
マクリーが踏ん張る声を絞り出す。前方の座席を見るとマクリーは、後頭部までうっすらピンク色に染まっていた。顔はきっと真っ赤になっているのだろう。
マクリーの気迫が籠った限界ギリギリの頑張りで
「……ほう、やるじゃねーか!」
「ボクの
一進一退の攻防戦。互いに譲らず並走する二機。前方に小さく見える
赤と青の
「へへへ……じゃあ俺様は、先にいくぜ!」
マクシムが再び赤く発光する。またも二本のブースターに点火すると、赤い二本の軌跡を残して
「か、カズキ! 吾輩、これ以上……」
「わかってるよマクリー! よく頑張ったね! ここからはボクの出番だ! 拡散三点バーストの準備をして!」
ボクは左目を瞑って視界に照準を映し出す。船首を遠くの
「———今!」
小さな飛礫の三連射が
「……なっ!? この距離から当てやがった……!」
ホントにホントに本っ当に悔しくて認めたくないけれど、瞬間的な加速力は相手のほうが上だ。ならばこちらの利点———拡散三点バーストで、遠くから
要は遠くからでも
……本っ当にスピードで負けるのは、悔しいけどね! このレースは『勝つ』ことが最優先。なりふり構っていられないよっ!
ボクが二つ目の
視線を前方に戻す。
「おっと悪いな。手が滑っちまったぜ!」
「……よ、よ、よくも……ボクの愛するボートに傷をつけたなぁ!」
ボクはマクシムを睨み付け、舵を
「マクリー! 拡散三点バーストを撃ちまくって!」
「か、カズキ! 冷静になってください! 相手を撃ち落としてはダメなのです! 負けてしまいますよ!」
「うるさーい! アイツがこれくらいで死ぬわけないだろっ! このままじゃ、ボクの気がすまないんだ! 撃って撃って撃ちまくれぃー!」
逃げる
マクシムの
「へへへへ。ありがとな。俺の
……しまった。完全にしてやられた。
マクシムはボクを挑発して、自分の
「……だから我輩が言ったじゃないですか! 早く自分の
マクリーの叫びと同時に冷静さを取り戻したボクは、旋回して自分の
だがマクリーの忠告も、時すでに遅し。
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