第22話 火竜『メーゼラス』 〜その2〜
イラリオとマクシムに導かれ建物の外に出ると、護衛が10人ほど駆け寄ってくる。ボクたちはイラリオたちと護衛に挟まれる格好で、『メーゼラス』を案内された。
採石場に似た竜の背で、大勢の人間が採石作業に精を出すこの『メーゼラス』にきて思った事が一つある。ほとんどの人が赤髪なのだ。唯一の黒髪だったのは、最初に建物へと案内してくれた人くらいだ。
「おいヴェルナード。お前んとこの竜にも、加護の力ってヤツはあるのか?」
「ああ。我らの神竜は風竜と呼ぶ。風竜からの加護を、我らは風の力に変えている。我らの乗ってきた
結構馬鹿正直に答えるんだな、なんてボクは思ってしまったけど、信用を得るためには仕方がない。胸襟を開いて話す姿勢をこちらから見せなければ、相手は同じ目線にすら立ってはくれないだろう。
イラリオにもそれが伝わったのだろうか。彼は少しだけ歩くのを止め、目を見開く。そして、すぐに歩き始めると採石場を指差した。
「アレが見えるか?」
指し示した先の岩場には、赤い大きな石が埋もれていた。それを数人かかりで丁寧に、取り出している最中の様だ。
「俺たちの火竜からはな、あの
ちょっと待って。ジェット……今、ジェットって言った!?
「イラリオさん! そこ、もっと詳しく! ジェットについて、もっとちゃんとハッキリと教えて!」
「……なんだ、このボウズは」
「ちょっ! ボクは女だ! ……ってまあいいよ。今回は大目に見るから、ジェットの部分を詳しく教えてちむごぅ!?」
クラウスが笑顔でボクの口を抑えてきた。
「すまないイラリオ。この……カズキは、乗り物の事に異常なまでの執着心を持っているのだ。……気分を害したのなら、私が代わりに詫びよう」
「いや……気分を悪くする訳ねぇ。むしろ興味を持ってくれて嬉しいくらいだ。ありがとな。で、ちょっと話が逸れちまったが、その
「なるほど。神竜によってその特性までもが違うのか。これは有益な情報だ。感謝する」
ヴェルナードが軽く頭を下げると、イラリオはまたも歩きながら話を続けた。
「そして加護の力で
———辛抱たまらん!
ボクはクラウスの手を振り解いて、イラリオに詰め寄った。
「イラリオさん! わかる! わかるよその気持ち! 速さってやっぱり美しいよね! 正義だよね! いや、もはや罪とも言えるかな!? 速さが尊敬の証なんてさ、最高じゃない『メーゼラス』! ボク、この『メーゼラス』の事を一瞬で好きになったよ!」
イラリオとマクシムはきょとんとした顔で、瞳が潤んだボクを見た。
「ふ……ふっはははははははは! そうか! この『メーゼラス』の事が好きか! 初対面でそこまで小気味よく褒められれば、悪い気はしないな! ……ヴェルナード。お前、いい部下を連れてきたな」
「あ、ああ。カズキは自分の気持ちに正直な故。口調が無作法なのは許して欲しい」
「いや、そんな細かい事は気にしねぇさ。どんな綺麗な言葉を重ねようが、筋道立てた理屈を並べられようが、本気の感情に勝るものはねえ。……カズキって言ったか? さっきはすまなかったな、お前を男と勘違いしちまって」
イラリオがボクに軽く頭を下げる。護衛の部下たちが驚愕の表情を浮かべた。
「え、いいよそんな謝らなくても。ボクが男と間違えられるのはもう慣れてるし」
頭を上げたイラリオはにっと笑い、踵を返して歩き出す。階段を登ると、鬼太○フォーメーションズとボクらの機体が待機している場所まで戻っていた。
そして唐突に、イラリオに付き添ってきた護衛と、崖の上の護衛が合流すると、ボクらは一瞬の内に包囲された。
「……俺もお前ら……特にカズキの事を好きになりかけたんだけどな。ここからは大人の話だ。悪く思うなよ。……さてヴェルナード。そろそろお前の切り札ってヤツを見せてもらおうか」
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