オレに話しかけてくる1人の女の子

「あ、あのぉ、写真撮ってくれませんか……?」


 前の女の子だ。

 まだ体育祭でもないのに、写真を撮ってくださいとは何事だ。


「それより名前聞いてもいいか?」 


 また話しかけてくることがあれば名前を聞くと決めていた。忘れず覚えていたらし。いつもなら忘れっぽいオレには忘れているような出来事だ。何故かは聞くまでもない。たまたま覚えていただけだ。


「こ、小花衣こはないしずくですぅ……」


 栗色のショートボブ、身長小柄、顔は童顔。声音は弱々し透き通った声。

その特徴を頭に埋めつけ、その特徴の人は小花衣雫、と覚える。


「写真撮りたいです……」


 この何とも甘えさせたいような小柄な女の子は何だろう。


 1人で廊下にいるオレに話しかけるとは。それもこんな日常の中で写真を撮りたいだなんて。


「別にいいけど」


 まあ、とりあえず、写真くらい撮っても良いだろう。監督にも見られるような場所ではなさそうだしな。


 そして、オレは身長差がありすぎるので、オレがカメラを構えて腰を少し下ろす。


「あわわわわぁ……」


 だいぶ緊張しているようだが、オレは「ハイっチーズ」と掛け声をし、パシャっと音と共に、オレたちの写真がスマホに保存された。


「これで良かったか?」


「は、はい……!」


 雫もさっきのオドオドした感じではなく、写真を見て喜んでいる。

 何とも頬めましい笑顔なんだろう。ただただ雫を見てそう思った。


「じゃ、オレはトイレ行きたいから。じゃあな」


 廊下に出たのはトイレに行く目的だ。実際、そろそろ漏れそうでもある。急がなくては。


「あっ、はい……!」


 そうしてオレはトイレに足を向けた。


 等々、オレにモテ期が来てしまったか。いや、これは流石に自意識過剰とかではないだろうう。  


 日常で写真撮ってくださいなんてどっかのファンみたいなものだ。アイドルを街中で見つけて写真撮ってくださいみたいな。


 でも、あんな子今までで話したこともない。かなりクセが強い子なので、話していたら覚えているだろう。


 だが、全く記憶にない。


 でも──どっかで見たことがある。しかし、学校ではない。学校ではないどっ

かで見たことがあるような気がした。


 そんな事を、放尿しながら悩むオレだったが、見当が付かないのでそこで諦め

る。


 おそらく体育祭でまた何かあるだろうと思いながら、クラスに戻るのだった。


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