2.衝動‐奏side

 かなでには朝の日課がある。それは室内の中がプールの中から見えるプールで泳ぐこと。それは毎日欠かさずにしていること。それをしないとモヤモヤする。だが、今日はそれができないでいた。これも弟の棗のせいだ。


“今日はクラスメイト達が遊びに来るから、室内プールで泳いでくれ”


 確かに、室内プールもあるが、奏にとって気分よく泳げるのは室内の中がプールの中から見えるプールの方だ。それに、もとから奏にとって室内プールで泳ぐという選択肢はない。だから、棗のクラスメイト達が映画ルームとボーリング場へ向かうのを見届けてから、プールで泳ぎ始めた。

 そして、しばらく泳いでいると、室内の中がプールの中から見える室内に誰かやって来たのが見えた。


(あっ、あの男の子は、棗が言ってた子かしら)


 きっと、室内の方からも奏の事が見えているのだろう。


(きっと、気づかれてるよね。ごめんね、棗)


 奏は心の中で棗に謝っているが、そんな気は一切ない。どちらかというと、この状況を楽しんでいた。

 奏は室内にいる男の子にジェスチャーで、もっとガラスに近づくように伝え、ガラス越しに近づいてきた男の子にキスをして、その場から離れた。離れるときにチラッと見えた男の子の顔はほんのりと赤くなっているのが見えた。


(可愛い……。さて、棗とあの子は、どんな反応をするのかしら……?)


 奏は久しぶりに楽しくなってきていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る