“好き”という気持ち
知美
1.ガラス越しのキス‐李織side
見たことないぐらいデカイ豪邸。イヤ、実際には何度も見ている、通学路の行き帰りに。だが、それが友達の
そして、今、こうしてその豪邸の前に立つとこれしか思い浮かばなかった。
(デカっ……)
家、イヤ、豪邸の大きさに驚き、門の前で立ち尽くす、
「おい、閉めるゾ」
棗の言葉に反応して、李織は門をくぐる。まさか、自分が豪邸に足を踏み入れるなんて思ってもいなかった。だから、なんだか不思議な罪悪感がある。
目の前には大きすぎる家、公園といってもいいぐらい広い庭、そして、プールまである。そして、家の中に入ると、またすごくて、そこには様々なものがあり、それらに気をとられながら、棗についていく。
「迷うなよ、李織」
棗の言葉に一緒に遊びに来ているクラスメイト達がクスクスと小さく笑うが、李織は棗の言葉に素直に頷く。方向音痴なのは自覚しているから。
棗に案内され、着いた場所には映画ルームと小さなボーリング場だった。
「好きな方で楽しんでくれてかまわないから」
その言葉を聞き、李織は棗に遊びに誘われた当初から、決めていた映画ルームへと向かう。
見たい映画はその当初からたくさんあったから、棗に見たい映画をリクエストしておいた。
(楽しみだな)
既に暗くなっている映画ルームに向かい、李織にとって一番見やすい、一番前の真ん中に座る。
そして、映画が始まった。
◇◆◇◆◇
もう少しで映画が終わる。見たかった映画だから、最後まで見ていたい。だが、冷たいのみものを飲んでいたせいか、トイレに行きたくなっていた。
席から立ち上がり、棗に前もって教えてもらっておいた場所へ向かう。そこへ向かう途中、李織の視界には部屋の中にいるのにプールの中に居るような感覚になれる場所が見えている。
(ゆっくり見たい……)
李織はトイレを済ませた後、そこへ向かう。きっと、今から映画ルームへ戻っても映画は終わっている頃だし、最後だけを見てもつまらない。映画は最初から最後まで通して全部みたい。だから、こうして、ちょっとだけ、寄り道することにする。
その部屋からプールの中を眺めていて、やはり、満足する。
(水の中にいるみたいだ……)
しばらくそうしていると、プールの中を女性が優雅に泳いでいくのが見えた。
(人魚みたいだ……)
その人は、たぶん、棗の姉。李織は棗の姉が泳いでいるのを少しだけ眺めている。
(キレイな人だな……)
棗の姉にみとれていると、棗の姉が李織に向かって、もっとガラスに近づいてというジェスチャーをしてきた。李織はそれを疑問に思うこともなく、素直にそれに従う。
(冷たいけど、気持ちいい……)
顔の出っ張っている部分が触れる。すると、それを見た棗の姉は、ガラス越しにまぶたを閉じ、李織にキスをしてきた。
その行為に驚きながらも、棗の姉を見つめていると、棗の姉は微笑み、李織から離れていった。
(どういう事だ? なんで、キスなんか……)
実際に唇が触れてキスをしたわけじゃない。それなのに李織はドキドキしている。李織の頭のなかは疑問が渦巻いていた。
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