一日の仕事が終わった。

披露して、疲労したマスターだが、その後は披露する事はなく、無事その日の店が終わった。

「ふうっ、今日も充実した一日だった」

 そう言ってマスターは豚の仮面を脱ぎ捨てた。

 そうマスターは豚人間ではなく、犬人間だったのだ。

 この世界にはさまざまな人種が混在している事は事実だが、犬人間もまたしかりしかし、犬人間はこの世界に数百人しかいない、それこそまさに選ばれた人間なのだ。だが、犬人間が特別である事と、生きて行くのに楽と言うのはまた別の話で犬人間は醜悪豚人間に狙われやすいのもまた事実である。どこの世界にも良い奴はいて、悪い奴はいる。それはこの世界でも同じことだ。ましてやこの世界に犬人間は数百人しかいない。それはその事実は極悪豚人間にとって狩りの対象になり得る事である。事象である。だから犬人間でありながら豚喫茶店を営んでいるマスターは身を潜めるべく、もちろん本当であればひそめたくはないのだが、狙われないように、だけど隠れて生きるのも嫌なので、さらに社会貢献もしたいので、喫茶店を仮面を被ってやっているのである。

「俺は犬だ。犬人間だ。だけど、俺よりももっとひっそり生きている奴だっているんだ。俺が嘆いてどうする。ワン」

 犬人間はこの世界に十数人しかいない只の人間を頭に、脳内に、ビジョンとして描きながら吐き出すように呟くように、そう小さく言った。

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