第126話 もしも彼らが敵対的だったら
地球外知的生命体探査をただちにやめるべきだ。
発見しようとする行為は、逆探知されて、地球の存在を地球外知的生命体に晒すことになる。
地球外知的生命体が友好的で無害だという考えは楽天的過ぎる。
友好的か敵対的かを考えもせず、ただ好奇心で探査しているとすれば、能天気だと言うほかない。
地球外知的生命体は敵対的で、生命が存在するのに適した惑星があるとわかれば、すぐに侵略行動に移ると考えるべきである。
という主張をずっとしているのだが、相手にされたことはない。
私はもうすぐ死ぬが、年来の主張を繰り返したいと思う。
ただちにアクティブSETIをやめろ。
もう手遅れかもしれない。
2024年 無名の天文学者
無名の天文学者さんの憂慮は当たったのかはずれたのか。
それを確かめるときが近づいている。
天王星付近で突如形成されたワームホールから、宇宙艦隊が吐き出された。それは宇宙移民船団を伴っている。
宇宙艦隊の目的地は明らかだ。
すでに進路を地球に向けている。
地球人類はいまだに恒星間航行能力を持っていないし、人工ワームホールの生成など夢のまた夢だ。
宇宙艦隊の乗員たちは、我々が逆立ちしてもおよばない科学力と想像しえないほどの物理学を所有しているはずだ。
彼らが敵対的であったら、地球人類は滅亡するしかない。
2053年 航空宇宙機関職員
宇宙艦隊と宇宙移民船団の目的が太陽であったのは意外だった。
我らの太陽はこの銀河系の中でありふれた恒星でしかない。
そう思っていたのは地球人だけで、実は特殊な星なのだろうか。
宇宙船団は地球軌道を超えて太陽に接近し、いまでは水星と金星の中間で公転する太陽系の一部と化している。
彼らは地球に興味を示さず、侵略もしなかった。
我々は彼らに接触しようとしたが、その試みはことごとく失敗した。
接近しようするあらゆる人工物が遥か手前で蒸発させられた。
どのような攻撃を受けたのかすら判明していない。
彼らからのメッセージはただひとつ。
『ただちにSETIをやめろ。わたしたち以外に知られる前に』
我々はその指令に従うべきであろう。
2057年 国際宇宙会議議長
※SETI:Search for Extra Terrestrial Intelligence 地球外知的生命体探査
地球から地球外文明にメッセージを送る分野は、アクティブSETIと呼ばれる。
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