第78話 変な名前オフ会
高校二年生になり、好きな女の子に告白したが、断わられた。
後日「布団田くんって、顔はそう悪くないんだけど、名前がねえ。変な名前すぎて彼氏にはちょっと無理」と彼女が言っていたという話が耳に入って、いっそう親を恨んだ。
「この名前のせいで、いろいろと生きるのが大変なんだよ」と両親に文句を言ったが、父親の
祖母の名前は
ちなみの父方の祖母の名前は
布団田二度寝はSNSで変な名前のことを愚痴った。日本には変な名前の人が他にもたくさんいて、仲間ができた。二度寝が気の毒に思うほどの名前を持つ人が大勢いた。
ハンブルグ
他にもたくさんの変な名前仲間がいるのだが、上記の人たちは首都圏に住んでいるということがわかって、ノリでオフ会をやろうということになった。とある日曜日の午前11時、渋谷のハチ公で待ち合わせをした。
涙涙子が少し遅刻して、11時15分に全員集合した。
お手軽なファミレスに入り、昼食にしようということになった。
高井金利は小柄で黒髪ロングの可愛らしい中二の女の子だった。
綺羅龍綺羅男はお腹の出た中年男性だったが、貫禄があった。
失意失恋子は大学三年生の女性で、ブランド物らしいおしゃれな服を着ていた。ミニスカートで脚線美に目が吸い寄せられた。茶髪ボブヘアできれいな顔の人だった。
ハンブルグ美味雄は二度寝と同じ高校二年生だった。中肉中背で平凡な顔立ちだった。目付きが少し悪かったが、不良としてはあまり迫力がなかった。
涙涙子は27歳のOLで、肩までの長さの髪を金色に染めていた。すごい美人だった。右目に泣きぼくろがあって、色っぽい。
「みんな若いね。おれが奢るよ」と綺羅龍が言った。
「綺羅龍さん、割り勘にしましょうよ」と涙子が言い、みんながそれに賛同して、割り勘になった。
「おれのことは龍、と呼んでほしい」
「はい、龍さん。ではみなさん、わたしのことはるい、と呼んでください」
「じゃあじゃあ、あたしはカナって呼んでください」と高井金利が言い、
「私のことはレンで」と失意失恋子が言い、
「俺のことはハーくんと呼んでくれや、夜露死苦」とハンブルグ美味雄が言い、
「あ、僕は布団田でいいです。フルネームで呼ばれなければ、それでいいんで」と二度寝は言った。
ブーイングの嵐が巻き起こった。
「ブー、布団田くんは恵まれているよ」
「ブーブー、布団田くん、ずるい」
「ブーブーブー、布団田二度寝さんって呼ばせてもらいますぅ」
「ブーブーブーブー、布団田二度寝くん、三度寝すればいいわ」
「ブーブーブーブーブー、布団田二度寝くんよお、おめえの名前には可愛げがあんだよお。たいして変な名前じゃねえ」
「いや、十分変な名前だよ!」
オフ会は盛り上がり、二度寝はかなり楽しんだ。
二次会はカラオケに行き、夕方まで変な名前仲間で遊んだ。また会おうということになって、解散した。
僕は確かにあの人たちよりは恵まれているのかもしれないな、と二度寝は思うことができた。
変な名前仲間の付き合いは長くつづいた。
一年後、涙涙子がSNSで報告してきた。
『わたし、結婚しました。真珠涙子になったので、変な名前仲間は脱退しますね。悪しからず。旧姓涙涙子』
やっぱりあの人は恵まれていた、と二度寝は歯噛みした。
涙子を除くメンバーでオフ会をやり、悪口を言って、大いに盛り上がった。
ちくしょう、しあわせになれよ!
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