第62話 明治10年戦艦大和
ときに西暦1877年、佐世保艦隊が「世界征服」を叫んで反乱を起こした。
「日本は未来軍の力により世界最強である。開国し、海外に進出し、世界を征服すべきである」と主張した。
佐世保艦隊司令官は西郷隆盛。参謀は桐野利秋。
江戸幕府にとって折悪しく、佐世保には戦力が集中していた。中国情勢の緊迫化、清・英・露の抗争を睨んでいたのである。
旗艦は戦艦武蔵。西郷と桐野が乗っている。
従うは戦艦長門・陸奥・伊勢・日向・金剛・比叡・榛名・霧島。
重巡洋艦高雄・愛宕・摩耶・鳥海・利根・筑摩。
軽巡洋艦川内・神通・那珂・夕張・阿賀野・能代・矢矧。
駆逐艦島風他多数。
潜水艦伊19・58。
日本艦隊の主力が集結していた。
幕府海軍支配下の横須賀艦隊は戦艦を大和・扶桑・山城しか持っていない。
征夷大将軍徳川慶喜は頭を抱えた。
軍艦奉行勝海舟は「彼に託しましょう」と言って、連合艦隊司令長官に未来から来た山本五十六を推した。
山本は横須賀の戦艦大和に乗り込んだ。
しかし大和は出撃させず、機動艦隊を編成して南雲忠一に指揮させた。
旗艦は空母赤城。
従うは空母加賀・蒼龍・飛龍・翔鶴・瑞鶴。
山本は佐世保艦隊が空母を保有していないことに目をつけ、空母機動艦隊によって、これを撃滅する作戦を立てたのである。
佐世保艦隊は出航し、江戸湾に向かっていた。
機動艦隊も横須賀を出撃していた。偵察機により佐世保艦隊が土佐沖にいることを知り、紀伊半島沖から、爆撃機・攻撃機・戦闘機の大軍を発進させた。
土佐沖で戦闘が勃発した。
「航空機だと? 大和は来ないのか?」
桐野は困惑した。
爆撃機による急降下爆撃、攻撃機による魚雷攻撃、戦闘機による機銃掃射にさらされ、佐世保艦隊は大混乱に陥った。
対抗しようにも、空母がない。
長門・陸奥・伊勢・日向・金剛・比叡・榛名・霧島が相次いで沈没した。
不沈戦艦として設計された武蔵はかろうじて浮かんでいたが、「もうよか。自沈すっど」と西郷は言った。
桐野は沈痛な表情で、「総員退避。キングストン弁を開けよ」と副官に命じた。
西郷は武蔵とともに海中に没した。
機動艦隊は戦士としての優しさを持っていた。
主力の戦艦だけを攻撃し、その他は脅威ではないと見なして、攻撃しなかった。
佐世保艦隊の巡洋艦、駆逐艦は戦艦乗組員の救助に当たった。
第一次攻撃のみで、南雲は機動艦隊を横須賀に帰還させた。
飛龍に座乗していた第二航空戦隊司令山口多門は第二次攻撃を敢行し、重巡洋艦・軽巡洋艦も撃沈すべしと主張したが、南雲は無視した。
桐野は無傷の重巡洋艦高雄に移り、横須賀を目指した。
南雲は桐野の動きを察知できず、相模湾で佐世保残存艦隊の猛攻を受けた。
砲戦となると、空母は脆い。
赤城・加賀・蒼龍・飛龍・翔鶴・瑞鶴は大破または沈没した。
戦艦大和が動いた。
大和・扶桑・山城を主力とする横須賀艦隊が佐世保艦隊を迎撃した。
両軍血みどろになりながらも、強力な戦艦の主砲にさらされて、佐世保艦隊は次々と沈没していった。
桐野も戦死した。
佐世保艦隊は降伏した。
江戸徳川幕府はかろうじて勝利したが、その海軍はこの内戦でほぼ力を失った。
英・仏・米は日本を植民地とする好機だと考え、三か国連合艦隊を江戸湾に派遣した。
しかしそこに待っていたのは、21世紀の日本からやってきたたかなみなどを主力とする護衛艦隊であった。
日本未来軍は三か国連合艦隊を殲滅した。
英・仏・米は日本から手を引き、江戸幕府は鎖国を堅持した。
戦艦大和は幕府海軍連合艦隊の旗艦をたかなみに譲り、退役した。
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