第14話 枕草子の続編が見つかったらしい。

 春はあけぼの、と書いたのはどなたでしょうか。

 清少納言という方ですか。

 あら、それはわたくしのことですわ。

 春はいつまでも眠っていたい季節でございます。

 春は二度寝。

 三度寝もいとをかし。

 四度寝もしていると、さすがに定子様に怒られてしまいますわ。

 わたくしの臥所にやってこられて、おんどりゃあ、いつまで寝てるんじゃあ、さっさと起きて、わしと遊ばんかい。と言われるに決まっています。

 宮廷では、最近、お下品なことば使いが流行っておりますの。

 嘆かわしいことです。

 わたくしの随筆は上品すぎて、あまり読んでいただけなくなってきました。

 あのくそ紫のチャラ男小説はめっちゃ受けてるみたいだけどよぉ。ばか式部。醜女め。

 あら、わたくしも毒されてしまっているようですわ。

 関白様も口が悪いんです。

 この世はわしのもんじゃあ、満月みたいに完璧にそうなんじゃあ。とおっしゃっていたそうです。

 天子様の眉をひそめさせたらしいですわ。

 ところで、ついに、くそ紫の小説を取り寄せました。

 夢中になって読んでしまいましたわ。

 ばか式部天才じゃね。

 わたくしにはこんな小説は書けませんわ。

 胸がキュンとしてしまいました。

 エモいわ。

 まぁ、わたくしは随筆家ですから、小説は書けなくてもよいのです。

 それにしても、源氏の君は素敵。

 毎夜、そのお姿を想像しながら、眠りについております。

 後宮で、ばったりくそ紫と出会ってしまいました。

 こんにゃろう、ちっとばかし小説が当たったからって、調子こいてんじゃねぇぞ。かっこいいじゃねぇか光源氏。とわたくしは言いました。

 そっちこそしつこく随筆書いてんじゃねぇよ。枕草子はもうこれ以上後世には残らねえ。関白様の時代だかんな。ざまあみろ。枕、傑作だけどな。とばか式部が言いました。

 少納言と式部って、どっちが偉いんでしたっけ。

 どうでもいいわ、そんなこと。

 わたくしとあんたとどっちが上か、歴史が証明してくれるでしょう。

 くそ紫の名が千年も残るとは考えられません。

 清少納言の名は、やまとことばがつづく限り、伝えられるにちがいありませんわ。

 いとをかし。

 くふふふふ。

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