第28話 嘘の真実、揃わぬ気持ちの約束~偽りの選択肢~②
「奏ちゃん、霜雪さん、あたしたち同じクラスになったね」
「ええ、それに冬風君も同じ」
三年生になった一日目、あたしたち三人とまこちゃんは同じクラスになり、六花ちゃんに放課後に少し教室に残って欲しいと言われた。
「六花ちゃん、今日はどうしたの?」
「そのことなんだけど、私が誠のことを好きなのは二人とも知ってると思う。私も二人が誠のことを好きなのを知ってる。だから私が考えていることを二人に言わないといけないと思ったの。私は今年の四季祭でもう一度誠に告白する。今度は返事をもらう。それがどんな答えだとしてもね」
「……私も同じことを考えていたわ。遠い先のことのように感じるけど、実際はあっという間に一緒にいられる時間は過ぎていく。私はまだこれまでと同じように冬風君と過ごしたい。そして最後に冬風君の答えをもらいたい。それが後悔のない道だから」
二人の言葉を聞いて安心する。良かった。四季祭が終わるまではこれまでと同じまま、まこちゃんと過ごすことができる。そして六花ちゃんか真実ちゃんがまこちゃんに選ばれる。それでいいんだ。私は決定的なことをしない。これでいいんだ。こんな嘘つきな私はまこちゃんの選択肢にも入るべきじゃない。六花ちゃんと真実ちゃんはもう告白している。私はしない。それで……それでいいんだ。
「じゃあこれからは本格的にあたしたちはライバルだね。みんながやりたいようにやりたいことをやろう。誰にも遠慮はなし。後悔もなし。誰が最後に選ばれても恨みっこはなし。……それに最後に選ばれなかったしても諦める必要なんてない。恋はいつでも自分勝手だから」
どの口がこんなことを言っているのだろう。本当にあたしは嘘ばかりだ。
「うん! 約束する」
「ええ」
その瞬間、教室のドアが開いた。
「夏野、霜雪、早く生徒会室に来いよ。朝市先生が嬉しそうにカメラ持ってきて待ってるぞ。……戦国もいたのか。部活は?」
「今から行くところだよ。じゃあね、奏ちゃん、真実ちゃん。私たちはこれから特別な関係……」
「また明日」
六花ちゃんが先に教室を出ていく。
「……三人揃って特別な関係って何だ?」
まこちゃんが少し不思議そうに聞いてくる。
「あたしたちは凄く気が合うってことだよ。辛いくらいにね」
「……そうか。ほら、生徒会室に行くぞ」
あたしたち三人は早足で生徒会室に向かった。
年度始めの記念撮影を終えて、小夜先生と朝市先生は英語準備室に戻っていった。朝市先生は今年は俺と夏野、霜雪のクラスの担任、小夜先生は副担任だ。
俺のクラスは見知った奴らばかりだった。俺の知り合いで今年同じクラスじゃないのはそれこそ星宮と秋城くらいだ。
「じゃあ今年度も変わらず頑張ろうか。今年は五月に季節高校との学校対抗戦、向こうの生徒会の最後の仕事だ。その後に体育祭、夏休みに合宿、明けると大地と咲良は修学旅行。その後に会長選挙があってこの生徒会は解散だ」
「解散なんて寂しいこと言わないでくださいよー」
「そうは言っても僕たちはあと半年と少しの任期だ。だからこそ後悔がないようにしよう。特に三年の僕たちはね」
「まずは対抗戦の準備ね。けど向こうの生徒会が解散する前で良かったわ。もう顔見知りだし、早めに準備ができる」
「そうだね。朝市先生たちが集まる日をそのうち決めてくださると思うから、僕たちは前回の時と同じようにこちらの学校の準備はできるだけ終わらせておこう。そんな感じで今年度もよろしく頼むよ」
秋城の言葉で生徒会の仕事が再び始まった。
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