第22話 クリスマス
第22話 聖夜に重なる想いは切なく~クリスマス~①
「いやー、誠、今回も残念だったね」
十二月も半ば、期末テストの結果が返却され、俺は学年で四位だった。もちろん一位は秋城で、二位が星宮、三位が霜雪、夏野はまた俺と同率で四位だった。
生徒会の仕事は最近落ち着いているので、全員でテストの成績を見ながら雑談する。
「くそ、今回はかなり自信があったのに」
「けどみんな僅差なんだから落ち込むことはないわよ」
「まこちゃん、またあたしと同じだね」
「お前が勉強できるってなんかイメージと合わないからやめろ」
「ひどい! 真実ちゃん、まこちゃんがいじめてくるよー」
「悔しくて八つ当たりしてるのよ。私たちが大人になって温かい目で見てあげましょう」
「憐れむのもやめろ」
盛り上がっていると生徒会室の扉が開いて、朝市先生と小夜先生が入ってきた。
「よ! 期末テストお疲れ! 全員なかなかに成績が良くて嬉しいぞ!」
「一年の二人も二年のみんなも生徒会でトップを独占するなんてすごいわ」
一年の成績は春雨が一位で月見が二位だったらしい。ちなみに月見の二位は星宮の教育の賜物らしく、月見は購買で買ったお菓子を星宮に献上していた。
「今日はお二人揃ってどうしたんです? 何か追加で生徒会でやることがありますか?」
「そう、そのことなんだが、うちの学校ってクリスマスイブの日に家庭科部が中心となって調理室を使ってクリスマスケーキを作ろうってイベントが毎年あるんだが、毎年客入りが悪いんだ。だから生徒会として参加してくれないか? もちろん参加費と材料費はこっちで出す。お前たちが参加するとなったら定員オーバーまでとはならなくてもそれなりに来てくれる生徒が増えるだろう」
「もちろん冬休み中だし、自由参加なんだけどどうかしら?」
「僕は大丈夫ですよ。みんなどうだい?」
秋城の問いかけに全員が頷く。
「そうか、助かるよ。じゃあ俺が申し込んどく。ケーキは二人か三人一組で作るらしいから、グループを決めといてくれ」
そう言って朝市先生と小夜先生は生徒会室から出ていった。
結局グループは秋城と春雨、星宮と月見、俺と夏野、霜雪ということになり、その日はもう仕事がなかったので帰宅することになった。
「さすがにそろそろ寒いな」
生徒会の奴らと一緒に帰っている途中、俺は両手を制服のポケットに入れながら震えた。
「まこちゃん、マフラーも手袋もしないの?」
「去年まで使ってたやつが古くなったから捨てたんだが、新しいのを買いに行くのが面倒くさくてそのままだ」
「冬風君、ちゃんとしていないと風邪を引くわよ。クリスマスの頃には雪も降るらしいし」
「まあ、気が向いた時に買いに行くよ。じゃあまたな」
俺は生徒会の奴らに別れを告げて、自分の家までの道に入った。
「ねー、まこ兄。今年のクリスマスはどうする? 美玖はクリスマスの日は友達とお出かけするけど、お母さんもお父さんも二十六日に帰ってくるらしいから、それまでは美玖とまこ兄の二人だよ」
夕食を食べながら美玖と話す。
「イブの日は生徒会で学校に行かないといけない。ケーキはそこで作ってくるけど、何かしたいことあるか?」
「へー、生徒会の皆さん、イブの日も学校に行くんだねー。あ! じゃあその後、生徒会の皆さんを呼んでうちでクリスマスパーティーしない⁉」
「どうだかな。あいつらも何か予定があるかもしれないしな。明日、聞いてみるだけ聞いてみるか」
次の日、秋城たちに話してみると、クリスマスイブはケーキ作り以外は何も予定はないから喜んでという返事が返ってきた。
クリスマスイブの日の午前、俺は相変わらずマフラーも手袋もせずに震えながら学校へ向かった。今日の夜には雪も降るらしい。
荷物を生徒会室に置いて、必要なものだけを持って調理室に入ると、既に他の生徒会のメンバーが揃っていた。
「誠、おはよう。今日はお世話になるよ」
「ああ。美玖も朝からテンションが上がりっぱなしで楽しみにしてる。こちらこそありがとう。いつも俺と美玖は二人だけのクリスマスだったからこれまで寂しかったんだと思う」
「皆さん、今日はご参加いただきありがとうございます。私たち家庭科部が丁寧に説明をしますので、美味しいクリスマスケーキを一緒に作りましょう」
家庭科部部長の挨拶があり、それぞれグループに分かれてケーキ作りが始まった。
「よし、これで焼けばひとます土台の完成だな」
「まこちゃん、手際いいねー」
ケーキが焼きあがるまで三十分ほどの休憩になる。
「美玖と毎年手作りしてたからな」
「そうなのね」
「それにしても去年までは全然人がいなかったとか言ってたのに、今年はしっかり定員が埋まったらしいな」
「だねー、そもそもこういうイベントがあるってことを知らなかった生徒も多かったらしいけど、今年は生徒会でもちゃんと宣伝したからね」
「効果があって何よりだ」
調理室にはだんだんといい匂いが漂い始める。
「まこちゃん、明日は何してるの?」
「ん? 明日は少し買い物に行こうと思っていただけだ。美玖も遊びに行くらしいからな」
「へえー、じゃあ一緒にイルミネーションを観に行かない? 真実ちゃんも一緒に!」
市内中心の並木道のイルミネーションはなかなかの規模で毎年人気らしい。
「ええ、私はいいわよ。冬風君は?」
「……せっかくだし行くか。それに美玖にクリスマスプレゼントを用意したいんだが、今年はまだ決めてなかったんだ。一緒に選んでくれるか?」
「うん! もちろん!」
明日の予定が決まったところでケーキが焼き上がり、クリームなどのトッピングに入る。
「おい、夏野、お前今つまみ食いしたな」
「ん? んーんん、んん」
「夏野さん、クリームが唇に付いているわ」
「ご丁寧にクリームも付けたのか……」
その後、各グループが思いのままにケーキにトッピングを施し、ケーキ作りが終わった。
「作ったはいいが、俺たちはどうやって分ける? 頑張って三等分にするか?」
「美玖ちゃんがいるんだからまこちゃんが半分、あたしと真実ちゃんが四分の一ずつでいいんじゃない?」
「ええ、それでいきましょう」
「そうか、ありがとう」
ケーキを四等分にしてそれぞれケースに入れる。
生徒会で俺の家に向かう前に小夜先生と朝市先生に挨拶をする。
「今日はありがとな。これ、俺と涼香からのクリスマスプレゼントだ。お菓子の大量詰め合わせ。これから冬風の家にみんなで行くんだろ。少ないかもしれないがパーティーの足しにしてくれ。あと、お前たちなら心配ないと思うけど、羽目を外し過ぎるなよ。今日は雪も降る、あまり遅くならないうちに帰るんだぞ」
「はい、ありがとうございます。今年もお世話になりました。良いお年を」
「ええ、みんなも良いお年を」
先生と別れて学校を出る。そうか、これが今年最後の学校だったのか。次に来るのは年明けだ。今年はやけに月日が経つのが早かったな。
冬休みは短いはずだが、俺はやけに次の生徒会が待ち切れなないと感じていた。
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