第13話 とある季節の姫と王子~対抗戦打ち上げ~②

 俺は気配を消して屋上のドアを開けて出る。


「誠、せっかくなら最後まで見守ってあげるべきだよ」

「秋城⁉」

「しーっ。邪魔しちゃ悪い」


 そう言いながら秋城は屋上のドアを少しだけ開けて二人の様子を伺う。


「お前、いつから?」

「八王子副会長と一緒に君と九姫会長を探してたんだよ。君は九姫会長の相談に乗ってあげていたのだろう? 季節の生徒会のみんなも煮え切らない二人にやきもきしてたみたいだから、今日がその区切りになるといいね」


「最悪な結果に終わらなければいいけどな」


「恋愛に最悪な結果などないよ。どんな恋をしても人はそこから成長するものさ。まあ、僕だって二人が望む結果になることを祈ってる」


 九姫の相談を聞いた手前、俺も少しはこれからどうなるか気になる。八王子も九姫も俺と秋城がいることくらい分かっているだろう。覚悟を決めて俺は秋城と屋上を覗いた。


「桔梗、話ってなんだ?」


「大事な話……。私、萩のことが好き。去年も会長選挙の時もずっと萩は私のことを助けてくれてる。これからも私のことを助けて欲しい。そして私もこれから萩のことを助けられるようになりたい。だから付き合ってください!」


 九姫が八王子に想いを伝える。


「……聞かなかったことにする」


 八王子が答える。上手くいかなかったか。秋城の言った通り、人はここから成長できるのか。九姫は今何を感じ、何を思うのだろう。


「……そう、分かった。なんかごめんね。じゃあ生徒会室に戻ろっか」


 九姫が出口に向かって歩き出したところで、言葉を発した後動かなかった八王子が九姫の手を掴んだ。


「待て、俺も言いたいことがある。桔梗、お前は優秀だが誰かの助けが必要だ。けどその助けは別に俺じゃなくてもいい。紅太でも葵でも望でもかぐやでもいいんだ」


「……うん」


 八王子はこれ以上何を九姫に言おうというのか。


「……だが俺は、たとえ俺じゃなくてよくても桔梗の助けになりたい。他の奴に桔梗の横に立って欲しくない。俺の助けになんかなってくれなくていい。これからも俺にずっと桔梗の力にならせてくれ!」


 八王子は気恥ずかしそうにしながらも堂々と九姫に向き合う。


「いつか俺から言おうと思っていた。さっき桔梗が言ったことは聞かなかったことにしたから、それは達成できたかな」


「……そ、そんなのずるい……」


「ずるさも時には必要って選挙の時に言ったろ?」


 九姫が八王子に近づいて見上げる。


「わ、私が、は、萩と付き合ってあげるんだから、これからもしっかり働きなさいよ! ……た、頼りにしてるんだからね……」


「久しぶりにそれ聞いたな。他の奴にはできるだけするなよ。可愛いくて嫉妬するからな」


「好きなだけ嫉妬したら? 嘘をついた罰……」


「まあな。ほら、秋城、冬風、見世物は終わりだ。生徒会室に戻るぞ。みんなに話さないとな。ずいぶん待たせたようだし」


 そう笑いながら近づいてきた八王子と九姫と一緒に生徒会室に戻った。


 生徒会室に戻ると二人は付き合うことになったことをみんなに報告し、季節の生徒会のメンバーはやっとかという顔で二人を祝った。


 その後は午刻先生の悪ノリで二人はお互いの好きな所を言わされたりと、散々な打ち上げ兼おめでとう会になった。



 すっかり夕方になり、校門の前で、両校の生徒会が向き合う。


「また一緒に何かできたらいいね」

「そうですね、それまでお互い頑張りましょう」


 会長同士が挨拶を交わして解散となった。


「じゃあまたな。冬風、桔梗の相談に乗ってくれてありがとう。おかげで上手くいった」

「勇気を出したのは九姫と八王子で俺は話を聞いただけだ。またな」


 季節の生徒会とはまたお互いに協力することになるだろう。


 


「次の行事は生徒会は関係ないけど修学旅行ね」


 帰りの電車の中で星宮が言う。


「そうだね、咲良と大地は僕たちがハワイに行っている間、二人だけで仕事をすることになるけど大丈夫かい?」


「……本気で言ってます?」


「政宗さんのことだから今回も冗談……ですよね?」


「さあ、どうだか?」


 秋城の満面の笑みに釣られて一年コンビ以外は笑顔のまま電車に揺られた。

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