第6話:守護神
「そんなに緊張せずともよい。
守護神様は気に入った人間には凄く気さくで優しい方だ」
皇帝陛下はそう言ってくださいますが、全然安心できません。
気に入った人間には気さくで優しいという事は、気に入らない人間には他人行儀で厳しいという事ではありませんか。
「あいさつはいいよ、直ぐに入ってきて」
皇帝陛下が豪華絢爛で重厚な扉の前で止まられたのですが、いきなり頭に言葉が伝わってきて心臓が止まりそうになりました。
ガチガチに緊張しながら皇帝陛下の後の続いて中に入ったのですが……
「やあ、よくきたね、楽しみに待っていたよ。
まあ、僕の力ならソフィア嬢を直ぐにここまで転移させられるんだけど、ランスロットと仲良くなって欲しかったから馬車の旅をしてもらったんだよ」
思わず真っ赤になってしまいました。
五カ月ものあいだ馬車の中でランスロットと二人きりだったのですもの。
私を護るように、いえ、実際にランスロットは私を護ってくれていたのですが、意外と情熱的なのです。
ずっと家族に虐められてきた私には、ランスロットの素直な愛情表現は涙をがまんできなくなるほどうれしいモノでした。
「ふっふっふっふっ、予想通りの結果になってよかったよ。
お腹の子はもう二カ月かな、いや、三カ月だね。
しばらくは安静にした方がいいから、帝都にとどまるといいよ。
ランスロットは何も心配しなくていいよ。
ソフィア嬢の屋敷は僕が結界を張るから誰も手出ししないよ。
もちろん性根の腐った貴族を四人ほど滅ぼして、アレンス家の爵位と領地を確保しておくから安心しなよ」
ああ、もう何が何だか全く分かりません。
いったい何がどうなっているのでしょうか。
正直ランスロットと愛し合えて、テンプル方伯夫人になれるだけでも十分幸せなのですが、それでは終われないのですよね。
その為に私はここに呼ばれたのですよね。
「分かっているじゃないか、ソフィア嬢。
わたしの可愛い聖女を苦しめたネルソン子爵家もオーランド伯爵家も許さない。
裏で画策したグローヴナ公爵家もマーシャム王家も滅ぼす。
帝国としても小国とはいえ一国を属国かできるんだ。
わたしも皇帝も次期国王となるランスロットも大満足だよ」
もう、もうお腹一杯です。
復讐よりも今はお腹の子供のことが一番大切なのです。
以前から一番大切にしていたのは母上の家名を残すことでしたが、今はただ無事に子供を産んであげたいと思うだけです。
「ああ、それなら何も気にしなくていいよ。
守護神のわたしが全力でソフィア嬢の子供を護るし、その子はアレンスの家名を名乗ってランスロットの後を継ぐんだからね」
「そうだよ、ソフィア。
私は別に国王になど成りたくはないのだが、生まれてくる子のために、少しでも安定した国にするために、しかたなく王位に就くのだよ」
ああ、これは、私の望みを全てかなえてくれるという事でしょうか。
母の家を再興して復讐もできる。
心から愛する人の子供を生むことができる。
これが夢でなければいいのですが。
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