第5話:皇帝陛下
半年は覚悟していた馬車の旅が僅か一カ月ですんだ事を心からよろこんでいましたが、結局翌日から五カ月の馬車の旅をすることになりました。
「皇帝陛下、ソフィア・アレンス嬢をお連れいたしました」
あっという間にテンプル方伯に連れられて皇帝陛下に謁見することになしました。
皇都に到着した翌日に皇帝陛下の謁見がかなうなんて、方伯の力に驚きです。
大臣や寵臣でもない限り、有力貴族でも一カ月は待たされるのが普通です。
地方の下級貴族なら、コネや裏金を駆使したとしても、半年や一年待たされてもおかしくないでしょう。
「うむ、苦しゅうない、もっと近くにきて顔を見せよ。
遠い昔に分かれたとはいえ皇室の血が流れる傍流皇族だ。
まして守護神様が特に指名された令嬢だ、なにも遠慮はいらぬ」
ひぃえええええ、あまりの厚遇が怖いです。
後でどんな無理難題を言われるのでしょうか。
いかにも皇帝陛下といえるような威厳のある方に優しくされるのが、これほど怖いのだと初めて知りました。
「あまりの厚遇に感謝の言葉もありません。
テンプル方伯からお聞きしていましたが、遠き昔の縁にただただ驚くばかりです」
「ふむ、テンプル方伯からある程度聞いていたであろうが、ここにいる大臣や重臣達も知らぬことだから当然のことだ。
そもそもソフィア・アレンス嬢の事は帝国の守護神様のお告げで知ったのだ。
しかも朕と守護神様に帝国の騎士に選ばれたテンプル方伯だけに告げられた、秘中の秘であったのだよ」
もうやめてくださいと言いたくなるほどの衝撃的な事実でした。
あまりにも重大な内容にその場にいる者全員が私をにらんでいます。
多くの者が私にしっとや敵意を持っています。
自分達の権力をおびやかす敵だと思っているのでしょうね。
「ああ、この場にいる者の敵意など気にする事はない。
ソフィア嬢は守護神様に選ばれた帝国の騎士の妻なのだ。
わずかでもソフィア嬢に手出しすれば、それが間接的であろうと帝国の騎士が絶対に許さない。
決闘の申し込みから逃げてもムダだ。
いや、朕が絶対に逃さない。
一族皆殺しにして爵位と領地をソフィア嬢に分け与えてやる」
あの、もう止めてください皇帝陛下。
この場にいるテンプル方伯以外の眼が完全に血走ってしまっています。
中には皇帝陛下の言葉を恐れて敵意をなくした者もいますが、ほとんどがまだ敵意を持った目をしています。
「お前たちはこの場で待っておれ。
朕とテンプル方伯はソフィア嬢を守護神様にご紹介してくる。
守護神様の怒りを買った者は天罰を受けるであろうな」
ああ、今度は全員がガタガタと震えだしました。
帝国の守護神様とはとても恐ろしい方なのですね。
私はどんな目にあわされるのでしょうか。
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