10 あとでセナちゃんから聴いた諸事情とは、a……
あとでセナちゃんから聴いた諸事情とは、
a 一年前から婚約している
b 高校を卒業し、大学に入学する(※受かれば)と同時に今の家を出て同居を始める
c 籍を入れたいが先ずは同居から始める、可能になれば籍を入れる
d 相手は年上だが子どもの頃からの知り合いであり、
e 相手には子がふたり居る
f 戸籍は未だでも通名は相手の苗字「暮林」に代える、
g つまり結婚であると
h そして親にもなる、と
(♪) 「……それはあなたのお父さんはどう認知していらっしゃいますか」
(セ) 「父には当面、ルームシェアという意味で納得しておいて貰います」
(♪) 「そんなことが可能ですか?」
(セ) 「大丈夫だと思う、だって相手は幼馴染みなんです」
(♪) 「……それで通るの?」
(セ) 「幼馴染みで、今は、シングルマザーをしています」
(♪) 「……お母さまを、なさっている」
(セ) 「相手は小さい頃ずっと仲の良いひとです。今はふたりの子のシングルマザーです」
(♪) 「あなたはその方に恋をしているのですか」
(セ) 「幾つかの他の男女らを含む経験を経て、私は彼女を愛し共に日々を生きゆきたいと思いました。子たちも愛おしく思っています。若輩者ですし不束ですが私に務められることを善くおこなってゆく決意は固めています」
(♪) 「あ、はい。なる、ほど」
(セ) 「だからねせんせい! 国公立に受かりたいの!」
(♪) 「……あ。そ、そうだね。進学の意志は変わらない、と?」
(セ) 「私学に入ると家を出られないし、もう少し勉強はしたい。彼女の同意も得ています」
(♪) 「学歴の為じゃなくて」
(セ) 「未成年ながら親として育児をとも鑑みましたが、わたしは学びは精神を支えると思っています。せんせいみたいに」
(♪) 「わたし!?」
交野坂清奈⇅暮林清奈。セナちゃんは今までも定期的に模試を受けてきたが、これは強化モードだな、と思った。国公立に受からないと家から出るのは難しくなるのだろう。
*
「少年が二十歳過ぎたら結婚しようかなあ」
と、咲実はよく云っていた。十二、三歳の頃。
「やめなさいよ。いとこ同士なんて」
わたしはその度にそう云った。いとこ同士の結婚には問題は無いし、わたしの反対にも根拠は無い。単に鹿爪らしく云ってみたかっただけだ。咲実も首を傾げてそんな風に、しようかなあと云ってみたかっただけだ。そのうえ少年の気持ちなんてふたりとも考えていない。ばかなうえにむごい。
わたしたちは夏休みを母方の伯母の家で過ごす習慣だった。少年というのはわたしたちの従兄のことで、何故だかわたしたちは彼の名前を覚えず、彼はわたしたちのあいだでだけ、少年と呼称されていた。彼は田舎に住んでいるということもあって、まったく少年らしい容姿をした少年だった。そしてもちろん──ここが肝心──、わたしたちの〝少年〟は、二十歳になんかならないのだった。だって、少年なのだから。咲実もそれを承知で、あんなことを云っていたのだ。
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