第4話被験者の反乱軍
日本征服計画を止めることを誓った全治だが、どうすればいいのかわからない。
黒之は相当な人数の味方をつけてくるだろう、それならこちらにもかなりの味方をつけなければならない。
「どうすれば僕にも黒之君のように、沢山の味方をつけることが出来るんだ?」
全治は考えた末、Twitterを使うことにした。
全治は北野家に来て初めてスマートフォンを手に入れていた。
Twitterのアプリを起動して、こんな文章を記入した。
『僕は非法律対象者の北野全治です、僕の知り合いで同じく非法律対象者の高須黒之が、日本征服計画を実行しようとしています。信じられないと思いますが全て本当の話です。鉄道破壊事件も彼の仕業かもしれません。もしこの話に興味を感じたら返信してください。』
全治はメッセージを公開して返信が来るのを待つことにした。
翌日、全治はTwitterを開いて返信内容を確認してみたが・・・、
『何それ、意味わかんねー』
『非法律対象者だからって、フェイクニュース書き込むんじゃねえよ!!』
『お前は一体何を企んでいるんだ?』
などといった罵倒の書き込みばかりだった。
「やっぱり、誰も信じてくれないか・・・。」
全治が落ち込んでいると、ある返信が目に映った。
「国家実験レジスタンス・・・?」
全治は返信の内容を見た。
『君が非法律対象者だというのは知っている。私はある事情で名前は教えられないが、国の実験に反対する者と覚えてほしい。私は全国の非法律対象者を集めてデマを起こす計画を立てている。君がよろしければ、このツイートにいいねを押してくれ。こんな差別的な実験は間違っている、周りから批判で苦しんでいる被験者を苦しみから解放すべきだ。君の協力を待っているよ。』
全治はこれはチャンスだと思った、デモなら大勢の味方を確保できる。
全治はツイートにいいねを入れた。
「これで僕にも見方ができた・・・。」
全治は少し喜んだ。
それから一時間後、全治がTwitterを見ると「国家実験レジスタンス」から返信がきた。
『協力してくれてありがとう。私は今、デモに向けて準備をしている。参加者は君を入れて八人だ。デモの決行日は八月二十日、集合場所は地下鉄千代田線の国会議事堂前駅だ。君は今どこに住んでいるのか教えてくれ。』
「僕は愛知県の小牧に住んでいます、なので東京へ行くのは少し難しいです。」
全治が送信すると、しばらくして返信が来た。
『そうか、愛知県か。協力者の中には福岡から参加している人もいる、あまり気にしなくてもいいよ。それより君が書き込んでいた、高須黒之というのが気になるな。よかったら教えてくれないか?』
全治は黒之について教えることにした。
『高須黒之は非法律対象者になったことを理由に、日本を征服して僕を殺そうとしています。彼と僕は同じ学校なのですが、数日前から学校に来ておらず、音信不通になっています。彼は過去に僕を殺そうと、あらゆる手段を使って来ました。中学生だからって、油断できない相手ですよ。』
するとすぐに返信が来た。
『そうか、そんなに恐ろしい中学生がいるのか・・・。もしかしたら、当日のデモを妨害されるかもしれない。』
「でも気にしないで、僕には頼りになる仲間がいる。過去に僕と一緒に、黒之と戦ったこともあるんだ。デモ当日には仲間達も呼んでおくよ。」
『それは心強い、それではもし黒之についてなにかわかったら教えてくれ。』
「うん、お互いに頑張ろう。」
全治はここでツイートを終えた。
全治は八月二十日のデモが、黒之と戦う日になるだろうと予見した。
六月十日、この日は三矢さんに近況報告をする日だ。
しかし肝心の三矢はこの日、学校に来ることは無かった。
その答えは夕方のニュースでわかった。
「今朝の午前六時十分、愛知県の小牧市内の道路にて車から発火する事故が発生。運転手の三矢加山(三十八歳)が、遺体で発見されました。発火の原因はわかっておらず、警察は原因究明に当たる方針です。」
全治は帰宅した時にこのニュースを見た。
そしてこのことをTwitterで「国家実験レジスタンス」に伝えた。
「今、三矢さんが亡くなったってニュースでやっていた。これはおそらく黒之の仕業に間違いないと思う。」
すると返信が来た。
『さっきネットニュースで記事を確認した、三矢が亡くなるなんて思わなかった。』
「三矢さん、いい人だったね・・・。ところであなたは、三矢さんと知り合いだったの?」
『ああ。これは秘密の話だが、私と三矢は国家実験研究所で働いていた同期なんだ。でも今回の「少年非法律化実験」に私は反対し、国家実験研究所を去ったんだ。あの時、三矢も誘っておけば良かった。』
全治は書き込みを見て、少し暗い気分になった。
「三矢さんのためにも、このデモを成功させよう。そして黒之の暴走を何としてでも止めるんだ。」
『ああ、黒之は非法律対象者であることを理由に、暴力的な革命を掲げて大勢の人を巻き込んでいる。こんなことは早く止めさせるべきだ。』
全治は「国家実験レジスタンス」と意見が一致し、やる気が湧き上がってきた。
六月十四日、全治が北野と登校すると来ている生徒の数が、いつもより少ないことに気がついた。
「ねえ、何か違和感を感じないか?」
北野が全治に言った。
「うん、いつもより生徒が少ないね。」
「今日は日曜日か?」
「違う、月曜日だよ。」
「そうだよな。じゃあどうして、こんなに学校に来てないんだ?」
今教室にいるのは、全治と北野を含む七人。
全治のクラスは三十人いるので、大半の生徒が来ていないということになる。
全治と北野が席についてチャイムが鳴った、しかし担任の庄野が来ない。
「まさか、庄野まで黒之に消されたのか・・・?」
全治がそんなことを考えていると、庄野が慌てて教室に入ってきた。庄野の無事に全治はほっとした。
「今、来ているのは君たちか。今日の一時間目は自習だ、昼休みじゃないから教室から出るんじゃないぞ。」
「あの、もしかして教室に来ていない生徒と、連絡が取れていないのですか?」
全治が庄野に訊ねた。
「そうだ、しかもこのクラスだけじゃない。もう職員室は電話が鳴りやまないほど、大パニックになっている。だから教室を出るんじゃないぞ。」
庄野はそれだけ言うと、教室の扉を乱暴に開けて職員室へと駆け込んでいった。
「かなりヤバイことになったな・・・。」
「みんな、どうしたんだろう?」
全治と北野以外の五人は、ヒソヒソと話し出した。
「みんな、ちょっと話してもいいかな?」
全治は席を立って、黒板の前に立った。
「どうしたんだ、全治?」
「実は今日の出来事について、僕には個人的な心当たりがある。それは黒之君だ。」
「え!?黒之が関係しているのか?」
「でも、黒之君は神の力を持っているし、最近学校に来ていないよね・・・。」
「そうだ。黒之君は僕と一緒に非法律対象者に選ばれた日から、日本征服計画を企て神の力を使って果たそうとしている。」
「じゃあこのままだと、黒之は独裁者になるということか?」
「ああ、そうなったら日本が大きな混乱に陥ることになる。」
北野ら六人は顔を引きつらせて、困惑した表情になった。
「それはヤバいぜ・・・。」
「黒之って前からヤバイと思っていたけど、ここまでするなんて思わなかったよ。」
「だからって俺たちでどうにかできることじゃないだろ?このまま黒之が日本を征服していく様子を見ているしかないよ・・・。」
岩谷公夫が言うと、全治は真剣な口調で言った。
「みんな!!黒之君を止めるために、力を貸してくれないか!」
みんなは全治の一言に驚いた。
「ええ・・・、なんとかなるかな?」
「でも全治には黒之と同じ神の力がある、もしかしたらいけるんじゃないか?」
「そうだ、それに俺は黒之に支配されるなんてまっぴらごめんだ!!みんなそうだろ?」
北野が五人に問いかけると、全員頷いた。
「よし、俺は全治に手を貸すぜ。」
「私も力を貸すわ。」
「僕もいいですか?」
みんなの声に全治は嬉しくなった、そしてこの日から「全治軍」というチームとして黒之に立ち向かうことを誓った。
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