第3話クロノスの暗躍
職員室に入った全治は、三矢にこれまでのことについて質問された。
「非法律対象者になってから、周りの反応はどうだ?」
「僕の家族は非法律対象者について納得していますが、やはり他の人たちは僕のことを人として見ていないようです。」
「そうか、やはり他の被験者と同じか・・・。」
「え、他にも非法律対象者がいるの?」
「ああ、と言っても試験に受かった全国の中学生十人だけだ。」
「そうなんだ、他のみんなも辛い思いをしているんだね・・・。」
全治がうつむくと、三矢は申し訳ない顔になった。
「こんな目にあわせてしまってすまなかった・・・、でも子供に法律の重要さを伝える大切な実験なんだ。」
「わかった、僕も選ばれた以上は頑張るよ。」
「ありがとう、全治君。ところで、黒之君について何か知らないか?」
「そういえば、今日は学校に来ていませんね・・・。」
全治はとっくに黒之が登校していないことに気が付き、どうしたのだろうと考えていた。
「そういえば、黒之君の家から連絡はなかったの?」
「いや、ないんだ。そればかりか、こっちが電話をかけても出ないんだよ・・・。」
庄野が三矢に代わって答えた。
「それは大変だ!!」
全治は思わず大きな声が出た。
「全治君、改めて訊くけど黒之君について何か知らない?」
「そういえば非法律対象者に決まった日のことなんだけど、何か企んでいる感じだったなあ・・・。」
「何か企んでいる・・・?」
「そういや、黒之は成績優秀だけどイタズラが酷いからな・・・。他の生徒も大勢巻き込んで、度が過ぎるイタズラをするからなあ・・・。」
「もしかしたら、非法律対象者になったことで犯罪行為に走り出しているかもしれない。」
三矢も懸念を隠せない表情になった。
「とりあえずこの後、黒之君の家に立ち寄ってみるよ。」
その後全治は三矢としばらく報告を続け、三十分後に職員室を出た。
『黒之、ついに本気を出したな・・・。』
「ああ、俺はこれから全治を殺して魔導書をクロノス様に渡して、この日本を支配する・・・。」
クロノスは黒之から溢れる力を感じていた。
黒之は全治や両親のいない所で、神の力を高める特訓をしていた。
それによりついに黒之は、神の力を覚醒させ完全に使いこなせるようになった。
これで黒之は「日本征服計画」に向けて本格的に動き出した、その手始めとして黒之は邪魔になりゆる自分の両親を殺したのだ。
『黒之、散々言ったことだがこの一年以内で目的を果たさなければ、我は黒之を消す。』
「わかっているさ、全治の討伐には俺の命とプライドがかかっている。何としてでも成功させる。」
黒之は真剣な顔で言った。
『それでまずは何を始めるつもりだ?』
「まずは日本の鉄道を破壊して、俺の力を見せつける。そのための手はずも整えている。」
黒之はこの日まで、近くの小中学校の生徒達・高校生や廃人となった大人などに、声をかけて「日本を変えるために、革命を起こそう!!」と感情に訴えた。そして神の力を授けて、日本征服のための駒として使っているのだ。黒之はその一人に電話で連絡を入れた。
「もしもし、黒之だ。」
「黒之様、鉄道破壊計画の手はずは全て整えました。」
「そうか。それではもう三人誰かを連れて、僕の家に来てくれ。」
「わかりました、それで何をすればいいのですか?」
「今、僕の家には二人分の遺体がある。その処理をやってくれ。」
「了解しました・・・。」
黒之は通話を切った。
『遺体処理か・・・、そういえばお前が両親を殺すとは思わなかったなあ。』
「後に邪魔になる存在だし、以前からため込んでいた不満もあった。だから殺したにすぎない。」
『罪悪感や悲しみは無いんだな・・・。』
「そんなこと気にしていたら、日本征服なんてできない。」
『お前もいっぱしの顔になったな。』
その後、黒之の命令で家に来た四人が、黒之の両親の遺体を運びだした。
『今日午前二時頃、愛知・大阪・東京・神奈川などでJR線・ローカル線の線路が突然爆発する事故が同時に多発しました。この爆発による死者はいませんが、警察はテロの可能性も含めて捜査していくと発表しました。この事件により爆発が起こった地域では、JR線・ローカル線の運行が停止。利用している通勤者などに甚大な影響がでています。』
このニュースは朝の報道番組で速報で流れ、全治もそれをテレビで見て知った。
「酷いわねえ、これじゃあみんなが行くべきところに行けないじゃないか。」
「ああ、全くだ。こんなことをして、犯人は何を考えてやがるんだ。」
お義父さんもお母さんも、犯人に対して憤慨している。
しかし全治は何だか嫌な予感を感じていた。
「この犯人はもしかしたら黒之かもしれない・・・。」
確証たる証拠はないが、全治は個人的に事実に近い自信を感じていた。
朝食を終えた全治は北野と一緒に登校したが、この日も黒之が学校にくることはなかった。
「黒之君、どうしているんだろう?」
「きっと病気だよ、気にすることじゃない。」
考え込む全治に北野は言った。
「でも黒之君は学校に何も連絡していないんだよ。」
「え!?そうなの?」
北野は驚いた。
「だからまた何か企んでいるかもしれないと思ったんだ。」
「そうか・・・、でも何を企んでいるんだろう?」
「黒之君は日本征服だと言っていた。だとするなら、朝のニュースで見た鉄道破壊事件は黒之君が起こしたのかもしれない。」
「それは言えるぜ、あいつは全治と同じで神の力を持っているうえに、多くの仲間を集めるのが得意だ。やろうと思えば出来なくもないか・・・。」
その日、庄野から生徒全員に「黒之はどこだ?」と訊かれたが、誰も黒之について知らないと答えた。
そして時間は過ぎて行き、放課後になった。全治が部活へ行こうとしていると、体育館の裏で六人の男子が何かを話していた。
「ねえ、何を話しているの?」
全治は躊躇なく声をかけた。
「げ、全治だ。」
「お前・・・、さっきの話を聞いていたのか?」
男子の一人が全治に詰め寄った。
「今さっき聞いた、だから詳しい内容は知らない。だから僕に教えてくれないか?」
「教えるわけないだろ!!黒之の敵であるお前にはなあ!!」
「おい、それは言うなよ!余計質問されるぞ。」
どなった男子の口調から「黒之」というワードを聞いた全治は、眼を光らせた。
「黒之・・・?もしかして黒之くんと何か関係があるの?」
「ああ・・・、そうだよ。」
一人の男子が暴露する決意を決めた。
「俺たちは今ここで、黒之様に協力することについて話し合っていたんだ。」
「黒之君に協力するだと・・・?」
「ああ、今の日本は僕たちが不利になっている不公平な国だ。だから黒之様がこの国を統一することで、日本を真の公平な国に変えるんだよ。」
「つまり『日本征服に参加する』ということだね・・・。」
「日本征服ではない、日本革命だ。」
「そんなことに自分の人生を捧げてもいいの?もっと自分がしたいことがあるんじゃないの?」
「それはあるさ、黒之様に協力することなんだよ!!」
男子たちはゲラゲラ笑い出した、全治は心配そうな顔で彼らを見つめた。」
「そうか・・・、でも僕は君たちを止めるよ。」
「あ?お前が俺たちを攻撃しようと、俺たちは意志を曲げない。何がなんでも、黒之様に力を貸す!!」
「もう行こうぜ、お前に話すことは無いからな。」
六人の男子は笑いながら全治を通り過ぎたその時だった、強い閃光が六人の男子に降り注ぎ、六人の男子は跡形もなく消えてしまった。
「これは・・・。」
「全治君、やっと気づいたね。」
空から黒之の声がした。
「黒之、そこにいるんだろ。どうして彼らを消したんだ!!」
「だって君と会話したからじゃないか。もしあの後僕の仲間になったら、君につけ込まれる可能性があるからね。消すことにしたんだ。」
「君はいつも命を無駄に使う・・・。取り戻せないものなのに。」
「それが犠牲というものさ。日本政府を支配できたら、君の首を奪いに行くから待っていてね。」
そう言って黒之の声は止んだ。全治は黒之を何としてでも止めることを誓った。
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