第14話 節分

「ねぇ、あれ見て」


お昼の休憩時間

食堂の窓から外を見ると


走り回る子供たち

「小児科の子かなぁ」


喜んで豆を投げながら

はしゃいでいる

「節分?」


「そっかぁ、今年は2月2日だったね」


子供たちに豆を投げられ

逃げる大人…

あれ?しょうちゃん?


「祥子センセイじゃない?」

オペ室の同僚も気付いたらしい


「何で小児科に?」

「ただ、走りたいだけなんじゃない?」

「それにしても楽しそうに」

「子供より楽しんでるね、絶対」


「そういえば、ゆきちゃん。マラソン大会出るよね?」

「は?何それ」

「え?知らない?オペ室は強制参加だよ、掲示板に貼ってある」




『ファミリージョギング』


知らなかったよ〜

福利厚生の一環で、今年はマラソンのイベントに参加するらしい

例のドームで開催されるらしい

女だらけの大規模なマラソン大会の前日の小さなイベントだ



なんでも、師長曰く


自分たちでいろいろ企画するより

既存のイベントに参加する方が楽だから

らしい


秋には、同じ場所でリレーマラソンという大会があってーーそちらの方が大規模ーー

そちらも参加予定らしい


夜勤のないオペ室と外来の看護師は強制参加らしい

らしい。じゃなく決定事項だ


「はぁぁ」

「後藤さん、嫌なの?」

師長も走るんだろうか...という疑問は聞けず

「走るのは苦手で」

「特訓してもらえばいいじゃない」

誰に?という疑問は、聞かない方がいいよね





「というわけで、たまにでいいから一緒に走っていい?」


夜、

しょうちゃんは、私が作った巻き寿司にかぶりつきながら、頷いている


「まずはシューズ買おうか。ウェアは貸せるから」

「スニーカーじゃだめ?」

「長い目で見たら、ちゃんとしたの買った方がいいよ」

「長い目?そんなに続けられ…わっ、どこ触って…」

いきなりお腹触らないでよ〜


「腹筋、、体幹鍛えた方がいいね」

「だから、そんな本格的じゃなくても…って、いつまで触ってるの?」

「ん…柔らかくて気持ちい…」

どうやら、また、しょうちゃんのスイッチを押してしまったらしい


たぶん今夜はこのまま・・・

そんな、節分の夜。

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