第12話 【番外】医大時代

カラン♪


「いらっしゃいませっ..と」

「いらっしゃいました〜」

「また来たの?」

「祥子のバーテンダー姿見たくて..ふふ」


今日は来るんじゃないかと思ってたけど


「もう飲んでるの?」

「ちょっとだけ」


今日は12月24日クリスマスイブ

こんな日に、私のバイト先に、ほろ酔いでやってきたのは

中山果穂。

同じ医大の同期生

親友。と言っても良いくらいの友達だ


もう1人、上田いづみ という友達と3人で行動する事が多いが

彼女は今、最近付き合い出した彼氏とスノボ旅行中


「何にしますか?」

「祥子、何か作って!」

「かしこまりました」

一応、仕事モードの対応



「どーぞ」

そう言って、カクテルグラスを置く


「わぁ、綺麗だね!なんていうお酒?」

「マンハッタンです」


深紅の液体をゴクリと飲む果穂

「ん、美味し」

言葉とは裏腹に切ない表情の果穂


「ごゆっくり」

仕事に戻る




「しまった」

飲みすぎないように気をつけてたつもりだったけど


潰れて寝てしまった果穂


「店長、すみません。友達なんです」

「じゃ、もう上がっていいよ!タクシー呼ぶから、一緒に帰ってあげな」

「ありがとうございます」



「果穂!帰るよ」

「ん〜やだ」

「ヤダじゃない」

「じゃ、祥子のウチいく」

「わかったわかった」


今日くらいはいいか

1人は寂しいよね



私が暮らすアパートへ連れて帰る


「お水飲む?」

「うん」


お水を汲んでいる間に

ソファに横になってるし

「果穂、そのまま寝ちゃう?」

「ん〜お水ちょーだい」


「はい」

コップを受け取って

飲むかと思ったら


「...ん」

唇を奪われた

一瞬のことで避けられなかった


すぐに離そうと思えば出来たけど

微かに震えてる果穂を突き放せなかった


「気がすんだ?」

「ごめん」

「いいけど、私は、いづみじゃないよ」

「・・・気付いてたの?」

「うん。辛いね」

「祥子」

「ん?」

「祥子も片想いしてるんだよね」

「うん」

「マンハッタン、そういう意味?」

「切ない恋心」


その夜は、泣いてる果穂を抱きしめて

眠りについた


※※※



「祥子、年末年始は?」

「バイトだよ!」

「働くねぇ」

「実習始まったらバイト出来なくなるから、今のうちに稼がなきゃ」


年の瀬も迫った12月28日

夜のバイトが休みだったので


果穂と、いづみと3人で、部屋で鍋をつついている


「あ、これ、お土産」

いづみから2人へ渡される


「お〜ありがとう!楽しかった?って聞かなくても、その顔見れば分かるか」


「ふふふ」


チラリと果穂の顔を見ると、目が合ったけど


「良かったね」

と、微笑んで言う


「うん、ありがと。果穂も彼氏作っちゃいなよ」


「私はいいよぉ」


「なんでぇ?モテるんだから、その気になればいくらでも...」

「祥子の方がモテるし」


いづみの言葉を遮って、私の話題に振ってきた


「確かに祥子はモテるけど、全部断ってるんでしょ?片想い中だからって」



「・・・」


私は手帳から写真を取り出し

2人に見せる


「私の片想いの相手」



「え?」

「・・・女の子?」


「うん。高校の同級生。ひいた?」


「そんなことないよ、祥子が好きになった相手だもん。性別なんて関係ないよ」

「うん、そうだね」


果穂は、いづみの横顔を一瞬見て

私に聞く



「想いは伝えたの?」

「うん」

「後悔はしなかった?」

「してないよ。まだ諦めてないし」

「どうするの?また告白するの?」

「今は...まだ、中途半端だから。まずは卒業して国家試験に合格しないと」


「はぁぁ、先は長いねぇ。どうしてそんなに一途になれるの?」

いづみは呆れ顔


「好きだからだよ。ね?」

果穂は、そんなことも分からないの?

と、ひとりごちた。




「祥子、ありがと」

いづみがトイレへ行っている間に

果穂が言う

「ん?」

「私のためにカミングアウトしてくれたんでしょ?」

「違うよ、2人には知っておいて欲しかったから。でも、いづみの反応、嬉しいね」

「うん」

「大丈夫?」

「私は...想いを伝えないでおこうと思ってる。いづみ、幸せそうだし」

「そっか。辛くなったら話してね、いつでも聞くから」

「ありがと」

果穂の頭を撫でてると



「ちょっと〜祥子!果穂を口説かないでよ〜」

「え?いいじゃん、果穂、可愛いもん」

「ダメだよ〜果穂は私のものなんだからぁ」

「いづみは欲張りだなぁ」

「ついでに祥子も私のものだぁ」

「ついでかよ」

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