第4話 有終の美

日曜日に出掛ける予定なので

土曜日の夜遅く、しょうちゃんがやってきた


「今日は早かったね」

世間的には遅い時間の22時半だけど...


「ゆきに早く会いたくて頑張ったよ」

そんなことをサラッと言うようになったのは、2度目に付き合い出してからのことだ


「お腹空いてる?」

「ん、ちょっと。何かある?」

「うん、温めるね」

「ありがと」



「いただきます」

「・・・」

「・・・」

「ん?」

「ごめん、じっと見られてると、食べにくい」

「そか」


ソファに移動し抱き枕を抱え

テレビをつける

大して面白くないお笑い番組を眺めてたら瞼が重くなってきた



微かに

食器を洗う音が聞こえてた


と思ったら

抱きしめられた...感覚


頭を撫でられ

心地よかったから

瞼をあげられない


「美味しかったよ、いつもありがとう」

耳元で囁かれたから


抱き枕を手放して

しょうちゃんに抱きついた


「わっ、起きてたの?」

「うぅ...ずるい」


「なにが?」

「ぜんぶ」

「へ?」

「しょうちゃんの存在自体が..ずるい」


くくって、噛み殺したような笑い方をして

「じゃぁ、好きにしていいよ」

「え?」

「私の全部、ゆきの好きなようにしていいから」

最近のしょうちゃん、破壊力が半端ないんだけど、自覚はあるんだろうか...

まぁいいや

「じゃ、遠慮なく」


唇を奪って

そのまま押し倒した





翌 日曜日。

予定通りやってきた競馬場


初めて連れて来てもらったあの日から

少しだけ詳しくなった


馬券を買うことは少ないけど

予想しながらテレビを見るのも楽しい


この前なんて、しょうちゃんはテレビの前で正座してた


なんでも、そのレースを最後に引退する馬がいるとか


ラストランに、かける想い


しょうちゃんは走る人なので

自分のことのように思っているのかも


ラストランは、全ての力を出し切って欲しい

そう言ってた


そして

1番人気の期待を背負って

1着ゴールって


カッコいい。







「ゆき、買えた?」

「うん」


「は?結局3-5なの?ちょっとは予想したら?」


「いいじゃん!しょうちゃんなんて、めっちゃ予想してるけど、当たったの見たことないよ」


「うぅ...確かに」


「で、予想は?」


「4-7-13、馬連ボックス」


当たるかなぁ

今の時刻は15:00

もうすぐだ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る