第2話 覚悟

珍しく、仕事が予定より早く終わったので

電話をした


「もしもし、ゆき?あれ、騒がしいね。どこにいるの?」


「今?飲んでる」


「そーなんだぁ」

誰と?という言葉は飲み込んだ


相変わらずワイワイガヤガヤしてて

ゆきの声も聞きづらい

誰かと喋ってる?


「ごめん、しょうちゃん。折り返す!」

と言って切られた


せっかく会えると思ったのにな



ブルルル

「ゆき?」


「しょうちゃん、ごめん!迎えに来てくれたり、する?無理だったら全然いいよ」


「うん、行く」


「え?いいの?無理しないでね」


なんだ?迎えにきて欲しいのか欲しくないのか?


「行くよ、どこ?」


お店の名前と場所を聞いた




お店に入っていくと


「あ、しょうちゃん!」

「お!しょうだ」

「祥子さ〜ん」



「な、なんで?」


美樹はわかるけど、なんで綾がいるの?


「あ、祥子来た〜」


トイレでも行ってたのか

後ろから声がした


「やっぱり一美の仕業かぁ」

「まぁまあ、ほら座って」

「何これ、どうなってるの?」

「彼女と元カノが仲良くなるのは嫌?」

「い、嫌じゃないけど・・・」

ゆきを見る


「あ、私 ちょっとお手洗い」

ゆきが席を外すと


3人が視線を合わせニヤニヤしてる

なんだかとっても嫌な予感


「で、どうなの?順調?」

「だと思うけど。え?何か言ってた?」

「教えな〜い」

「えぇ〜、ってか、変なこと吹き込んでないよねぇ」

「変なことは言ってないよ〜高校時代のアレコレは言ったけど」

「もぉ〜」


「同級生って、なんかいいなぁ」

美樹が言う

「全然良くないよ」

「またまたぁ、あまのじゃくなんだから。でも、相変わらず忙しいですよねぇ。ゆきちゃん、寂しいんじゃない?」


「うっ」

痛いところを...

「ちゃんと考えてはいるんだよ」


「そうなの?」

「え〜なになに?」

「プロポーズでもする?」


「うるさい..」


「なんなら協力するよ」

「サプライズ企画?」

「楽しそう」


「やめて!そーいうのは自分でやるから。お願いだから、そっとしといて」


やっぱりニヤニヤしてるし






ガタン‼︎

「え?祥子?」





「なにやってんの?」

男の手首を掴む

『なんだよ、お前』

「離して!」

『は?』

「ゆきの腕を掴んでる、その汚い手を離せって言ってんの‼︎」

『はぁ?』


クルっ

手首を返す


『痛って〜何すんだよ〜マジ痛え〜傷害罪で訴えるぞ‼︎』


「はいはい、そこまで。訴えるなら、私証言するから。はい名刺」

綾が割って入る


『げっ、警察?』


綾が、ひと睨み効かせる





「大丈夫?ゆきちゃん」

「はい、ちょっと絡まれただけだから」

「しょうも、行くよ」

「うん」



一旦、みんなのいるテーブルへ戻る


「ごめんなさい」

「なんで、ゆきが謝るの?」

「そうだよ!ゆきちゃんは悪くないよ」

「私の出る幕なかったなぁ、本職なのに」

「いや、綾がいてくれて良かった。ありがと」


「出ようか!」


一美の一言でお開きになる






「あ、綾ちょっといい?」

「うん?」


「じゃ...しょうちゃん、キー貸して。先に車行ってる」

ゆきが言う


「うん、すぐ行くから」





「はぁ、出来た彼女だねぇ。可愛いし」

「あげないよ」

「...はいはい。で?」

「ちょうど連絡しようと思ってたんだ」

「ん?」

「うちの鍵、まだ持ってる?」


「あ〜、ある。かも」

ポケットを探って、キーホルダーを出す

「これだよね?」

「うん」

「何の鍵だろうって思ってたんだ」

「そっか」


「遅くなってごめん」

と言いながら鍵を渡してくれる

「いいよ、私も...忘れてたし」


「じゃ、行くね」

「うん。あ、綾?」

「なに?」

「ありがとう」

綾は首を傾げて

「お礼言われるようなこと、、ありすぎてわかんないや」

ニヤリと笑い

「こちらこそ」と言って去っていった




「お待たせ」

車に乗り込む


「もういいの?」

「うん」

「しょうちゃん」

「何?」

「キスしたい」

「ん」

助手席に体を寄せ、キスをする


「え?」

「なんで驚いてんの?」

「してくれると思わなかったから」

あ、そっか。いつもだったらしないかも


「怖かったんでしょ」

「うん」

「守れて良かった」

「びっくりした。しょうちゃん、強いんだね」

「身体の構造知ってれば簡単だよ、軽く捻るだけ」

クスリと笑う


「どうする?すぐ帰る?ちょっと話したいことあったけど、今日じゃなくてもいいし」

「大丈夫だよ、話、聞きたい」


「じゃぁ、星、見に行こ。今、流星群の時期らしいし」

「うん行く、なに座流星群?」

「こぐま座だったかな。ピークはもうちょっと後だけど」





「久しぶりに来たなぁ。しょうちゃんは、たまに走ってるんだっけ、ここ」


「よく覚えてるねぇ」


「覚えてるよ!しょうちゃんは忘れちゃったの?」


「覚えてるよ、ゆきが転けたこと」

「え?そこ?」

ふふふ。

「おいで」


手を差し出す


手を繋いで、ゆっくり歩く

「みんなで何話してたの?」

「ん?ヘタレでひねくれた優等生の話」

「なにそれ!」


登りきって

丘の上のベンチに座る


「懐かしいね」

「そぉ?」

「しょうちゃんは懐かしくないの?」

「まだ、想い出じゃない。進行形だから」

ゆきが初めて「好き」と言ってくてたこと




「しょうちゃん、話って?」


「あ、うん。。そろそろ引っ越しをしようかと思ってるんだけど...一緒に新しい部屋を探して欲しいな。と思って」


「・・・それって」


「一緒に暮らさない?・・・もちろん、すぐじゃなくても。いろいろケジメつけてからでもいいから」


「ケジメって、親とか?」

「うん。ゆきさえ良ければ挨拶行くし」

「しょうちゃん...そこまで...」

「一応、殴られる覚悟も出来てるよ」


繋いだ手にギュッと力が入って

ゆきがこちらを向く


少し照れた笑顔で

「めっちゃカッコいいプロポーズだね」

と言う



「返事は?」


「もちろん、お受けします。。でも親への挨拶は、ちょっと待って。私から話してみるから」


「ん」



空では、星がいくつか流れてたけれど

見つめ合う2人は気付かなかった

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