だから最後の恋だって

hibari19

第1話 再会

「ゆきちゃん、今日、焼き鳥屋さんでいい?」

「うん。美樹ちゃんの行きつけ?」

「ちょっと小汚いけど、美味しいの」


仕事終わりに、ゆきちゃんを誘った

祥子さんという彼女がいるから、断られるかと思ったけど、あっさりOKだった

相変わらず忙しくて、当直じゃなくても、いつも帰りが遅いらしい


祥子さんは、お姉ちゃんの友達で、私も以前からの知り合いなので、必然的に彼女の話題となる


「うまくいってるの?」


「うん、前は全然会えない時もあったけど、最近は遅くなっても連絡してくれて、会いに来てくれるし」


「やっぱり忙しいね、救急は」


「昨日も遅かったよ。ご飯食べたら秒で寝たし。キスする暇もなかった」

何故か笑顔で嬉しそうに話す


「それでいいの?」


「うん。そばに居るだけで幸せだから。それに...」

ふふふ...と笑う


「え?なに?」

期待しちゃうじゃん


「居心地がいいって言うんだよ!だから寝ちゃうんだって」

え?それだけ?期待して損した


まぁでも、一度別れてるから

ただ一緒にいるだけで幸せなのかな


ちょっとおめでたい気もするけど



焼き鳥を食べながら、ビール飲んでたら


「あれ?美樹?」


「え?お姉ちゃん!」

「あ、一美さん」


偶然、お姉ちゃんと、その後ろから..お友達(?)がやってきた


「あ、綾さん?」

ん?ゆきちゃんの顔が一瞬曇った


「あ、じゃぁ。うちらはあっちに...」

お姉ちゃんが言い終わる前に

「一緒に飲もうよ!」

と言う、お友達


「「え?」」

ハモった


「ダメ?」

視線は、しっかりゆきちゃんを捉えてる


「いいですよ、飲みましょう!」


なんだか、ちょっと面白そうだぞ




「それでは改めまして、乾杯!」


お友達は『佐伯綾』と言い

お姉ちゃんの高校の同級生で

祥子さんの元カノである


という事実を、お姉ちゃんにコッソリ聞いた


「その節はお世話になりました」

綾さんは笑顔で言う


「いえ、私は何もしてませんから」

ゆきちゃんも笑う


もっと剣呑な雰囲気になるかと思ったら

普通だなぁ


お酒も入って、和やかな雰囲気に。

(心の中は知らんけど...)



そんな中

「ねぇゆきちゃん、祥子のどこが好きなの?」

へ?お姉ちゃん?


「それ、一美が言う?」

綾さんがニヤニヤしながら言う


たぶん、3人とも同じこと思ってる

お姉ちゃんも祥子さんのこと好きだった時期があるってバレバレだから


「え?違うよ!私はそんなんじゃないよ」

「はいはい」


「じゃぁ、ダメなところは?」

と、言ってみる

「いいねぇ、ダメだし大会」

と、綾さんが乗ってきた


そして

「しょうは、基本ヘタレだよ」

と言う

「え?そうなの?」


「そうだよ、ね?ゆきちゃん」

「まぁ、家では、そうかも。病院では違いますけど」

「仕事はちゃんとやってるんだねぇ」

そーなのか、私はかっこいい祥子さんしか知らないや



「思ってること言わないから、分かり辛いし、面倒臭い性格じゃない?」

「超絶、照れ屋ですね。言わなくてもだいぶ分かるようになってきましたけど」

「ゆきちゃん、甘やかしてるなぁ。ちゃんと言わせなきゃ!ちゃんと『好き』って言ってる?」

「あ、それは・・・」

「やっぱ、言ってないかぁ」


ダメダメじゃん



「高校の時はどんな感じだったんですか?」

「あ、それ、私も聞きたい」


「勉強は出来たね」

「でも、ただの優等生じゃなかったね」

「どういうこと?」

「ひねくれてた」

「そういえば、優等生って言われるの嫌がってたね」

「曲がったことが嫌いだから、先生にも食ってかかってた」

「だからモテてたのか」

「綾の方がモテてたじゃん」

「そうだっけ?」

「バレンタインのチョコ、どれだけ貰ってたの?」

「数えきれん...」



「あ!」

ゆきちゃんがスマホを見てる

「ひねくれた優等生からです」


席を外そうとするゆきちゃんを制して

電話を取らせる3人

「もしもし...今?飲んでる」


小声で

「ゆきちゃん、祥子呼びだして!」

「え?」


「ごめんしょうちゃん、折り返す」


一旦、通話を切るゆきちゃん


「迎えに来て!って言えば来るんじゃない?」

「どうかな?」

「何?私に会わせたくない?」

綾さんが挑発する

「そんなことは...」


ちょっと考えて

「電話してきます」と席を外した

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