スピンオフ話その2-6 ストーカーをどうしようが誰も文句は言わないだろう?

「……ユーキ様、このおっきいのってなんですか?」


「ん?巨◯兵もどきだよ」


「なんか溶けかけてますよ?」


「……早すぎたのさ」


ボクの言葉にフリージアは「?」と首を傾げる。これは有名な名セリフなんだよね。一度言ってみたかったんだよ。


他にも言ってみたいセリフはたくさんあるんだけどなかなかドンピシャで言える場面に遭遇しないんだよね。


「ナウ◯カごっこは奥が深いからね。今度じっくり教えてあげるよ」


「よくわからないけど、楽しそうですね!」


ナ◯シカもいいけどラ◯ュタもいいよね。フリージアがいれば滅びの呪文も唱えられるなー。やっぱりあれは、ふたりでやらないと盛り上がらないと思うんだよ。


『ちょっとおふたりとも!変態が動き出しましたよ!』


パタパタと羽を動かしボクの肩にやってきてぺしぺしと羽をぶつけてくる(自称)神様。痛くはないけど、鬱陶しいな。


「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!結城沙絵の匂いがす、ひでぶ!!」


ちゅどーーーーん!!!


よし、今度こそ命中したぞ。ふー、これで悪は滅びたね。


「あ、まだ動いてますよ?!」


「ゆ、ゆうき、俺のハーレ「凪ぎ払えぇぇぇぇぇ!!!」ぶへぁっ?!」


ぷちっ!


巨大ロボットの右手がひょいっと動き、変態を押し潰したのだった。






***







こいつ、たぶんボクが日本にいたときのストーカーだと思うんだよね。あの頃のボクは女の子に追いかけ回される事はあっても男に追いかけられる事なんかなかったからよく覚えてるよ。学生でもないくせに大学に侵入してくるし、ボクの匂いを嗅ぎわけられるらしくてどこにいても追いかけてくる気持ち悪い奴だったんだけどまさか異世界まで追ってくるなんて……筋金入りのストーカーか。


「と言うか、ボクの存在は無かったことになってたんじゃないの?なんでこいつはボクの事を覚えているのさ」


ロープでぐるぐる巻きにして猿轡をかました変態を足で踏みつけながら(自称)神様の羽をつまむ。足の下から「ぐふぉっ、もっほぉぉぉ」とか聞こえてくるから気持ち悪くてイライラするよ。


『わ、わからないんですよぉっ。あの時の≪流星群の奇跡≫の磁場の乱れのハンパなさは我々神にも未知数だったんです!

でもどんなことにも予定外やバグってあるものじゃないですか?てへっ☆ぶふぅっ!』


ぷちっ!


あ、ごめん。思わず手のひらでつぶしちゃったよ。いらついて、つい。


「それで、この変態はどうするのさ?神様から奪ったっていう能力も気になるし」


『うぅ……もうっ!ワタシが神様じゃなかったら死んでますよ?ユーキさんの意地悪~』


「これ以上イラつかせるなら、ボクだって我慢の限界を向かえるよ『ごめんなさい!』いいから早くしろ」


そして、(自称)神様がこの変態の能力について教えてくれたが……うん、たぶん使い道ないと思うんだよね。というか、その力が発揮されることないんじゃないかな?


「……この変態と10分間見つめあうと魅了されてしまう能力ねぇ。ボクだったら1秒だって見たくないんだけど」


ちなみにこの変態の見た目だけど、ほんとに変態なんだよ?どこの世界から来たのか知らないけど虎柄のブーメランパンツいっちょだし、頭にはどこの誰のかもわからない女性物のパンツを深々と被っててマジックペンで〈変態紳士〉って書かれているんだ。顔はそれなりなだけに残念感がすごい変態だよ。


こんな変態と10分も見つめ合える猛者がいるとしたら逆にお目にかかりたいくらいさ。いや、やっぱり関り合いにはなりたくないな。


『じゃんじゃん野郎なら確か1分だったはずなんですけど、やっぱり人間に奪われた時点でだいぶ劣化してますね』


そのうざったそうな神様とも1秒だって見つめあいたくないよ。


「で、これはどうする気なんだい?」


『そうですねぇ。もう元の世界には戻せませんし、神様派遣協会からの指示待ちになるんですが……』


(自称)神様はボクの足の下にいる変態に視線を向けて……にやりと唇を歪めた。


『何をしでかすかわからない変態が、突然暴れてどうにかなったとしても……ワタシたちにはどうしようもないですよね?』


この時はじめて、(自称)神様と気が合うな。と思ったよ。





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