スピンオフ話その2-7 神様よりもすごいってどんだけですか

えー、あの変態ですかぁ?もちろん、ちゃーんと捕まえましたよ?見てくださいよ、変態と闘って力を消耗しちゃってこの姿ですぅ。しょんぼり。


ああ、はい、神のくせに情けないって……でも大変だったんですからぁ。だいたいじゃんじゃんやろ……虎ぱん先輩の世界から逃げた犯罪者なのに……ブツブツ。いえ、今回は先輩のお手伝いが出来て光栄ですぅ。うふぅ。


……はぁ?仲良しなんだなって……ふざけんなてめゲフンゲフン。まさか、ワタシのような末席の神があんな上位の神と仲良くするなんて滅相もない……まったくの他人です(キッパリ)!


え?それでその変態はどうしたって……それなら虎ぱん先輩に引き渡しましたぁ。


だって、元々は虎ぱん先輩の世界の人間ですしぃ、先輩が自分が始末するっておっしゃられたんでー。


まさかまさか!ワタシは上位の神の指示に従ったまでですからぁ、他意なんてございませんとも!


もちろん犯罪者を捕まえた手柄もいりませんよぉ。え?あるわけないだろって……そうですよねー。冗談ですよぉ。ワタシはワタシの世界が平和ならそれだけで……おや、何をおっしゃりますやら。ワタシなんぞの世界にそんな力の強い人間なんていませんよ?


はぁ、確かに転移者はいますけどー。ワタシの与えた力くらいで、そんなまさか。ワタシですよ?……そうでしょう、そうでしょう。納得して頂いたようでなによりですぅ。


ではワタシからの報告は終わりですので、あとは先に帰っちゃった先輩に聞いてくださーい。


あと、こんな姿になっちゃったんでしばらく休暇もらいますね☆……え、そんなみっともない姿の神なんて恥ずかしいから派遣協会はクビ?退職金代わりに今の世界をくれてやるから勝手にしろ?


……わっかりましたぁ!では、ワタシの世界はどんな力をもってしても他の世界からは不干渉ですね!はいはい、滅びそうになっても神様派遣協会からの助けはいかないからなって、わかってますよぉ。


では、長い間お世話になりました。



















『……なんとかごまかせましたぁ』


今回の事の顛末を報告するために神様派遣協会に呼び出されたワタシは、やっと上司から解放されました。しつけーんだよ、あのハゲ。


ワタシは神様の中でも末席で力も弱く、威厳もないので上司からも侮られております。今回もワタシが偶然やら奇跡やらが重なって変態を捕まえた事になってて、たかだか変態と闘っただけでこんな姿になり力も消耗したワタシは見事にクビとなり、見捨てられましたとさ。


やったぁーーーー!自由だぁぁぁ!!


これでワタシの世界は神様派遣協会の管理から独立し、もう≪流星群の奇跡≫の影響を受けて他の世界から犯罪者が紛れ込んでくることもありません。完・全☆シャットアウト!


まぁ、そのぶん“星の子”がやってくることも無くなるのですが……。え?“星の子”ですか?そりゃもちろん異世界からやってくるんですよ。決まってるじゃないですか。これからは地産地消になるので国を騒がすほどの奇跡はもう起こらないでしょうね。


うふふ、それにしてもこれでワタシも自由ですよ!これからはあんなブラック企業にほぼタダ働きでこき使われることもないし、パワハラも受けずに済みます!


だいたい、世界が滅びそうになっても助けないぞって……今までもヤバイ時には放置やったやないかい!ワタシの無能さを馬鹿にするし、厄介事を押し付けるし……よく今まで我慢してたなぁ(遠い目)







***







さて、あの変態はどうなったかと言うと……。







実は変態の始末をどうするかってなった時、ワタシはこの変態をじゃんじゃん野郎と同じくブラックホールに捨ててやろうと思っていました。上下もわからない、時間もわからない永遠の暗闇でさ迷えばいいかなって!ほぼ八つ当たりですね。てへっ☆


ですがその時、空間が小さく裂けて……なんとじゃんじゃん野郎が顔を出したのです。腐っても上位の神だけあって生還したようでした。ちっ。


そしてワタシを見つけるやいなや暴言を浴びせてくるじゃんじゃん野郎。首しかでてないくせにうるさいです。


すると、ワタシのことを『お前なんか能無しの役立たずじゃん!』と唾を飛ばしながら馬鹿にするじゃんじゃん野郎の頭をユーキさんが鷲掴みにしたのです。


『……ユーキさん?』


ユーキさんはフリージアさんに「アレちょうだい」と言い、5円玉をぶら下げた長い紐を受けとりました。……この世界に5円玉ないですね?また勝手に創ったんですか?


そしてユーキさんはじゃんじゃん野郎の目の前でその5円玉を振り子のように揺らし始めました。まさか神様相手に催眠術をかけるなんて、ユーキさんはどこまですごいのでしょう。


次第に目がトロンとなってくるじゃんじゃん野郎にユーキさんは抑揚のない声でこう告げたのです。


「あの変態と見つめ合え」と。


ちなみに変態の方も同じ催眠状態にされていて、じゃんじゃん野郎と変態はしっかりと見つめ合い……じゃんじゃん野郎は変態に魅了されてしまったのでした。









『これって運命の相手なんじゃん!』


目がハートになったじゃんじゃん野郎は催眠が解けて猿轡と簀巻きのままもがく変態を抱き締めました。


いくら力を人間に奪われているとはいえ一応上位の神なはずなのですが……奪われた自分の魅了の力に魅了されたとんだお間抜け野郎ですね。

まぁ、それだけこいつの魅了の力がすごいと言うことかもしれません。


「この世界から出ていくなら、そいつをやるからどこへでも行っていいよ」


『うっひょーっ!愛の逃避行じゃーん!』


涙目で青ざめる変態にぶちゅっ!と濃厚なきっすをして、じゃんじゃん野郎は再びブラックホールの中へと消えていったのでした。あの変態もひとりきりより誰かと一緒の方がブラックホール生活も快適でしょう。じゃんじゃん野郎はムッキムキのごりマッチョなパンイチ野郎でもあるのできっと変態と気が合うと思いますよ。





「ふっ、悪は滅びたね」


「さすがです、ユーキ様!」




じゃんじゃん野郎と変態もいなくなり、神様派遣協会とも縁を切ることができました!


これからはハッピーライフが待ってますよ~!……それにしても、ユーキさんは他の世界の神様も越えちゃったみたいです。こんな存在が神様派遣協会にバレたらそれこそ大問題。本当に独立できてよかったぁ!!


ワタシは喜びと安堵のあまり、拳を天高くつきだすのであった。

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