スピンオフ話 ユーキとフリージア
「ユーキ様って、本当になんでも作れるんですね!」
キャンピングカーの中をキョロキョロと見渡しながらフリージアがはしゃいだ声をあげた。
「こら、フリージア。まだケガが治りきってないんだからおとなしくしてなよ」
「もう大丈夫ですよー。ユーキ様って意外と心配性ですよね」
セレーネお嬢の元から旅立ってからまだ半日程だったが、キャンピングカーは順調に進んでいた。
「それにしてもこんな乗り物まで作ってしまうなんて、ユーキ様に作れない物なんかないって感じですね!」
こらこら、運転中なんだから後ろで跳び跳ねるんじゃないよ。危ないだろ。ってことで自動操縦にしたよ。どのみちボク、運転免許持ってないんだよね。
「あー、運転って肩が凝るなぁ。もう二度としないよ」
ボクが肩を回しながらキッチンスペースに行くとフリージアがすでにコーヒーを準備してくれていた。
「ユーキ様はぶらっくこーひーで、わたしはかふぇおれです」
ちなみにこの世界にコーヒーが無いってわかった時には衝撃を受けたよ。紅茶も飲むけどボクは断然コーヒー派なんだ。まぁ偶然森の中にコーヒー豆の代わりになる植物を見つけてそれを材料に生成できたからいいんだけどね。でもこの世界の人はコーヒー飲まないだろうからとセレーネお嬢にも教えてなかったんだけど、フリージアは特別に飲ませてみたよ。だって一緒に生活するのに隠れて飲むのなんて無理だろう?そしたらブラックコーヒーは苦くて飲めないけどカフェオレにしてみたら気に入ったみたいだね。もちろん、他言無用。ふたりだけの内緒だよって言ったらなんか変な反応してたけど約束は守ってくれてるよ。
「うん、ありがとう。いい香りだ」
フリージアもコーヒーを淹れるの上手くなったなぁ。今ではフリージアの淹れたコーヒーがないと物足らないんだよね。ついでにお茶請けにプリンがあれば言うこと無しさ。苦いコーヒーと甘いプリン。最高だろう?
「……一応言っておくけど、ボクにだって作れない物もあるからね?」
「そうなんですか?ユーキ様なら不可能はないって断言するかと思ってました」
熱いカフェオレをフーフーと冷ましながらフリージアが驚いたように目を丸くして言うが、ボクはそんな自信過剰じゃないよ?失礼な。
「ボクをなんだと思っているんだい?」
「えー、なんとなくユーキ様ならなんでも有りかと思いまして……。逆に作れない物ってなんなんですか?」
「ん?そうだなぁ……。未来や過去に行ったりする引き出しとか、物体を大きくしたり小さくしたりするライトとか、あっという間に違う場所に行けるドアとか?」
さすがに未来製の青い猫型ロボットみたいなのは無理だったよ。作ってみたかったけどこの世界にその材料は存在しなかったんだよね。
「……なんですか、それ?」
「……説明するとなると難しいかなぁ」
ボクが「うーん」と首を傾げると、フリージアは目を細めて楽しそうに笑った。
「まぁ、いいや。それよりもこれからどこに行こうか。フリージアはどこに行きたい?」
「わたしが決めていいんですか?」
「もちろんだよ。それにボクはセレーネお嬢がいた国以外は全く知らないからね、頼りにしてるよ」
するとフリージアは一気にカフェオレを飲み干すと目を輝かせて身を乗り出してきた。
「実は、昔から行ってみたかった所があるんです……!」
興奮気味にその場所の事を語るフリージアは、なんだか子供みたいで面白かったよ。
「よし、じゃあそこに行こう。途中に町があれば食料も買えるしね」
セレーネお嬢がくれた軍資金が尽きる前にどっかで商売もして稼がないといけないし、材料も調達しなきゃいけない。
「しばらくは退屈しないですみそうだ」
こうしてボクとフリージアを乗せたキャンピングカーは勢いよく走り出したのだった。
「さぁ、ユーキ様!仕事もビシバシやりますよ~!」
「はいはい。フリージアは仕事熱心だね。在庫はいっぱいあるから頑張って売りさばいてよ」
「任せてください!」
その後、不思議な乗り物に乗った白衣の変人と看板娘が売りに来る便利グッズの評判は瞬く間に噂となり、行く先々でひと騒動起こしたりした。……らしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます